◆現代日本の政治問題に真正面から取り組んでいる若者たちの劇団がある。「圧力団体イクチヲステガ」という。「史上地上に始めて足跡を残す事を許された生物の一つ」が、イクヲステガであり、「我々は圧力をかけ少しでも豊かな世界の捉え方を提案し実現し実践しつづけていく団体である」という。
この劇団が、9月28日、29日、30日、10月1日、2日の5回、東京都北区豊島7―26―19の「シアター・バビロンの流れのほとりにて」で、「幸福~Beyond the Fortune~」と題して公演した。最終日に観劇して、大変感動した。
◆現在進行中の「憲法改正論」や「国防論争」、さらには、「愛国心問題」などを批判的に、かつ皮肉に捉えながら、ドラマを展開していた。あらすじは、「圧力的補足」(世界観)と称して、以下の通りまとめられていた。
デカルトとの戦争に敗れて65年。書き換えられた憲法と非武装の精神はデカルトの軍事的傘の下で経済的繁栄と共に謳歌されてきた。しかしサカモトは経済至上主義の弊害と国際関係の変化により徐々に国内外にズレを生じさせていった。国外では極東アズカストの覇権を巡ってベストが台頭し、軍事的均衡を維持するためデカルトとベストが対立を深め、ゼッカルの政治的崩壊を危惧し憲法改正論や国防論争が俄かに沸き立ってきている。国内では少子高齢化、格差の拡大、デカルト軍事基地問題等難題を抱えたまま、サカモトは自主独立国家として誇りと存在を問われる過渡期に差し掛かっている。
サカモト・・・極東アズカストの海にストの海に浮かぶ島国。65年前デカルトに敗戦し、国体を造り変えられた。武力放棄を憲法に記してはいるが専守防衛の軍隊を保持もしている。
デカルト・・・サカモトとは大きく海を隔てた自由主義大国。近代主義思想から成立した実験的多民族国家であり、世界一の経済大国。
ベスト・・・・極東アズカストで最大の規模を持つ共産主義国家。農村部と都市部の貧富格差が拡大し深刻な問題になっている。
ゼッカル・・・サカモトの隣国。独裁国家だがその体制は限界に達したといわれて数年、サカモトとの間には数々の未解決問題が横たわっている。
アズカスト・・地球の陸地の半分を占める巨大大陸。サカモトは陸続きではないが極東アズカスト地域に含まれている。
(サカモトは日本。デカルトはアメリカ。ベストは中国。ゼッカルは北朝鮮。アズカストはユーラシア大陸を明らかに示している)
◆「CAST」は、次の通り。
ロナ・ネド 豊田加奈子
デコ 矢嶋辰徳
リオ 渡辺毅
バスチアン 戸張祐介
アンドレイ 岡野康弘
ディディエ 珍竹
ズラタン ヨロレイヒ~♪
セスク 8
ジュン 愉快痛快
サイレス G・F藤田
◆「STAFF」は、
原案 イクチヲステガ
作・演出 放蕩詩源
演出・小道具 G・F藤田
演出・振付け 愉快痛快
音響 加藤プラズマ小百合
舞台監督 アンチェインちゃん
照明 小泉献子
美術・宣伝美術 竹内悠
制作 愉快痛快 G・F藤田
(CAST、STAFFからもわかるように、まさしく手作りの演劇であるところが、実に微笑ましい)
◆「愛国心」について、主役のロナ・ネドが、「みんなの心のなかにあるもので強制すべきものではない」という趣旨の発言をしていたのは、説得力があった。国会で教育基本法改正法案、日本教育基本法案の審議が行なわれている現在、改めてこの演劇を思い出しながら、政治に無関心でいると知らず知らずのうちに、新たな政治状況が着実に造られ、不可逆な事態に陥ってしまいかねないと心配がましてくるのを覚える。と同時に「幸福」というものが、うかうかしていると得たいの知れない権力や政治勢力から根底から覆させられる危険があることを痛感させられる。「幸福」は、それほどひ弱なものであるからこそ、日常生活のなかで流されるままでいるのではなく、大事にしなくてはならない。この点で、この演劇は、間違いなく時宜を得た秀作である。
◆舞台の背景に、火焔地獄のなかで巨大な「牝鶏(めんどり)」が大きな声を上げているような図をメインにしたセットが終始配置されていた。牝鶏で想起されるのは、中国の故事である。10月31日に逝去された立命館大学の白川静名誉教授の「字源」を紐解くと、こう解説されている。「牝鶏 [書、牧誓]古人言ヘること有り。曰く、牝鶏は晨(あした)すること無し。牝鶏の晨するは、惟(こ) れ家の索(つ)くる(滅びる)なりと」
俗に、女性が政治向きのことに嘴を入れるようになると世の中は乱れ、国家が滅びる、と古来から言われてきた。
この「幸福」というドラマでは、主人公の女性に、政党の党首を演じさせているが、女性が政治に関与して、強い発言力を持つ世の中の危うさをも、暗に示唆していたのかも知れない、と気付かされる。そういう仕掛けも面白い。その意味でもう一度観劇してみたい。
◆なお、「圧力団体イクチヲステガ」は、「2007年早春」の次回公演テーマを一般募集している。併せて、「構成メンバー・制作さん」も大募集中である。興味・関心のある方は、下記に連絡してみてください
〔連絡先〕070―5020―9624 03―3900―0220(FAX)
東京都練馬区小竹町2―34―16 フラット35D―127号
この劇団が、9月28日、29日、30日、10月1日、2日の5回、東京都北区豊島7―26―19の「シアター・バビロンの流れのほとりにて」で、「幸福~Beyond the Fortune~」と題して公演した。最終日に観劇して、大変感動した。
◆現在進行中の「憲法改正論」や「国防論争」、さらには、「愛国心問題」などを批判的に、かつ皮肉に捉えながら、ドラマを展開していた。あらすじは、「圧力的補足」(世界観)と称して、以下の通りまとめられていた。
デカルトとの戦争に敗れて65年。書き換えられた憲法と非武装の精神はデカルトの軍事的傘の下で経済的繁栄と共に謳歌されてきた。しかしサカモトは経済至上主義の弊害と国際関係の変化により徐々に国内外にズレを生じさせていった。国外では極東アズカストの覇権を巡ってベストが台頭し、軍事的均衡を維持するためデカルトとベストが対立を深め、ゼッカルの政治的崩壊を危惧し憲法改正論や国防論争が俄かに沸き立ってきている。国内では少子高齢化、格差の拡大、デカルト軍事基地問題等難題を抱えたまま、サカモトは自主独立国家として誇りと存在を問われる過渡期に差し掛かっている。
サカモト・・・極東アズカストの海にストの海に浮かぶ島国。65年前デカルトに敗戦し、国体を造り変えられた。武力放棄を憲法に記してはいるが専守防衛の軍隊を保持もしている。
デカルト・・・サカモトとは大きく海を隔てた自由主義大国。近代主義思想から成立した実験的多民族国家であり、世界一の経済大国。
ベスト・・・・極東アズカストで最大の規模を持つ共産主義国家。農村部と都市部の貧富格差が拡大し深刻な問題になっている。
ゼッカル・・・サカモトの隣国。独裁国家だがその体制は限界に達したといわれて数年、サカモトとの間には数々の未解決問題が横たわっている。
アズカスト・・地球の陸地の半分を占める巨大大陸。サカモトは陸続きではないが極東アズカスト地域に含まれている。
(サカモトは日本。デカルトはアメリカ。ベストは中国。ゼッカルは北朝鮮。アズカストはユーラシア大陸を明らかに示している)
◆「CAST」は、次の通り。
ロナ・ネド 豊田加奈子
デコ 矢嶋辰徳
リオ 渡辺毅
バスチアン 戸張祐介
アンドレイ 岡野康弘
ディディエ 珍竹
ズラタン ヨロレイヒ~♪
セスク 8
ジュン 愉快痛快
サイレス G・F藤田
◆「STAFF」は、
原案 イクチヲステガ
作・演出 放蕩詩源
演出・小道具 G・F藤田
演出・振付け 愉快痛快
音響 加藤プラズマ小百合
舞台監督 アンチェインちゃん
照明 小泉献子
美術・宣伝美術 竹内悠
制作 愉快痛快 G・F藤田
(CAST、STAFFからもわかるように、まさしく手作りの演劇であるところが、実に微笑ましい)
◆「愛国心」について、主役のロナ・ネドが、「みんなの心のなかにあるもので強制すべきものではない」という趣旨の発言をしていたのは、説得力があった。国会で教育基本法改正法案、日本教育基本法案の審議が行なわれている現在、改めてこの演劇を思い出しながら、政治に無関心でいると知らず知らずのうちに、新たな政治状況が着実に造られ、不可逆な事態に陥ってしまいかねないと心配がましてくるのを覚える。と同時に「幸福」というものが、うかうかしていると得たいの知れない権力や政治勢力から根底から覆させられる危険があることを痛感させられる。「幸福」は、それほどひ弱なものであるからこそ、日常生活のなかで流されるままでいるのではなく、大事にしなくてはならない。この点で、この演劇は、間違いなく時宜を得た秀作である。
◆舞台の背景に、火焔地獄のなかで巨大な「牝鶏(めんどり)」が大きな声を上げているような図をメインにしたセットが終始配置されていた。牝鶏で想起されるのは、中国の故事である。10月31日に逝去された立命館大学の白川静名誉教授の「字源」を紐解くと、こう解説されている。「牝鶏 [書、牧誓]古人言ヘること有り。曰く、牝鶏は晨(あした)すること無し。牝鶏の晨するは、惟(こ) れ家の索(つ)くる(滅びる)なりと」
俗に、女性が政治向きのことに嘴を入れるようになると世の中は乱れ、国家が滅びる、と古来から言われてきた。
この「幸福」というドラマでは、主人公の女性に、政党の党首を演じさせているが、女性が政治に関与して、強い発言力を持つ世の中の危うさをも、暗に示唆していたのかも知れない、と気付かされる。そういう仕掛けも面白い。その意味でもう一度観劇してみたい。
◆なお、「圧力団体イクチヲステガ」は、「2007年早春」の次回公演テーマを一般募集している。併せて、「構成メンバー・制作さん」も大募集中である。興味・関心のある方は、下記に連絡してみてください
〔連絡先〕070―5020―9624 03―3900―0220(FAX)
東京都練馬区小竹町2―34―16 フラット35D―127号