漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「乙オツ」<まがる>と「軋アツ」「札サツ」「紮サツ」

2023年05月14日 | 漢字の音符
 オツ・イツ・きのと・おと  乙部

解字 甲骨文字の字源は不明[甲骨文字辞典]。[説文解字]は「春に草木の芽が、かがまるように生え出す形」とするが疑問。[字統]は「おそらく獣骨や魚骨を用いた骨べらの形」とするが一つの説である。乙は字形から見て曲がったものを表している。しかし、この字は甲骨文字の時代から仮借カシャ(当て字)され、十干ジッカン(順位をもつ十種類の漢字)の第二位に当てている。甲骨文字が使われた殷インでは、10個の太陽が存在してそれが毎日交代で上り、10日で一巡りすると考えられており、十干はそれぞれの太陽につけられた名前とされている。乙は乚の形にも変化する。漢字のイメージは「まがる」とした。
意味 (1)きのと(乙)。十干の第二位。五行では木に当てる(五行との関連は下図を参照)。 (2)二番目。甲の次。「乙種オツシュ」 (3)かがまる。まがる。(4)[国]おつ(乙)。粋なこと。「乙な味」 (5)[国]おと(乙)。すえ。愛らしい。「乙子おとご」(末子)「乙女おとめ」(少女。むすめ)「乙姫おとひめ」(①(姉妹の)妹の姫。年若い姫。②竜宮に住む姫)
 十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10の要素の順列。これを五行(木・火・土・金・水)に配列し、おのおのに兄(え)と弟(と)を当てて訓読みする。以下を参照。

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ  
 「仮借カシャ(当て字)」
(乙)
 字形から「まがる」(軋・札・紮)
音の変化  オツ:乙  アツ:軋  サツ:札・紮  

まがる
 アツ・きしる・きしむ  車部

解字 篆文は「車(くるま)+乙(まがる)」の会意形声。車がまがるとき出す、きしむ音、擦れ合ってでる音をいう。楷書から、乙⇒乚に変化した軋になった。
意味 きしむ(軋む)。きしる(軋る)。擦れ合って出る音。「軋轢アツレキ」(すれあう。転じて、人との仲が悪くなること。轢も、きしる・もめる意)「歯軋(はぎし)り」
 サツ・ふだ   木部

解字 「木(き)+乙オツ⇒乚サツ(まがる)」の会意形声。乚サツは乙の変形字であり「まがる」意、反っている木片の形で薄い木の札、薄いことから転じて、のちに紙の札、書き物、日本では紙幣の意味でも使われる。
意味 (1)ふだ(札)。薄い木や紙のふだ。「簡札カンサツ」(文字を書きしるす木や竹の札)「高札コウサツ」(2)紙の書きもの。書きつけ。「書札ショサツ」(書物) (3)証拠となる文書。「鑑札カンサツ」(許可証。鑑定書) (4)[国]おさつ。紙幣。「札束サツたば」 (5)[国]ふだ(札)。いれふだ。「入札ニュウサツ」 「落札ラクサツ」 (5)[国]乗車券。「改札カイサツ」(駅で乗車券などの改(あらた)めを行なうこと。改札口。)
 サツ・からげる  糸部
解字 「糸(ひも)+札(ふだ)」の会意形声。ふだの束を紐でくくること。
意味 (1)たばねる。からげる(紮げる)。くくる。「結紮ケッサツ」([医]血管をしばって血行を止めること) (2)とどまる。軍隊がとどまる。「駐紮チュウサツ」(軍隊が駐屯すること)
<紫色は常用漢字>

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