ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

狭山茶 入間市の八十八夜新茶まつり

2011年05月12日 16時49分30秒 | お茶・農業



入間市は狭山茶の本場である。狭山茶とは、埼玉県下で生産されるお茶の総称だ。栽培面積(約500ha)、収穫量とも埼玉県で一位。狭山茶の半分はこの市で産する。

主産地の金子台に広がる茶畑は約350ha。関東以北で最大規模を誇る。かまぼこ型に刈りこんだ「本茶園」が整然と並ぶ。。県の茶業研究所はここにあり、ちょっと離れた市の博物館のメーンテーマはもちろんお茶。小高い、その名も「茶業公園」からは広大な茶畑を見渡すことができる。

この「入間の茶畑」は、05年埼玉新聞社がはがき投票で募集した「21世紀に残したい・埼玉ふるさと自慢百選」で、名所などの部で第一位に選ばれた。

「北狭山茶場碑入り道」と大書した、ギネスブック掲載の日本一の道標も立っている。この道標は、高さ4.1m、台石1・1m、重さ20t。近くの龍円寺にある「北狭山茶場碑」への道を教えるものだ。

金子台には「茶どころ通り」があり、市の市内循環バスのルートは、「てぃーろーど(TEA ROAD)」と呼ばれている。

狭山茶は市の売り物だから、市役所前に8aの茶畑もある。11年には立春から数えて「八十八夜」の5月2日の朝、ここで茶摘み体験や新茶試飲会が開かれた。東日本大震災に配慮し、この年は「新茶まつり」の名を「試飲会」と改めた。(写真)

所沢市の同様な催しを見たばかりなのに、「やはり本場も」とJR武蔵浦和駅から電車で出かけてみた。乗り換えや入間市駅からの徒歩でけっこう時間がかかって、終わる寸前だったが、市役所ホールの展示や農政課でもらったパンフレット、博物館の資料などを読むと勉強になることが多かった。

「狭山茶摘み歌」に

♪色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす♪

という一節がある。

狭山茶は、この歌のように日本三大銘茶の一つに数えられる。なぜその中で「味は狭山」なのか。いつも疑問に思っていた。

この地は、茶の大規模な産地としては北限に近い。冬には霜が降りることもある比較的冷涼な丘陵地帯にある。その気候のおかげで肉厚の茶葉ができる。この「茶葉の厚さ」が狭山茶の売りである。

私は味の鑑定にはまったく自信がない。聞いたり、読んだりしていると、狭山茶にはこの厚さのために濃厚な甘みやこくがあるという。色も香りも味も濃いとされ、「少ない茶葉でもよく出る」というから貧乏人には有難い限りだ。

このような茶を揉んで加工するにも一工夫があった。「狭山火(び)入れ」である。機械製茶が導入される前の手揉み茶の時代、蒸した茶葉は、焙炉(ほいろ)の上に和紙を敷き、下から熱して指で揉みながら乾燥させた。この火入れを高温にすると、独特の「火入れ香」が出た。

現在の狭山茶の主要品種は、静岡の「やぶきた」や地元の「さやまかおり」。実質的に最北限なのだから、問題もある。

南の産地鹿児島では、年に何度か茶摘みができる。ここでは春夏二回だけ。一番茶は四月下旬から五月下旬、二番茶は六月下旬から七月上旬と決まっている。当然、温暖で4~5回摘める鹿児島はもちろん、静岡より収穫量はかなり少ない。

ところが、霜の心配はあっても、土壌や雨量が茶づくりにピッタリだった。金子台などの狭山茶の産地は、武蔵野台地にある。この台地は、砂や石ころの層の上に、富士山などの火山灰が厚く積もってできた。

両者とも水はけがよく、雨水が地下に沁み込むため、水田には適さず、畑作中心。この水はけの良さが茶の栽培には好都合だった。

茶は、年間降水量1300mm以上の雨の多い土地を好む。入間市の年間降水量は約1500mmと、これをかなり上回る。茶の栽培に適した、雨が多く、水はけの良い土地の条件を「上湿下乾」というそうだが、入間市はまさにその条件にぴったりの場所なのだという。

もうひとつこの地では、農家が自ら栽培し、製茶し、販売までを一貫して行う「自園・自製・自販」が主流になっているという。

なるほど。緑茶大好き人間なので、見ること、聞くこと、読むこと、いずれも面白い。



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