漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「永エイ」<ながい> と「泳エイ」「詠エイ」「咏エイ」「昶チョウ」「怺こらえる」

2024年04月09日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 エイ・ながい  水部 yǒng

解字 甲骨文第一字は「彳(ゆく)+人+水流を表す数個の点」で、人が川を泳ぐ形。下の第二字は水流の点が二つ、金文は水流の線が一つ、篆文は右の水流が曲線になり、隷書(漢代)で彳の上が横線になり人がフに、右辺がになり、現代字で永になった。意味は、本来の泳ぐ意でなく、川の流れが長く、またいつまでも続くことから、距離や時間が「ながい」意で使われる。
意味 (1)ながい(永い)。距離・時間がながい。「永続エイゾク」「永年エイネン」 (2)とこしえに。かぎりなく。「永久エイキュウ」「永世エイセイ」「永眠エイミン

イメージ 
 「ながい」
(永・詠・咏・昶・怺)
  本来の意味である「およぐ」(泳)
音の変化  エイ:永・詠・咏・泳  チョウ:昶  こらえる:怺

ながい
[咏] エイ・よむ・うたう  言部 yǒng
解字 「言(ことば)+永(長くのばす)」の会意形声。言葉を長くひいて声を出すこと。咏エイは同じ意味の異体字。
意味 (1)うたう(詠う)。うた。声を長くのばしてうたう。「吟詠ギンエイ」(声に出して詩歌をうたう)「朗詠ロウエイ」(詩歌を声高くうたう) (2)よむ(詠む)。詩歌をつくる。「詠歌エイカ」(歌をつくること。よみあげること) (3)声に出して感動する。「詠嘆・詠歎エイタン
 チョウ・ながい・のびる  日部 chǎng
解字 「日(ひ)+永(長い)」の会意。日(昼間)の時間がながい意。また、同音の暢チョウ(のびる)に通じ、のびる意がある。
意味 (1)ながい(昶い)。日が長い。「昶チョウは日長い也(なり)」(説文新附) (2)のびる(昶る)。のびやか。=暢チョウ。「雅昶ガチョウ」(みやびでのびやか) (3)人名。「孟昶モウチョウ」(十国後蜀の第2代(最後)の皇帝)
[国字] こらえる  忄部
解字 「忄(こころ)+永(ながい)」の会意。平常の心をながくもたせること。こらえる意。
意味 こらえる(怺える)。たえる。がまんする。ゆるす。「痛みを怺える」

およぐ
 エイ・およぐ  氵部 yǒng
解字 「氵(みず)+永(およぐ)」の会意形声。永は、もともとおよぐ意だが、永い意となったので、氵(水)をつけて本来の意を表した。
意味 (1)およぐ(泳ぐ)。およぎ。「水泳スイエイ」「遠泳エンエイ」「競泳キョウエイ」 (2)泳ぐような動作。「体が泳ぐ」 (3)かき分けてたくみに進む。「群衆の中を泳ぐ」
<紫色は常用漢字>

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音符「敖ゴウ」<放たれて出る>と「傲ゴウ」「遨ゴウ」「熬ゴウ」「螯ゴウ」「嗷ゴウ」「鼇ゴウ」「贅ゼイ」

2024年04月07日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ゴウ・あそぶ・おごる  攵部 áo   

解字 篆文は「出る+方+攴ボク」で、後漢の[説文解字]は「出る+放つ(方+攴(攵)」と解釈して「出游(であそ)ぶ也(なり)」とする。放たれて出歩くことから游ぶ意味とした。また、自由に出歩き相手かまわずふるまう意から、思いあがる・おごる意が派生した。現代字は、出⇒土、攴⇒攵に変化した敖ゴウとなった。なお、あそぶ意は遨ゴウが、おごる意は傲ゴウが主に受け持つ。
意味 (1)あそぶ(=遨)。なまける。「敖遊ゴウユウ」(気ままに遊ぶ) (2)おごる(=傲)。たかぶる。「敖慢ゴウマン」(おごりたかぶる)

イメージ 
 「あそぶ」
(遨)
 「おごる」(傲)
  放たれて出る意から「突出する」(贅・螯・嗷・鼇・鰲)
 「形声字」(熬)
音の変化  ゴウ:遨・傲・熬・螯・嗷・鼇・鰲  ゼイ:贅

あそぶ
 ゴウ・あそぶ  辶部 áo
解字 「辶(ゆく)+敖(あそぶ)」の会意形声。あそびあるくこと。
意味 (1)あそぶ(遨ぶ)。気ままにあそぶ。「遨遊ゴウユウ」(気ままにあそび楽しむ)「遨嬉ゴウキ」(あそびよろこぶ)

おごる
 ゴウ・おごる  イ部 ào
解字 「イ(人)+敖(おごる)」の会意形声。おごりたかぶる人。
意味 (1)おごる(傲る)。あなどる。見下す。「傲慢ゴウマン」(おごって人をあなどる)「傲然ゴウゼン」「傲岸ゴウガン」(おごって人を見下す)
覚え方 ひと()どかた(土方)ぼく()はって慢に(人を土方と見下していたボク(攵)は傲っており傲慢だった)[漢字川柳]

突出する
 ゼイ  貝部 zhuì
解字 「貝(財貨)+敖(突出する)」の会意形声。必要以上にお金を使うこと。転じて、むだ・よけいなものの意味になる。
意味 (1)むだ。よけいなもの。「贅沢ゼイタク」(必要以上にお金をかける。分を過ぎる)「贅言ゼイゲン」(むだぐち)「贅肉ゼイニク」(むだな肉)「贅瘤ゼイリュウ」(こぶ。よけいなもののたとえ)
 ゴウ 虫部 áo
解字 「虫(カニ)+敖(突出する)」の会意形声。虫はここで蟹の意。身体の割りに出すぎている蟹のはさみをいう。
意味 (1)蟹かにのはさみ。「蟹螯カイゴウ」(蟹のはさみ) (2)貝の名。はまぐりの一種。「車螯シャゴウ」(シャコガイ科の二枚貝。奄美諸島以南のサンゴ礁の砂地にすむ。殻長40㎝に達する)
 ゴウ・かまびすしい  口部 áo
解字 「口(くち)+敖(突出する)」の会意形声。口から声が出すぎること。
意味 (1)かまびすしい(嗷しい)。やかましい。「嗷嗷ゴウゴウ」(大声でさわぐ)「嗷然ゴウゼン」(やかましいさま)
 ゴウ  黽部 áo
解字 「黽(かめ)+敖(突出する)」 の会意形声。規格外に大きい亀。
意味 (1)おおうみがめ。鰲ゴウとも書く。想像上の動物の名。海中にすみ背中に蓬莱山などの仙山(仙人の住む山)を背負っているという。「鼇峰ゴウホウ」(おおうみがめが背にのせているという海中の仙山の峰)「鼇頭ゴウトウ」(大亀の頭の意から、①中国で科挙の首席合格者。②書物の頭注(本文の上欄、またそこへの書き入れ。)
 ゴウ  魚部 áo
解字 「魚(さかな)+敖ゴウ(=鼇ゴウ)」の会意形声。おおうみがめ。
意味 (1)おおうみがめ。鼇ゴウと同じ。想像上の動物の名。海中にすみ、背中に蓬莱山等の仙山を背負っているという。 (2)地名。「博鰲鎮ハクゴウチン」(海南省東部、南シナ海に面し、万泉河の河口に位置する町。国際会議場や温泉、ゴルフ場等を擁する中国有数の複合リゾート地)「博鰲Bóáo亜州論壇(ボアオアジアフォーラム)」(スイスのダボス会議のアジア版をめざし中国が主体となって博鰲鎮で2002年から開催されている交際会議。当初は盛会だったが最近は首脳クラスの参加が少なくなり尻すぼみになっている。2024年は3月26~29日まで開催された)

形声字
 ゴウ・いる  灬部 áo・āo
解字 「灬(火)+敖(ゴウ)」の形声。後漢の[説文解字]は「乾き煎(い)る也(なり)。火に従い敖ゴウの聲(声)」とし、乾くまで煎ることを熬ゴウという。すなわち、弱火で長時間煮詰めること。また転じて、人がいらだつ意ともなる。
意味 (1)いる(熬る)。水気のなくなるまで弱火で煮詰める。弱火であぶる。「煎熬センゴウ」(①弱火で煮詰めること。②心でいらだつこと)」「熬夜ゴウヤ」(①夜通し熬る。②徹夜)  (2)いらだつ。つらさ。「熬気ゴウキ」(いらだち)「熬苦ゴウク」(いらだち苦しむ)「熬悩ゴウノウ」(いらだち悩む) (3)[国]「熬り子」(小さいイワシを塩水でゆでて干しあげたもの)
<紫色は常用漢字>

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音符 「必ヒツ」<囲んでしめつける> と 「泌ヒツ」「柲ヒ」「秘ヒ」「密ミツ」 「蜜ミツ」「樒ミツ」「瑟シツ」

2024年04月05日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ヒツ・かならず  心部 bì

上段が「必」下段が「戈(ほこ)」。金文・篆文の必は、戈の刃(一印)を省いた形にハをつけている。

①戈(ほこ)の全体図。②柲(ほこの柄)の構造図(中国湖北省博物館の展示解説パネルより)https://www.bilibili.com/read/cv6944622/
解字 金文・篆文は、「戈(ほこ)から刃先を省いた形+ハ(両側をはさみつける)」の象形。戈(ほこ)から刃先を省いた形とは、戈の柄を意味し、そこにハ印で柄を補強する形。柲(武器の柄)の原字。柲は芯となる木の棒に割竹を当て、籐(とう)や革紐でしっかり巻き付け漆を塗って補強したもの[図版参照]。これによって柄は柔軟性があり、かつ強靭性をもつ。ヒツは、柄の木芯を取り巻いて補強した形を表し、「しめつける」「まわりを囲む」イメージをもつ。しかし、仮借カシャ(当て字)され、「かならず」の意となった。現代の字形は、「心+ノ」に変化した。
意味 かならず(必ず)。きっと。「必然ヒツゼン」「必読ヒツドク」「必須ヒッス

イメージ 
 「仮借カシャ」
(必)
 「戈の柄」(柲)
 「しめつける」(泌)
 「まわりをかこむ」(秘・瑟・宓・蜜・密・樒・謐)
音の変化  ヒツ:必・泌・宓・謐  ヒ:秘・柲  ミツ:蜜・密・樒  シツ:瑟

戈(ほこ)の柄 
 ヒ  木部 bì・bié
解字 「木(き)+必(戈の柄)」の会意形声。必は戈の柄を描いた字。必が「かならず」の意に仮借されたので、木をつけて元の意味を表した。
意味 (1)武器の柄。にぎり。戈に装着した柄。「戈柲カヒ」(ほこの柄) (2)ゆだめ。弓にぴったりと当てがって締めつけ、ゆがみを直す道具。

しめつける
 ヒツ・ヒ  氵部 mì・bì
解字 「氵(水)+必(しめつける)」 の会意形声。しめつけて、中から汁がでること。
意味 (1)にじむ(泌む)。狭い隙間や穴から汁がでること。「分泌ブンピツ・ブンピ」「泌尿器ヒニョウキ」(尿の分泌と排泄をつかさどる器官)

まわりをかこむ 
[祕] ヒ・ひめる  禾部 mì・bì
解字 旧字は祕で「示(祭壇)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。入口を閉じ、なかが分からないようにしてひそかに神を祭ること。新字体は、旧字の示が禾(いね)に変化したが、これは神にささげる初穂で、これをひそかに祭る形。いずれも、ひそかに・ひめる意となる。
意味 (1)ひそか。「秘密ヒミツ」「神秘シンピ」(人知ではかり知れない秘密) (2)ひめる(秘める)。かくす。「秘事ヒジ」「秘蔵ヒゾウ」「秘宝ヒホウ」「秘訣ヒケツ」(奥の手)
 ヒツ・しずか  言部 mì
解字 「言(ことば)+必(まわりをかこむ)+皿(うつわ)」 の会意形声。器の中で言葉がまわりをかこまれて外に聞こえないこと。必ヒツは発音も表す。
意味 しずか(謐か)。やすらか。静かなさま。「静謐セイヒツ」(しずかであること。静も謐も、しずかの意)「謐然ヒツゼン」(しずかなさま)
 シツ  王部 sè

瑟(「瑟的歴史」より)
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1637196264554285330&wfr=spider&for=pc
解字 「王王(琴の略体)+必ヒツ⇒シツ(まわりをかこむ)」の会意形声。囲まれた空間の上に弦を張った琴のような弦楽器。琴より大形のものを言う。発音のシツはヒツ(必)の転音。
意味 (1)古代中国で使われた琴に似た楽器。おおごと。琴より大形で25弦ある。現在、復元されている。「琴瑟相和キンシツあいわす」(琴と瑟が合奏して音がよくあうこと。夫婦間の相い和して睦まじいこと) (2)(瑟の音色から)おごそかなさま。しずかなさま。さびしいさま。きよらかなさま。「瑟瑟シツシツ」(風のさびしく、きびしくふくさまの形容)「蕭瑟ショウシツ」(風のものさびしく吹くさま)
 ヒツ・フク  宀部 mì・fú
解字 「宀(いえ)+必(まわりをかこむ)」 の会意形声。家の戸や窓を閉めて中にこもること。やすらか・ひそかの意となる。また、蜜・密・樒の音符となる。
意味 (1)やすらか。「宓穆フクボク」(深く静かで安らかなさま) (2)ひそか。 (3)人名。「宓子フッシ」(孔子の弟子)「宓姫フクヒ」(洛水の精霊)
 ミツ  宀部 mì
解字 「虫(はち)+宓(家の中に閉じ込める)」 の会意。ハチが巣の中に閉じ込めた蜂のみつ。
意味 (1)みつ(蜜)。はちみつ。「蜜蜂ミツバチ」 (2)みつのように甘い。「蜜月ミツゲツ」「蜜柑ミカン」「甜言蜜語テンゲンミツゴ」(蜜のように甜い言葉。うまい話や勧誘の言葉)
 ミツ・ひそかに  宀部 mì  
解字 「山(やま)+宓(閉じこもる)」 の会意で、深く閉ざして人の近付けない山。木が密集してすきまがない・近づけない・ひそかに、の意となる。
意味 (1)すきまなく。「密集ミッシュウ」「密林ミツリン」 (2)外から近付けない。「密室ミッシツ」 (3)ひそかに(密かに)。「内密ナイミツ」「密告ミッコク
 ミツ・ビツ・しきみ  木部 mì
解字 「木(き)+密(=宓。とじこもる)」の会意形声。香りをとじこめている香の材料となる木。日本では、しきみを言う。
意味 (1)中国で古書上の香木。じんこう。沈香。ジンチョウゲ科の常緑高木。熱帯地方の香木。 (2)[国]しきみ(樒)。モクレン科の常緑小高木。香気があり仏壇に供える。葉や樹皮から抹香や線香を作る。
<紫色は常用漢字>

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音符「席セキ」「蓆セキ」 と 「度ド」「渡ト」「鍍ト」

2024年04月03日 | 漢字の音符
    セキ <敷物>
 セキ・むしろ  巾部 xí

解字 甲骨文字は敷物である席(むしろ)の象形。金文は「厂(石の略体)+巾(ぬの)」で、ムシロが巾に代わり発音を表すセキ(石)がついた。巾は布の字では、植物性の繊維の巾を槌などでたたく形であり、ごわごわとした布の意。これを敷物にしたと思われる。篆文第1字は古文(春秋戦国期)で、「厂(石の略体)+敷物」の𠩛で、甲骨文字の敷物がもと帰りしている。篆文第2字で、現在の字体に通じる席の字ができた。この字の巾を除く上部(广+廿)は、石が変化した形で発音のセキを表している。石の字のこのような変化は、ショの上部にもみられる。
 席というと今ではイス席を思い浮かべるが、漢字が出来たころの古代では敷物であった。異体字に𥔆セキという字があるが、この字は甲骨文字の敷物に発音を表す石をつけた形で、初期の席の形をよく表している。
意味 (1)すわる場所。占める位置。「座席ザセキ」「首席シュセキ」「末席マッセキ」 (2)敷物。むしろ。ござ。「席巻セッケン」(むしろを巻くように土地を攻め取ること) (3)しく。敷物をしく。

イメージ 
 「しきもの」
(席・蓆)
音の変化  セキ:席・蓆

しきもの  
 セキ・むしろ  艸部 xí
解字 「艸(くさ)+席(しきもの)」の会意形声。草でできた敷物。
意味 (1)むしろ(蓆)。わらなどを編んで作った敷物。「蓆子セキシ」(むしろ)「茵蓆インセキ」(茵も蓆も、しとねの意。敷物) (2)おおきい。ひろい。


    ド <敷物を広げて大きさを測る> 
 ド・ト・タク・たび  广部 dù・duó
   
解字 「席の略体+又(手)」の会意。席は敷物を表し、度は手で敷物をひろげること。敷物は一枚の長さ・幅が決まっており、敷物を何枚も敷くことによって、長さや広さが分かるため「はかる」「ものさし」「めもり」の意となる。
意味 Ⅰ.ド・トの発音。 (1)ものさし。めもり。「尺度シャクド」「緯度イド」 (2)ほどあい。ていど。「速度ソクド」「程度テイド」 (3)たび(度)。回数。「毎度マイド」「都度ツド」 (4)きまり。のり。「制度セイド」「法度ハット」 (5)強めて言う接頭語。「度胆どきも」(きもを強調していう。=度肝)「度胆を抜く」(きもをつぶさせる。驚かせる) (6)(渡と通用する)わたる(度る)。こえる。「度越ドエツ」(こえる)「度航トコウ」(=渡航) (7)地名。姓。「度会わたらい」(①三重県度会郡度会町。②姓)
 Ⅱ.タクの発音。 (1)はかる。おしはかる。「忖度ソンタク」(他人の心をおしはかる。忖も度も、はかる意)

イメージ
 「はかる」(度・渡) 
 「敷物をしく」(鍍)
音の変化  ド:度  ト:渡・鍍

はかる
 ト・わたる・わたす  氵部 dù
解字 「氵(水)+度(はかる)」の会意形声。度には、はかる意の他に「わたる」意味もあり、水(みず)を度ること。川や湖・海を渡ること。また、水の深さをはかりながら川を渡るとも解字できる。
意味 (1)わたる(渡る)。わたす(渡す)。川や海をわたる。「渡河トカ」「渡航トコウ」(船で海を渡る)「渡来トライ」(外国から渡ってくる) (2)とおる。過ぎる。経る。「渡世トセイ」「過渡カト」(移り行くこと) (3)[国]わたす(渡す)。手渡す。ゆずる。「お金を渡す」「譲渡ジョウト」 (4)地名。姓。「渡辺わたなべ」「渡会わたらい」「渡嘉敷とかしき」「渡瀬わたらせ」「渡島おしま

敷物をしく
 ト・めっき  金部 dù
解字 「金(きん)+度(敷物をしく)」の会意形声。金の膜で敷物をしくように他の金属をおおうこと。
意味 (1)めっき(鍍)。金の薄い膜で、他の金属を覆うこと。「鍍金トキン」(青銅などに金をめっきする)「鍍銀トギン」(銀をめっきする)「鍍(めっき)がはげる」(本性が表れてごまかしがきかない)
<紫色は常用漢字>

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音符「穴ケツ」<竪穴住居の入口> と 「突トツ」「鴪イツ」

2024年04月01日 | 漢字の音符
 ケツ・あな  穴部 xué          

解字 戦国(春秋戦国・楚簡)の第一字は宀(建物)とその入り口(ハ)を表している。第二字はその下に土(つち)を描いており、土を掘りくぼめて上に屋根をのせた竪穴住居と思われる。篆文にいたり土のない「宀+八」となり漢代の隷書レイショをへて、現代字の穴になった。戦国から隷書までは建物と入り口がほぼ一体化していたが、現代の楷書で宀と八がはっきり分かれた形になった。穴の意味は現在では地面を掘りくぼめた穴の意味が一般的であるが、部首になっている穴は横穴の意味を表すものが多い。
意味 (1)あな(穴)。くぼんでいる所。「穴居ケッキョ」「墓穴はかあな」「穴蔵あなぐら」(①地中に穴を掘って物をしまうところ。②地下の仕事場) (2)よこ穴。けもののすみか。「洞穴ドウケツ」「虎穴コケツ」 (3)[国]あな(穴)。欠点。損失。番狂わせ。知られていない。「大穴おおあな」(①多額の欠損。②番狂わせ)「穴場あなば」(人に知られていない場所)

イメージ 
 「あな・よこあな」
(穴・突)
 「形声字」(鴪)
音の変化  ケツ:穴  トツ:突  イツ:鴪

よこあな
 トツ・つく  穴部 tū

解字 篆文から旧字まで宊で「穴(よこあな)+犬」の会意形声。横穴から犬が急に飛び出ること。転じて、つきあたる・つきでる意となる。新字体は犬→大に変化した突になった。
意味 (1)つく(突く)。つきあたる。「突破トッパ」  (2)つき出る。つき出たもの。「突起トッキ」「突出トッシュツ」  (3)だしぬけに。にわかに。「突然トツゼン」「突飛トッピ」(思いもよらないこと)

形声字
 イツ・イチ・とぶ  鳥部 yù
解字 「鳥(とり)+穴(ケツ⇒イツ)」の形声。鳥が速く飛ぶさまを鴪イツという。[説文解字]に「セン(はやぶさ)の飛ぶ皃ボウ(さま)」とする。
意味 とぶ(鴪ぶ)。鳥がすり抜けるように速く飛ぶさま。「鴪飛イツヒ」(速く飛ぶ)「鴪イツたる彼の飛隼ヒジュン(空を飛ぶハヤブサ)、其れ飛んで天に戻(いた)る」(詩経・小雅)「鴪隼イツジュン」(はやぶさ)
<紫色は常用漢字>

部首としての穴
穴は部首になり、主に横穴・竪穴および上(天井の穴=煙突)の意味をあらわす。
常用漢字  10字
  ケツ・あな (部首)
  キュウ・きわめる(穴+音符「九キュウ」)
  クウ・そら(穴+音符「工コウ」)
  トツ・つく「穴+大(犬)」の会意
  セツ・ぬすむ(穴+音符「切セツ」)
  ソウ・まど(穴+ム+心の会意)
  チツ・ふさがる(穴+音符「至」)
  クツ・いわや(穴+音符「屈クツ」)
  キュウ・きわめる(穴+音符「躬キュウ」)
  ヨウ・かま(穴+灬(火)+音符「羊ヨウ」)
常用漢字以外
  セイ・おとしあな(穴+音符「井セイ」)
 穿 セン・うがつ(穴+牙の会意)
  ヨウ・ふかい(穴+音符「幼ヨウ」)
  コウ・あなぐら(穴+音符「告コク」)
  カ・むろ(穴+音符「咼」)
  キ・うかがう(穴+音符「規」)
  ザン・かくれる(穴+鼠の会意)ほか


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