漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「桑ソウ」 「薊ケイ」 「犀サイ」

2015年04月08日 | 漢字の音符
      ソウ <葉を手で摘む木・くわ>
 ソウ・くわ  木部

 桑の葉手摘図
解字 甲骨文は桑の葉の茂る形の象形。篆文では、蚕が食べる桑の葉三つを又(て)の形三つで表現し、下に木を添えた。桑の葉を手でつみとる木を意味する。日本では、桑の若木を根元から刈り取って蚕に与えるところが多いが、葉を手摘みして蚕に与えるのは、日本の一部地域で行われていたし、現在も中国雲南省にある。古くは桑の木に上り葉を手摘みしていた。
意味 くわ(桑)。クワ科の落葉高木。養蚕のため葉を蚕に与える。実は甘く食用となる。自然木の材は硬く工芸材料として使われる。「桑園ソウエン」「桑原くわばら」(桑の畑。落雷を避ける呪文)「扶桑フソウ」(中国で、東海の日の出にあるという神木。また、その地。日本の異称。)「桑田ソウデン変じて滄海ソウカイとなる」(予測できないほど、世の中の移り変わりが激しいこと。桑田が大海原に変わってしまう意から)


      ケイ <あざみ>
 ケイ・あざみ  艸部

 野あざみ
解字 「艸(くさ)+魚(さかな)+刂(かたな)」の会意。魚を刂(かたな)で二枚ないし三枚におろす(開く)と、トゲが連なったような骨がでてくるので、トゲの多い意。それに艸(くさ)のついた薊ケイは、葉にトゲの多い「あざみ」をいう。
意味 あざみ(薊)。キク科アザミ属の多年草。葉は大形で深い切れ込みがあり、トゲが多い。花は紅紫色。根は食用としたり煎じて漢方薬とする。別名は、刺草シソウ。「野薊のあざみ」(薊の一種。各地の原野に自生する)「大薊タイケイ」(あざみの根から作る生薬)


      サイ <さい>
 サイ・さい  牛部

解字 金文・篆文とも「尾(しっぽ)+牛(うし)」の会意。尾はここで獣の性交する部分を示す。獣の性交はオスがメスの尾の上に馬乗りになる。そこに牛のついた犀サイは、牛との交配で産まれた牛と似た動物の意。古代の人は、犀は牛の血をひく動物と考えていた。現代字は、尾の毛が、二|二、に変化している。
意味 (1)さい(犀)。サイ科の哺乳類。角は一本で固く、皮は厚くてかたい。「犀角サイカク」(犀の角。器物や薬用とする)「犀甲サイコウ」(犀の皮で作ったよろい)(2)(角が)堅くて鋭い。「犀利サイリ」(①武器が堅くて鋭利なこと。②頭の動きが鋭い)(3)地名。人名。「犀川さいがわ」(長野県や金沢市を流れる川)「室生犀星むろう-さいせい」(金沢生まれの詩人・小説家。抒情詩人として知られ、のち小説に転じた) (4)「木犀モクセイ」とは、モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。花に香気がある。名称の由来は樹皮が犀の皮に似ているからと云われる。別名は銀木犀ギンモクセイ。金木犀キンモクセイは変種で、花はオレンジ色で香りがつよい。

イメージ 「さい」(犀・遅[遲])
音の分布 サイ:犀  チ:遅
さい
[遲]チ・おくれる・おくらす・おそい  辶部
解字 旧字は「辶(ゆく)+犀サイ」の会意。犀がゆく意で、歩みの遅いサイに辶(ゆく)をつけ遅い意を表した。現代字は犀サイの尸以外の部分を羊に置き換えた字。
意味 (1)おそい(遅い)。のろい。にぶい。「遅遅チチ」「遅筆チヒツ」 (2)おくれる(遅れる)。間に合わない。「遅刻チコク」「遅延チエン」「遅配チハイ」 (3)(ゆっくりの意から)まつ。気長に待つ。「遅明チメイ」(夜明けをまつ頃。夜明け)「遅旦チタン」(日の出をまつ頃。夜明け)
覚え方 この(コノ⇒)ひつじ()ゆく()のが(おそ)い。
<紫色は常用漢字>

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