パオと高床

あこがれの移動と定住

吉田秀和『永遠の故郷 夜』(集英社 2008年2月5日)

2021-11-21 19:54:01 | 国内・エッセイ・評論

再読する。
というのも、リヒャルト・シュトラウスの歌曲「最後の四つの歌」のCDを図書館で借りたからで、
その時に、あっ、そうだと思い出したのだ、この本を。時間を越えてやってくる思い。
『永遠の故郷』シリーズは、音楽が共にあって、これからも音楽が流れつづける時間の中にいるはずなのだが、
いつか訪れてしまう時間の終焉に、でもそれでも、時間が流れつづけるように音楽はそこにあり、あるはずで、
という、そんな音楽への思いを滲ませている。
あのときボクはこの曲を聴いていたなとか、口ずさんでいたなとか、それは、これまでの膨大に積み重なった時間なのだけれど、
一瞬でもあって、そこにはたくさんの思いが漂っていて、でも、いつか音は止まるのだろうか、
いやそれでも、死が訪れても、音は実はあたりまえに流れ続けていって。
だが、やはり、そこでは音楽は消えていき、消えていきながら、その音楽の流れた時間は、記憶は、
それも薄れながらも消えていくようで、なくしそうで、そんな心のふるえが、旋律のように、音のように
空気のふるえに、ゆれになるのだろうな。

吉田秀和の『永遠の故郷』シリーズは、文章自体が音楽のようだ。
自在さや愉しさ、なんだか切ない感じとか、強靱さとか、そんなものがある。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中江有里『万葉と沙羅』(文... | トップ | 藤井雅人『孔雀時計』(土曜... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国内・エッセイ・評論」カテゴリの最新記事