グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA) | |
飛 浩隆 | |
早川書房 |
すーごい面白かった。
道具立てはそんなに目新しくはないけれども
奇想にあふれている。
AIや打ち捨てられた仮想世界と
そこへのハッキングという装置を用意することはいまなら誰でも出来そうだけど、
そこにスウシーの逸話や苦痛の肉塊やジュリーとジョゼの誓いを
エロスとタナトスの呪縛の中に絡ませて提示できる人は
ほんの少ししかいないだろう。
道具立てだけ見てこれを古くさいと切り捨ててしまう評を目にしないでもないが
それはあまりにももったいない話である。
これは自分の人生の物語である。
じっくり何が書いてあるかを読み解いてみてからでもよいはずだ。
意外と映画的なところも。
内面描写を大胆に活劇に絡めているところなどは
実に映画にしにくいとは思うのだが、
細部にいちいち奇想をこらしているところは
映画でいちいち拾って描くと見応えがあると思う。
読んでいて映像が脳内を駆け巡る。
リドリー・スコットでどうかな。
続編がある。
続編がないと残された我々はかなり苦しい思いをするだろう。
でも著者は続編は本作とはまるで違ったものになるだろうと
ノートに記しているので
さてどこへ連れて行かれるのか??
ワタシとしては、ディック以来の本当に好きな作品という印象だわ。
「道具立てだけ見てこれを古くさいと切り捨ててしまう」ような人は、「SF」という狭い範囲でしか物が見れない人なんでしょう。そういう人はディックも面白くないでしょうにね。
piaaさんのおすすめで読んでみましたが、確かにスゴいです。SFとしてスゴいというよりは小説としてすごいという感じでしょうね。
スゴいものを教えてもらってありがとうございます。