漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

「まん延防止」の「まん」はどんな字か

2021年04月01日 | 漢字の音符
 政府は新型コロナウイルス対策として、大阪・兵庫・宮城の3府県に対し「まん延防止等重点措置」を適用する方針を固め、4月1日に決定する。この「まん延防止」の「まん」はどんな字なのだろうか。
 この字の音符は「曼マン」である。曼マンに艸(草冠)をつけた蔓マンが「蔓延マンエン」の「蔓」。同じ音符からできている常用漢字の漫・慢も一緒に説明させていただく。


 マン  日部         

解字 金文は「かぶりもの+まゆ(眉)+目+又(手)」の会意。篆文は「冃ボウ(かぶりもの)+罒(横に描かれた目)+又(手)」となった。ずきん(頭巾)を手でひいてかぶり、目だけ出している形。眉目ビモクの美しさがあらわれる意で、婦人の美しい目元をいう。しかし、音符イメージは頭巾を「かぶる(おおう)」となる。現代字は、冃ボウ⇒日に変化した曼となった。字の構造は冒ボウに又をつけた形である。
意味 (1)(出ている眉目が)美しい。「曼理マンリ」(美しい肌理きめ)「曼姫マンキ」(美しい姫) (2)ひろい(=漫)「衍曼エンマン」(ひろくはびこる)「衍曼流爛エンマンリュウラン」(悪がひろくはびこり、流れみだれる。悪が世の中全体に広がること) (3)本来の意味でなく梵語の音訳語として使われる。「曼荼羅マンダラ」(多くの仏を模様のように描いた絵)「曼珠沙華マンジュシャゲ」(天上に咲くという花)

イメージ 
 「おおう」(曼・蔓・漫)
  かぶりものをして目だけ出すことから「まわりが見えない」(慢)
音の変化  マン:曼・蔓・漫・慢

おおう
 マン・つる  艸部
解字 「艸(くさ)+曼(おおう)」の会意形声。おおいひろがってのびる草。つる草の意となる。
意味 (1)つる(蔓)。つる草。かずら。「蔓草つるくさ」「蔓草寒煙マンソウカンエン」(はびこるつる草と寂しい煙。荒れ果てた古跡の景色)(2)のびる。はびこる(蔓延る)「蔓延マンエン」(はびこる)「蔓生マンセイ」(つるが伸びて成長する) 
 マン・みだりに・そぞろに  氵部  
解字 「氵(水)+曼(おおってひろがる)」の会意形声。水が溢れておおいひろがる意。転じて、とりとめのない意となり、さらに、こっけいの意まで拡大した。
意味 (1)ひろい。水の果てなく広いこと。「漫漫マンマン」 (2)みだりに(漫りに)。とりとめがない。「散漫サンマン」「放漫経営ホウマンケイエイ」 (3)なんとなく。そぞろに(漫ろに)。「漫然マンゼン」「漫遊マンユウ」 (4)こっけいな。「漫画マンガ」「漫才マンザイ

まわりが見えない
 マン・あなどる・おこたる  忄部  
解字 「忄(心)+曼(まわりが見えない)」の会意形声。まわりが見えず井の中の蛙となり、心がおごること。また、まわりが見えないため、ゆっくりと進む意ともなる。
意味 (1)おごる。あなどる(慢る)。「自慢ジマン」「慢心マンシン」「高慢コウマン」 (2)おこたる(慢る)。なまける。「怠慢タイマン」 (3)ゆるやか。おそい。「慢性マンセイ」「緩慢カンマン
<紫色は常用漢字>

コメント
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