漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「各カク」と「格カク」「閣カク」「客キャク」「絡ラク」「落ラク」「略リャク」

2020年04月16日 | 漢字の音符
 恪カクを追加しました。
    チ <降下する足>
 チ  夂部ふゆがしら

解字 下向きの足の形。上からくだり来たる時の足のかたち。各カク・夆ホウ・夅コウなどに含まれ、文字の上にくるとき、多くは神が上より降下する意味を表す。単独では使われない。字形は各・降から復元した。
参考 夂は部首「夂ふゆがしら」になる。下向きの止(あし)の形で上からおりる意を表す。夂部の主な字は次のとおり。冬トウ(夂+冫の会意)・夅コウ(夂+夂の会意)・夆ホウ(夂+丰の会意)など。冬トウ・夅コウ・夆ホウ、はすべて音符となる。

   カク <いたる>
 カク・おのおの  口部

解字 甲骨文第一字は「夂(下向きの足)+口(場所)」の会意。夂は上より降りてくる足先の形で、人(または神)が降りてくる、また向こうから来る形。第二字は異体字で口でなく穴のような場所を表している。意味は、いたる・到来・到着する意[甲骨文字辞典を参考にした]。金文から現代字まで甲骨文第一字の形を引き継いでいる。「いたる」が原義だが、仮借カシャ(当て字)して、おのおの、の意になった。各を音符に含む字は「いたる(神がいたる)」、いたることにより「つながる」イメージがある。
意味 おのおの(各・各々)。めいめい。それぞれ。「各自カクジ」「各位カクイ」「各論カクロン

イメージ 
 「いたる・神がいたる」(各・客・恪・額・落・咎)
 いたりて「つながる」(格・閣・擱・絡・略・烙・珞・駱・酪・賂)
 「形声字」(喀・洛・貉)
 音の変化  カク:各・格・恪・閣・擱・喀・貉  ガク:額  キャク:客  キュウ:咎  ラク:落・絡・烙・珞・駱・酪・洛  リャク:略  ロ:賂

いたる・神がいたる
 キャク・カク・まろうど  宀部   
解字 「宀(たてもの・いえ)+各(いたる)」の会意形声。宀(いえ)にいたった人で、旅をして遠くから訪問してきた大事な人(賓客)をいう。
意味 (1)招かれてきた人。訪問してくる人。まろうど(客)。「客人キャクジン」「来客ライキャク」「客間キャクマ」 (2)商売の相手。料金を払う人。「顧客コキャク」 (3)旅。旅人。「客死キャクシ・カクシ」 (4)自己に対するもの。「客観キャッカン」「客体キャクタイ
 カク・つつしむ  忄部
解字 「忄(こころ)+各(=客の略体。お客)」の会意形声。篆文は「心+客」の愙カク。来客に接する心で、つつしむ。うやまう意。現代字は客⇒各に、心⇒忄の恪になった。
意味 (1)つつしむ(恪しむ)。つつしみ(恪み)「恪遵カクジュン」(つつしみしたがう)「恪勤カクキン」(①勤務を忠実につとめる。②[国]恪勤者かくごしゃの略。①平安時代、親王・大臣に仕えたさむらい。②武家時代の宿直とのいの武士。) (2)うやまう。「恪謹カクキン」(うやまいつつしむ)
 ガク・ひたい  頁部
解字 「頁(あたま)+客(大事なお客さま)」の会意形声。大事なお客さまに頭をさげてぬかずき、ひたいを床につけること。ひたいの意となり、また、ひたいは顔の正面にあることから、建物や門などの正面に掲げる「がく(額)」をいう。のち、金額など分量の意ともなる。
意味 (1)ひたい(額)。おでこ。ぬかずく。「額衝(ぬかず)く」 (2)書画を入れて掲げるもの。がく(額)。また、そのわく。「扁額ヘンガク」(細長い額)「額縁ガクブチ」 (3)分量。たか。お金の数値。「金額キンガク」「価額カガク
 ラク・おちる・おとす  艸部
解字 「艸(草=木の葉)+氵(水)+各(いたる)」の会意形声。木の葉がおちて水の上にいたる、即ち木の葉が水面に落ちること。木の葉に限らずすべて「おちる・くだる」意を表わす。また、攻め落とされる。おちぶれる。落ち着いた所。木の葉がすべて落ちて、おさまりがつく意となる。
意味 (1)おちる(落ちる)。おとす(落とす)。「落下ラッカ」「落盤ラクバン」 (2)攻め落とされる。敗れる。「落城ラクジョウ」「落人おちゅうど」(敗れて逃げた人) (3)おちぶれる。「没落ボツラク」 (4)落ちた所。着いた場所。住み着く。「群落グンラク」「集落シュウラク」 (5)(木の葉がすべて落ちて)おさまる。決まりがつく。できあがる。「落着ラクチャク」「落成ラクセイ
 キュウ・とがめる  口部
解字 「人(ひと)+各(神がいたる)」の会意。神が至りて人に天罰をくだすこと。
意味 (1)とが(咎)。とがめる(咎める)。天がくだす罰。わざわい。「天咎テンキュウ」「災咎サイキュウ」 (2)罪。あやまち。「咎人とがにん」(罪人)「罪咎ザイキュウ」(つみと、とが。罪科)

つながる
 カク・コウ・キャク・いたる  木部
解字 「木(き)+各(つながる)」の会意形声。木を整然と組んでつなげた木組み(格子)をいう。きちんと整っていることから、規格(標準)・きまりの意となる。品格(程度)などの意味は派生義である。また、各の原義である「いたる」意。角カク(角(つの)くらべ)に通じ、たたかう意もある。
意味 (1)木をタテ横きちんと組み合わせたもの。「格子コウシ」また、人の身体の部分の組み合わせ。「体格タイカク」「骨格コッカク」 (2)標準。きまり。「規格キカク」「格式カクシキ」(①身分・儀式などのきまり。②身分や家柄の程度)。「別格ベッカク」「品格ヒンカク」 (3)いたる(格)。(4)たたかう。「格闘カクトウ
 カク・たかどの  門部  
解字 「門(門のある建物)+各(=格。組み合わせたもの)」の会意形声。木組みの高い楼がある建物をいう。
意味 (1)たかどの(閣)。「金閣キンカク」「仏閣ブッカク」「天守閣テンシュカク」 (2)役所・官庁。閣で行なわれる国の統治。「内閣ナイカク」(行政権の最高機関)「閣議カクギ」(内閣での会議)「閣僚カクリョウ」(内閣を構成する大臣)(3)後世に出た意味。「閣板カクバン」(物を置くたな)「閣筆カクヒツ」(筆をおく。書くことをやめる。=擱筆)
 カク・おく  扌部
解字 「扌(て)+閣(おく)」の会意形声。閣に、おく意があり、これに扌(て)をつけて、おく意を表した字。
意味 おく(擱く)「擱筆カクヒツ」(筆をおく。書くことをやめる)「擱坐カクザ」(船が浅瀬にのりあげる)
 ラク・からむ・からまる・からめる  糸部  
解字 「糸(いと)+各(つながる)」の会意形声。糸でつながること。つながってからまる意もある。
意味 (1)つながる。つなぐ。つづく。「連絡レンラク」「短絡タンラク」 (2)からむ(絡む)・からまる(絡まる)・からめる(絡める)。「籠絡ロウラク」(からめて籠にいれる。人をうまくまるめこむ) (3)すじ。すじみち。「脈絡ミャクラク
 リャク・はぶく  田部  
解字 「田(田畑)+各(つなげる)」の会意形声。田畑の中に横につなぐ道をつけること。遠回りせずにまっすぐ行けることから、はぶく・かんたんにする意となる。また、道をつけてその土地を奪いとる意もある。
意味 (1)はぶく・簡単にする。「省略ショウリャク」「略式リャクシキ」 (2)奪い取る。かすめとる。「略奪リャクダツ」「侵略シンリャク」 (3)はかりごと・たくらみ。「計略ケイリャク
 ラク・ロク・やく  火部
解字 「火(ひ)+各(つながる)」の会意形声。火の熱が伝わること。
意味 やく(烙く)。鉄などを熱する。熱した焼きがねをあてる。「烙印ラクイン」(①刑罰として焼き印をあてること。②不名誉や汚名の例え)「焙烙ホウロク・ホウラク」(①素焼きの平たい土鍋。火に掛けて食品を炒ったりする。②あぶりやくこと)
 ラク  玉部
解字 「王(たま)+各(つながる)」の会意形声。玉をつなげた首飾り。
意味 玉をつないだ首飾り。「瓔珞ヨウラク」(①インドの貴族が頭や首にかける装身具。仏像の装飾ともなる。②仏像の天蓋などにつける装飾)
 ラク  馬部
解字 「馬(うま)+各(つながる)」の会意形声。つながって進む馬のような動物。
意味 「駱駝ラクダ」に用いられる字。駱駝とは、ラクダ科の哺乳動物。背中のこぶに脂肪を蓄えているので沙漠の生活に適し、何頭も連なって乗用や運搬用に使われる。
 ラク  酉部
解字 「酉(酒樽。発酵する)+各(つながる)」の会意形声。乳をかき回しながら乳たんぱく質をつなげて固め、発酵させた飲料や食品。
意味 ヨーグルト・バター・チーズなど乳酸菌発酵した食品。「酪農ラクノウ」(牛や羊などの乳から乳製品を作る農業)「牛酪ギュウラク」(バターのこと)「乳酪ニュウラク」(バター・クリーム・チーズなど)
 ロ・まいなう  貝部
解字 「貝(財貨)+各(直接つなげる)」の会意形声。財貨を相手に直接渡して便宜をはかってもらうこと。
意味 まいなう(賄う)。まいない。金品を贈る。「賄賂ワイロ」(不正な意図で金品を渡し便宜をはかってもらうこと)「賂謝ロシャ」(=賄賂。賄賂の金品)

形声字
 カク  口部
解字 「口(くち)+客(カク)」の形声。カクは衉カク(はく)に通じ、口からものを吐くこと。衉カクは、「血(ち)+各(いたる)」で、血をはくこと。
意味 はく(喀く)。のどにつかえたものを吐く。「喀血カッケツ」(血をはく)「喀痰カクタン」(たんをはく)
 ラク  氵部
解字 「氵(水)+各(ラク)」の形声。ラクという名の川。
意味 (1)川の名。「洛水ラクスイ」(黄河の支流のひとつ) (2)地名。「洛陽ラクヨウ」(中国の都が置かれたことがある古都。洛水の北岸(北は陽)にあることからいう) (3)[国]日本の古都である京都をいう。「京洛キョウラク」(京都)「入洛ニュウラク」(京都に入ること)
貉[狢] カク・バク・むじな  豸部むじな
解字 「豸(けもの)+各(カク)」の形声。カクという名のけもの。ムジナをいう。各は発音のみを表す。中国では東北地方の異民族を卑しんで言った。
意味 (1)むじな(貉)。アナグマの異称。狢カクとも書く。「貉藻むじなも」(形状が貉の尾に由来する多年性水草) (2)タヌキをムジナと呼ぶこともある。 (3)古代ツングース系の民族の名。「貉道バクドウ」(異民族のやり方)「大貉小貉タイバクショウバク」(未開の土地の野蛮な異民族のような為政者のこと)
<紫色は常用漢字>

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