漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

石沢誠司 「人の姿の音符Ⅱ」

2017年11月20日 | 漢字音符研究会
第6回漢字音符研究会  2017年11月11日(土)

テーマ  人の姿の音符 そのⅡ

講 師  石沢誠司氏  ブログ「漢字の音符」編集者

人の姿の音符Ⅱの概要
 人の姿の音符Ⅰで取り上げた以外の主な字は、大きく分けると「女ジョ」「母」「子」「老ロウ」がある。
 ジョは、人がひざまずいて手を前に交えている形で女性を表す。その横に口を置いたジョは、「いかが」「ごとし」の意味になるが、本来は神に祈って神意に「したがう」意。女に又(右手の意)がついたは、女を手で捕らえ自由をなくし奴隷とする意。女だけでなく男女の奴隷に用いる。
 女が建物の中にいる形がアンで、静かで落ち着いた安らかなさまの意。「日+女」のエンは、日が穴のあいた玉であると考えられ、玉を頭部につけ陽の力をえて生き生きとする女を表す。エンの原字。一方、エンを匸(はこ形のかこい)に入れたエンは、女が陽気を失くして伏せる意。
 手にカンザシを持ち頭髪にさすかたちがサイで、婚儀のときの髪形であり結婚した女性を示す。女のうえに辛シン(入れ墨をする針)をつけたショウは、針で女の額に入れ墨をするかたち。入れ墨で識別された女奴隷をいう。後に、貴人につかえる女性、正妻以外の夫人の意となった。

 女に両方の乳房を点で加えた形がで、子を生み育てる母の意。母の字は、また、否定・打消しに仮借カシャ(当て字)して用いられたが、のち両方の乳房を直線化したのがで、禁止・否定を表す助字となる。母(=女性)の頭髪にカンザシをさして髪をととのえたかたちがマイで、朝起きるたびに髪をととのえなおすので、ごと(毎)の意味になる。
 若い巫女(みこ)が右に頭をかたむけた形がヨウで、身をくねらせる形。夭とは逆に左に頭をかたむけた形がショクで、同じく身をくねらせる形。これに口をつけた呉は、身をくねらせて笑うのが原義での原字。また、ジャクの甲骨文は巫女が髪を振り乱して手を上げ、神意をききとる形。若い意のほか、ごとし(若し)などの意味になる。

 小さな子供をかたどったのがで、円で頭を交差する十字で両手と胴を表わす。は、子に上からの手をつけた形で子供を手でかかえあげるさま。皿(たらい)の上に子があるのがモウで、生まれた子に産湯をつかわせる形。生まれて最初の儀礼であるから始めの意味を表す。兄弟やその他の序列にも及ぼして用いる。ホウは、子をおむつや産衣で包んだ形。生まれた子は何も分からないため、転じて、おろかの意となった。子が下向きになったのが𠫓トツで、赤子が頭を下にした正常な姿で生まれるさま。これに出産の羊水を加えたかたちのリュウは、ながれでる意での原字。

 長髪の人が杖をついている形がロウで、老人を表す。コウは、老の略体に子をつけた形で、子が老人を大切にすること。また、老の略体に丂コウ(まがる意)をつけたコウは、腰のまがった老人の意だが、同音の校コウに通じ、かんがえる(校比=考え比べる)、くらべて調べる(校書・校訂)意味でつかわれる。老人の長髪を象ったのがチョウで長い意。人がかくれる姿がボウで、かくれる・なくなる意となる。



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