「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
弊社ではコンサルティングの相談をいただいたり、研修終了後に質問をいただいたりした際に、こちらから提案をさせていただくことがあります。
その際に「やってみます。アドバイスをありがとうございます」と答える人もいらっしゃいますが、多くの場合はそこでその提案ができない、することが難しい理由を語り始められるのです。
その理由として挙げられるのが、「私はぜひその方法を取り入れたいと思うけれど、うちの社員はとても忙しいので、新たなことを取り入れるのはなかなか難しい」。また、「一般的な業界であればその方法はうまくいくと思いますが、うちの業界は特別だから、そのやり方を取り入れるのは難しい」などなど、「できない理由」を理路整然と、ある意味で実に「雄弁」に語られるのです。
そのような場面では、私は「できない理由」を一通りお聞きした後で、「それでは、今の状態を続けるのが宜しいかと思います」とやんわりとお伝えすることがあるのですが、そうすると今度は「先ほど教えていただいた方法より、もっと簡単にできる方法はないでしょうか」と質問されるのです。しかし、組織で新しいことを始めたり職場の問題を解決したりすることは決して簡単なことではありませんので、本気でそれを解決したいと思うのであれば、時間をかけて真剣に取り組まなければならないことは言うまでもありません。
それでは、そもそもコンサルティングの相談をされる人や研修終了後に熱心に質問されたりするような人が、なぜ「できない理由」を雄弁に語られるのでしょうか。
その理由は様々あるのだと思いますが、一つには課題の解決に相応の時間と労力をかける「覚悟」ができていない、あるいはその権限などがないため、まずそれができない理由を挙げた上で、次に簡単に効果が得られる方法を知りたいと考えられているように思います。
しかし、前述のとおり組織で何か新しいことを導入したり職場の問題や課題を解決したりするには簡単な解決策はないのが実際のところです。本当に解決をしようとするのならば覚悟をもって真剣に取り組む必要があると私は考えているのです。
また、「この業界は特別だから」とおっしゃっている人の話をよくよく聴いてみると、ご本人がおっしゃるほどには特別ではないことが少なくないということは、長年様々な組織の話を聴いてきている中で、私が感じていることでもあります。
このように、できない理由を雄弁に語られる場面に出会ったときに私が思い出す言葉の一つに、「沈黙は金、雄弁は銀」というものがあります。これは19世紀イギリスの歴史家・評論家であるトーマス・カーライルが広めたとされる言葉で、その意味するところは「時として多くを語らない方が良い、つまり沈黙を保つことにこそ価値がある」という状況が存在することを示唆しているものです。
この言葉の意味するところを踏まえると、問題や課題を解決するためや、新たなことに臨むにあたっては、まずは「できない理由を雄弁に語る」ことに終始するのでなく、「どうしたらできるのか」をじっくりと「沈黙して」考え、具体的に取り組んでいくことが必要なのではないかと考えています。