漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「反ハン」<石の武器で反乱をおこす>と「販ハン」「板ハン」「阪ハン」「坂ハン」「版ハン」「飯ハン」「返ヘン」

2023年05月18日 | 漢字の音符
 [甲骨文字小事典]と[甲骨文字辞典]で解字されている「厂は石の略体であり、反は石の武器をもちいた反乱」という説に共感を覚えたので、解字をやり直しました。(2016年11月21日 )
 さらに増補改訂しました。

 ハン・ホン・タン・そる・そらす  又部 

解字 甲骨文第一字は石の原字に又(手)を加えた形。石はもと三角形の石製打楽器(石磬セキケイ)を象ったもので三角形をしていた。第二字は「厂(石の略体)+又(手)」のかたち。甲骨文字で、反する・反乱を起こす意味で使われており、石を武器として手にもった形であろう[甲骨文字小事典]。金文から現代字まで第二字の反が続いている。意味は、そむく・さからうという本来の意味にくわえ、転じて、はねかえる・そるなどの意となった。
意味 (1)そむく。さからう。「反抗ハンコウ」「反旗ハンキ」「謀反ムホン」 (2)かえる(反る)。かえす(反す)。はねかえる。「反射ハンシャ」「反発ハンパツ」 (3)そる(反る)。そらす(反らす)。まがる。「反曲ハンキョク」(そりかえる)「反宇ハンウ」(軒のそり) (4)くりかえす。「反復ハンプク」 (5)正反対の。反対側。逆の。「反面ハンメン」「反比例ハンピレイ」 (6)たん(反)。単位の名。土地の面積・距離・布の長さ。「反物タンもの

イメージ 
 「そむく・さからう」
(反・叛)
  意味(2)の「はねかえる」(返・販・板・鈑)
  意味(3)の「そる」(阪・坂) 
  意味(5)の「反対側の」(版)
  「形声字」(飯)
音の変化  ハン:反・販・叛・坂・阪・板・鈑・版・飯  ヘン:返

そむく・さからう
 ハン・ホン  又部
解字 「半の旧字(分かれる)+反(そむく・さからう)」の会意形声。半は半分にすることから分かれる意。叛は(主君と)分かれてそむくこと。
意味 そむく(叛く)。さからう。手向かう。「謀叛ムホン」(国家・主君にそむくこと)「叛意ハンイ」(主君などにそむこうとする気持ち)

はねかえる
 ヘン・かえす・かえる  辶部
解字 「辶(こちらにくる)+反(はねかえる)」の会意形声。辶は、通常は「ゆく」意だが、ここでは「くる」意。返は、はねかえってくること。
意味 かえる(返る)。かえす(返す)。もとへもどす。「返還ヘンカン」「返済ヘンサイ
 ハン・ひさぐ  貝部
解字 「貝(財貨)+反(はね返る)」の会意形声。お金(貝)を受け取り、その対価に見合う品物を返すこと。物をうる、あきなう意となる。
意味 ひさぐ(販ぐ)。うる。あきなう。商売。「販売ハンバイ」「販路ハンロ」「販女ひさぎめ
 ハン・バン・いた  木部
解字 「木(き)+反(はねかえる)」の会意形声。押すとはねかえる木の薄い板。
意味 (1)いた(板)。「板葺(いたぶ)き」「板書バンショ」 (2)板状のもの。「石板セキバン」「銅板ドウバン」 (3)はんぎ(版木)。「板行ハンコウ(=版行)」「板本ハンポン」(版木で印刷した本。=版本)
 ハン  金部
解字 「金(きん)+反(=板の略)」の会意形声。金の板、すなわち金ののべ板。また、板金の意。
意味 (1)金や銀の延べ板。 (2)いたがね。「鈑金バンキン」(①黄金や銀の延べ板、②板金バンキン。薄い金属板、またこの板を加工すること)

そる(反る) 
 ハン・さか  阝部
解字 「阝(おか)+反(そる)」の会意形声。反ったおかの意で、険しい丘が原義。日本で「さか」と訓じ、傾斜のある土地をいう。阪は地名が多い。
意味 (1)けわしい。「阪岸ハンガン」(切り立つような岸)「阪険ハンケン」(けわしい所) (2)さか(阪)。地名に使うことが多い。「大阪おおさか」(江戸時代は大坂と書かれたが、明治以降、大阪に統一された)「阪神ハンシン」(大阪と神戸)「京阪ケイハン」(京都と大阪) 
 ハン・さか  土部
解字 「土(つち)+反(=阪。さか)」の会意形声。 阪(さか)の阝⇒土に変えた字で、宋代の辞書である集韻シュウインなどに至ってみえる後起の字。土地の「さか」に用いる。
意味 (1)さか(坂)。傾斜している道。「坂道さかみち」「急坂キュウハン」「坂東バンドウ」(箱根の坂より東。関東地方) (2)つつみ(堤)。土手。

反対側の
 ハン・ふだ  片部 
解字 「片(片方の板)+反(反対側の)」の会意形声。片方の板と反対側の板をいい、土を突き固めて城壁などをつくるとき、両側に固定する型枠の板をいう。のち、字を彫って印刷に使う板の意になるが、これは反対側に刷る紙を置く板の意。
意味 (1)型枠の板。「版築ハンチク」(型枠の板に土をいれて築(つ)く。) (2)文字などを彫り込んだ印刷用の板。「木版モクハン」「版木ハンギ」 (3)印刷して刊行する。「出版シュッパン」 (4)ふだ(版)。氏名などを書く木のふだ。名簿。戸籍簿。「版籍ハンセキ」(版も籍も戸籍の意、戸籍に載っている人民および人民が耕作している土地)「版図ハント」(版籍と地図。また、一国の領土)

形声字
 ハン・めし・いい  食部
解字 「食(たべる)+反(ハン)」の形声。[説文解字]は、「食らう也(な)り。食に从(したが)い反の聲(声)」とする。反ハンは発音を表すが、反には反復する意味もあり、口で歯の動きをくりかえして食べること。すなわち、食事・食事をする意。日本では米が主食なので、ごはんの意味ともなる。
意味 (1)くらう。食事。食事をする。「飯台ハンダイ」(ちゃぶだい。食卓)「飯店ハンテン」(食堂) (2)ごはん。めし(飯)。いい(飯)。まま(飯)。穀物を煮炊きしたもので、多くは米のご飯をさす。「飯米ハンマイ」(飯に炊く米)「飯櫃めしびつ」(飯を入れる木製の器。おひつ)「飯櫃いびつ」(めしびつが楕円形をしていることから、ゆがんだかたち。歪とも書く)「飯事ままごと」(料理や家庭生活のまねをする遊び) (3)食べさせる。養う。「飯牛ハンニュウ」(牛に餌をやる) (4)口に含ませる。「飯玉ハンギョク」(死者の口に玉を含ませる。=飯珠ハンジュ
<紫色は常用漢字>

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