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Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「諸怪志異 (1) 異界録」諸星大二郎

2009-07-07 23:37:25 | book
諸怪志異 (1) 異界録 アクションコミックス
諸星 大二郎
双葉社

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いやいや~面白かった^^
中国故事風の、普通の起承転結におさまらない、ちょっと背骨がずれちゃったような奇想に満ちた短編集でございます~。全体として重さと軽さが同居した、どちらにも傾きをもった感じで、好みですな~~

「犬土」
いきなり説明なしに「犬土」に襲われ、説明なしに五行先生と阿鬼が不思議な力を発揮する。この説明なし感が故事風でいい。基本「説明なし」は大好きなのだ。
妖術で動物と人間が遠隔で繋がる際に、顔が入れ替わる、というのは諸星的な感じがする。西遊妖猿伝でも妖術に捕われた玄奘の顔が蜥蜴の顔に浮かび上がる。
諸怪志異の後の作品にも石と顔が入れ替わってしまう話がある。
犬土の呼称についても最後に種明かしがあり、人を食っていて面白い。

「異界録」
これもスゴい!わけわかんない設定がまた中国4千年って気分いっぱいです。
なんで裏返っちゃうわけ?^^;で、「その場所からひきはなされると死ぬ」ってのもよくわからんし。結局あの異界はなんだったのかなんてことはまったく明かされず。これはあれだ、悪い夢をみているような、ってやつだ。すごく気に入った。
異界で中心に光の世界がある、という光景は諸星ではくりかえし現れるモチーフ。

「妖鯉」
これは先が読める。最後の「ワハハハハハハ」という笑い声がすごく好きだ。ほんとうに聴こえてきたよ。鯉の丸焼きは昔食ったことがある。30年くらい前に。いまでもごちそうなんだろうか。あまり食べたくないような気がする。

「幽山秘記」
俗塵を捨て神仙の道を求めて・・・とかいう決意も結局は女人のイメージだけでもろくもついえ去る・・のはほぼ人間的真理なのでしょうなあ、しみじみ
あそこで彼がほんとうに仙人の心を求めていたら、後の世の大乱は起きなかったのです~~女人が罪なのか、女人を求める心が罪なのか(なんか後者な気がする^^;)

「鬼城」
阿鬼と五行先生の出会いの物語。屋根の上に赤い腹掛けをして旗を振る子供、というイメージはなにやら怖い。背筋寒し。『シックス・センス』の肌寒さをふと思い出す。阿鬼が逃げてゆく城の鈍い重々しさも迫力満点、と思ったら殷の亡霊だったとはねえ。。甲骨文字の時代・・・

「小人怪」
いいすね!人生すべて見透かされているというなにやら締念のような教訓のようなよくわからない脱力感がよいですな。ネズミもそうそう家の中では見なくなったので、こういう境地もなかなか味わえませんな。

「魔婦」
これもネタ一発勝負でしかも途中から見えちゃう(笑)阿鬼はちいさいころから優しいヤツだね。こういう人間になりたい。あ、でも見鬼はちょっと怖い。
しかし、こういうお母さんているよな実際。ダンナがどんどん精気がなくなっちゃうタイプ(笑)

「三呆誤計」
どうしたらこんな阿呆な話を考えつくのだろうか??中国故事なのかな。創作なのかな。ほんとにもう阿呆どもの考えることは・・ただ娘に近づきたいというだけであの手この手、しかもいざその段になるとマヌケな穴だらけ。コメディの基本をしっかりおさえていて大笑い。魔法の切り売りのようなこともいにしえの中国にはいかにもありそうで上手い。

「花仙境」
一転してファンタジック。東洋のファンタジー。おしゃまな妖精を描くとなかなかいいのだ。みょうがの根をベッドの上に吊るしておくと寝小便しないそうだ。という「魔婦」のネタをさりげなくここでもつかっているところが可笑しい。

「毛家の怪」
正統派怪談。ちょっと江戸川乱歩か夢野久作風な。死者が亡霊となるのも恐ろしいが、生者の妄執が生霊となって現れるのもまた格別に恐ろしいなあ。語り手が歳若い小間使いなところもますます古風な感じがしてよい。

「連理樹」
植物に生命がある、ということを意識せよ。生命を慈しむことを忘れるな。というのはいまではなにやら環境問題の命題のようであるが、もっと自然な思いとして人には育まれていたのだろう。自然に囲まれて暮らすもよいだろう。こういう物語で学ぶのもよいだろう。


各篇の扉が切り絵風でとてもよい。これはどうやら諸怪志異1巻だけらしい?

各編読み切りで、五行先生と阿鬼がときおり顔を出すところがちょっとつながっている。その適度に独立した感じがまた想像力を刺激するんだな~


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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まだお読みになっていなかった? (めるつばう)
2009-07-08 12:00:20
このシリーズは大好きです。
あ、妖怪ハンターもですが。
「聊齋志異」を模しているのでしょう
けれどまったく違ったテイストです。

大人になった阿鬼ちゃんよりこのころの
ほうがかわいくて好きです。

返信する
そ~なんす (manimani)
2009-07-08 21:46:38
☆めるつばうさま☆
左利きのめるつばうさんこんにちは
コメントありがとうございます~

なわけで、未読だったんですよね~
このあいだ大人買いして、もう4巻読んでしまったんですけどね。ここに書くのが億劫で(笑)

阿鬼が大きくなったのをみたらちょっと残念な感じがしましたね。西遊妖猿伝とちょっとキャラかぶりぎみだし・・
返信する
 (とらねこ)
2009-07-09 14:23:45
わー、これすっごく面白そうですね!
>普通の起承転結におさまらない、ちょっと背骨がずれちゃったような奇想に満ちた短編集
この表現の仕方がまたいい感じです
それに私『聊齋志異』大好き

ところで「へぶたう」ってどういう意味ですか?
返信する
といわれると (manimani)
2009-07-09 21:56:39
☆とらねこさま☆
コメどうも~^^

「諸怪志異」は4巻あるんですけど、前半のほうがいいような気がします。後半は続き物冒険活劇みたいになってくるので。

で、『聊齋志異』未読なので、今日買ってしました。読むぞ~!

へぶたうの由来は謎です。あぶたう、ぶぶたう、へぶたうの3種類がいます。そのうちのひとりがへぶたう。
「たう」はビルマ語で「飲む」だそうです。「へぶ」はなんだかわかりません。
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