自己肯定感とは自分の存在を肯定的に感じること、また、そのような心のあり方です。自己肯定感が高い人の特徴は「失敗を恐れない、いつまでもくよくよしない、他人と自分を比較しない」という点です。何事にも失敗を恐れずチャレンジし、失敗してもそれをバネにして成長できる人です。そのため、自己肯定感の高い人は学校や職場で周囲から高い評価を受けます。
その逆に自己肯定感の低い人は、失敗を恐れて消極的になり、失敗すれば落ち込み、他人と比べて自分のダメさ加減に悩んで、さらに落ち込むという悪循環に陥ります。そんなビジネスパーソンでは、仕事も上手くいかないでしょう。
このように自己肯定感は高い方が良いのですが、高くなればなるほど必要となるのがメタ認知です。メタ認知とは「自分の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識すること」です。たとえて言うなら メタ認知能力はブレーキ、あるいは原子炉の制御棒のようなものです。
実は(大きな声では言えませんが)、研修講師やベンチャー企業の経営者の中にはメタ認知能力を全く持たない人がいます。具体例を挙げるとかなり差し支えがあるので控えますが、自己肯定感が上昇し続けたために「イタイ」人間になってしまった人たちです。
特に研修講師には暴走する車のような、加熱して爆発しそうな自己肯定感を持った人が少なからずいます。そして、そうした人たちは講師としても「いかがなものか」というレベルにある場合がほとんどです。
先日友人から「ダニング=クルーガー効果(Dunning–Kruger effect)」というものを教えてもらったのですが、まさにある研修講師がそれだ!と感じました。ダニング=クルーガー効果とは「未熟あるいは能力の低い個人が、自らの容姿や発言・行動などを実際よりも高く評価してしまう認知バイアス。自己の愚かしさを認識することのメタ認知ができないことによって生じる。※」ということです。
メタ認知はある意味「心の錘(おもり)」のようなものです。錘を外すか、はじめから錘を持っていない人が自己肯定感を限りなく高めることができます。ベンチャー企業の経営者もほとんどが、どこかで錘を外した人たちです。
ただし誤解してほしくないのですが、研修講師やベンチャー企業の経営者の自己肯定感の高さを否定しているわけではありません。そうした人たちはそれで良いのです。むしろ、そうあるべきでしょう。なぜなら、エベレストほど高い自己肯定感があろうが、すべての仕事の結果は自分が背負うことになるからです。
問題は、組織の中にいながらメタ認知能力の低い人です。大企業に勤める会社員や役人の中に、多くはいませんが存在します。
企業研修のときに、テキストをパラパラとめくって「知っていることばかりだ」と言ったり、ディスカッションの際に「私は答えはわかっているから、どうぞ皆さんで議論してください」という態度をとる人がいます。メタ認知能力がない上に妙に自己肯定感が高い、いわゆる「残念な人」です。組織の中で働いている間は、メタ認知能力を養う絶好のチャンスなのですが・・・。
さて、ここまで書いてきて私自身はどうかと振り返ってみると、この仕事をしている立場からすれば、自己肯定感はかなり低い方です。
なんとかしなければと、「自己肯定感」という文字を書いて天井に貼り付け、朝晩に仰ぎ見ている毎日です。
※ 画像の「DOUNCE」とはのろま、劣等生、甚六という意味