ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

県の蝶・ミドリシジミを見る集い さいたま市

2013年07月01日 18時26分19秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物


それぞれの県には動植物のシンボルがある。

埼玉県の場合、植物の「県の木」ケヤキと「県の花」サクラソウは身近にあってすぐ分かる。

だが、動物の「県民の鳥」シラコバト、「県の魚」ムサシトミヨ、「県の蝶」ミドリシジミとなると、見たことがない人も多いだろう。

シラコバトは、「県のマスコット」コバトンのモチーフになった。国の天然記念物に指定され、絶滅危惧種になっているというから、一度は見てみたいものだと、越谷市の「キャンベルタウン野鳥の森」に出かけたことがある。

首の後ろに黒色の横帯があるのが特徴。頭部にかけて白っぽく、なんともスタイルがいい。一目見たら思わず惚れ込んでしまう可愛いハトである。

同じく絶滅危惧種のムサシトミヨは、羽生市のさいたま水族館で見たことがある。

3.5~6cmほどの大きさ。きれいで冷めたい(水温10~18度)湧き水があり、水草がある細い流れの川にしか生息しないので、熊谷市の元荒川上流の県指定天然記念物・区域の水路(約400m)などで保護されている。オスが巣を作り、子育てをするのが特徴。

この水路では、市のムサシトミヨ保護センターなどでくみ上げた日量約1万tの地下水(年間平均約15度)が流され、ミクリやコカナダモの水草が見られる。(「平成の名水百選」日本の水をきれいにする会編集 ぎょうせい)

「世界で熊谷市だけに生き残った奇跡の魚」といわれるだけに、気むずかしい魚なのである。ごく近い将来絶滅の危険性が極めて高い種(ⅠA類)に分類されている。

絶滅危惧種には指定されていないものの、最も人目につきにくいのはミドリシジミだ。

約4cmとこれまた小さいうえ、なにしろ梅雨の終わり(夏至の1週間後)の夕方にしか姿を見せないからだ。ハンノキの葉が大好きで、羽根がキラキラと緑色(素人には青く見える)に光って美しいオスは、高いのは20mもあるハンノキの梢の辺りを飛び回るので、よほど眼力に自信がある人の目にしか入らない。

13年6月29日(土)。県みどり自然課と埼玉昆虫懇話会の共催で「ミドリシジミを見る集い2013」が開かれた。

ミドリシジミが、県政120周年を記念して、「県の魚」と並んで「県の蝶」に指定されたのは1991年だった。昆虫を県のシンボルに指定したのは埼玉が初めてだった。集いはこの後、毎年開かれている。

場所は、さいたま市の荒川沿い秋ヶ瀬公園の「ピクニックの森」。公園は、川に沿って南北に伸びていて、この森はその北端(最上流)、所沢市に至る羽根倉橋に近い。

この森の炊飯場のかたわらに写真のような「ミドリシジミの森」の看板が立っている。

ここが選ばれたのは、ミドリシジミがその葉を食べるハンノキの高木が密集しているからだ。

埼玉県の水田地帯には、ハンノキが生えているところは他にもあるとはいえ、ここが一番密集している。おそらく関東でも一番だとか。ハンノキがこれほど密集しているのは日本でも珍しいからだという。

集合時間は午後4時。集まったのは約60人だった。ミドリシジミが活動する時間に合わせるためだ。

ミドリシジミのオスは昼間は下草などにいて、夕方になると、梢近くに上り、空中に「縄張り」を作って、入ってきたミドリシジミを追いかける。

二匹または数匹が空中で絡み合い、その飛行は「卍巴・まんじともえ」と呼ばれる。7時頃の「日の入り」で終わり、夜はコウモリの出番だ。

近年、この地でミドリシジミの発生は少なく、一昨年は一匹も見当たらず、昨年もわずかだった。

今年は、専門家の説明を聞きながら歩いているうち、まずメスが見つかって、捕捉された。小さいが、薄茶色で羽の後部に斑点があり、近くで見ると極めて美しい。

メスはオスのように縄張りを主張する必要もなく、葉の裏でオスの来るのを待っているのだから、木の下の方でも見つかりやすいのだという。

メスがハンノキの木肌に生んだ卵もいくつか見つかった。眼力には自信が無いので、3個一緒になっているのに1個にしか見えなかった。卵を産むのは細いハンノキが多いという話だった。

期待されたオスの「まんじともえ」も専門家には見えたようだ。声が上がって、梢を見上げたのに、私の目には入らなかった。

「動態視力も必要」という声もあった。全く同感だった。

埼玉昆虫談話会は、昆虫の研究者、愛好家など県内外の約250人が加入していて、セミナーや研究発表会などを行っている。


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