パオと高床

あこがれの移動と定住

惟任將彥『灰色の図書館』(書肆侃侃房 2018年8月11日) 一首一献(5)

2018-09-16 08:36:48 | 詩・戯曲その他

歌人は「これとう まさひこ」と読む。なんだか由緒ありげな名前だ。で、歌集名と装幀に引かれて手にする。
冒頭歌

窓に星座の映る真夜中本を読むわれもいつしか本と変はりて (「読む時間」)

あっ、いいじゃん。

コーヒーを淹れる間の数分のうつぶせにされたるままの本

あっ、あっ、いい。で、歌の世界に、本の世界に。
今、ネットで本を買うことが多いけれど、図書館や書店は楽しい。森であり、迷宮であり、細胞のつくりあげた脳のようであり、
質感と量感を持った可視化したネット世界でもある。
暇さえあれば、図書館にいる。で、図書館といえば、アレクサンドロスの迷宮か。

灰色の図書館訪ふ白髪のホルヘ・ルイス・ボルヘスたちが  (「灰色の図書館」)

で、やはり、この人でしょうね。

最上段の本を手に取る眺むれば一面天金煌めく世界
地下閉架図書館内に銀髪の仙人見たりとの情報あり

そうして、本と出会いながら、自分に会ってしまい、自分と出会って、世界との齟齬にも向き合い、それでも世界はそこにあり

図書館の外も一面灰色の世界となりてわれを迎ふる

また、一冊と読みすすめ、

雨音の優しさに慰められて悲しき物語読了す

そういえば長田弘に『幸いなるかな本を読む人』という詩集があった。書物をモチーフにした魅力的な詩集だった。
コメント
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