パオと高床

あこがれの移動と定住

太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書)

2007-08-05 12:58:28 | 国内・エッセイ・評論
去年、話題になった本だ。しかし、この問題はより危機的に継続している。もっともシンプルなところから、日本国憲法の独自性と独自であるからこそ価値があるということを語っていく。
例えば、改憲派がアメリカからの押しつけ憲法であるということを改憲の動機付けにすることに対しては、日米合作の理想像があるのだと憲法の視野の広さを主張する。また、攻撃されたらどうするかとよく主張される改憲派の論旨には、腹をくくることと個人と国家の違いで切り返そうとする。
武力放棄という珍品さによって、むしろケンカや暴力に到る行為、戦争に至る結論を別の知恵へと留保させる九条の力と誇りが強く語らえる。
話題は宮沢賢治、田中智学、坂口安吾、桜、クンデラ、免疫系、立川談志、宗教など豊富に吸引しながら進んでいく。芸と想像力と感受性に、ボクラの未来を賭けていくように。
憲法が現実にそぐわなくなっていると語る人がいる。しかし、現実に対処するのは政治と法律の世界である。憲法という基本法であり最高法規は、常に法と政治の暴走を食い止め、道を示す理念である。常に、実効性への議論を巻き起こしながら、国民に反省と責任と多様な選択と知恵を促していくものではないのだろうか。理念は夢であり誇りである。
太田光のおもしろさと感受性と芸風が光る一冊だ。爆笑問題が様々な分野の学者と知と技術の最前線について語り合うNHKの番組も面白い。
中沢新一の総合力も豊かなものだ。


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