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ドナウ川の白い雲

国内旅行しながら勉強したこと、ヨーロッパの旅の思い出、読んだ本のこと、日々の所感など。

多賀の杜 … 琵琶湖周遊の旅(7/7)

2021年01月30日 | 国内旅行…琵琶湖周遊の旅

  (「お多賀さん」の門前町・絵馬通り)

 4日目の朝は、小雨模様だった。天気予報も今日は良くない。

 この旅の目的である琵琶湖一周はできた。寄れなかった所はいくつかあり、心残りはあるが、とにかく今日は午前中に多賀大社に参拝して、あとは一路、家路につく。

 多賀大社は、彦根の町から近かった。

 車を駐車場に置いて、少し離れた大社まで小雨の中を歩いた。

 進んで行くと素朴な門があり、「絵馬通り」の看板が掲げられている。その門の中へ入ると、絵に描いたような古い門前町の風景があった。

  (絵馬通り)

   ★   ★   ★

司馬遼太郎『街道をゆく24』から  

 「…… 『お多賀さん』とよばれている古社がある。あまり神社仏閣には関心をもたなかった秀吉でさえ、1万石寄進したといわれているゆゆしい社で、江戸期は、" 伊勢にゃ七度(ナナタビ)、熊野へ三度(ミタビ)、お多賀さまへは月まいり" などとうたわれた」。

 司馬さんの文章は力強くわかりやすい。だが、「ゆゆしい」は念のため古語辞典を引いてみた。「ゆゆし」 = 由由し、忌忌し。神聖でおそれおおい。恐れ多くつつしまれる。

 ウイキペディアによれば、イザナギ、イザナミの2神を祀リ、「お多賀さん」と親しまれてきた。神仏習合の時代には、多賀大明神。

 たが、もとは、この辺りの豪族であった犬上氏の祖神を祀った神社ではなかったかと書かれている。その方が、遥かな古代を感じさせて、ゆかしい。ちなみに多賀大社の住所は、滋賀県犬上郡多賀町多賀。犬上の名は今も残っている。

 犬上氏はその一族から、614年に遣隋使、630年に遣唐使として、2度も日本海を超えた犬上御田鍬(ミタスキ)を出している。

 琵琶湖の反対側の湖西には、最初の遣隋使として派遣された小野妹子の一族・小野氏がいる。

 近江国は、そういう国だった。継体天皇も湖西或いは越前に根を下ろした皇族だった。

      ★

   (そり橋と神門)

 神門の前にそり橋があり、その前を七五三の親子が歩いていた。

 そり橋は短い橋だが、反り方は並ではない。この親子も門前を素通りしているから、別の入口から入るのかもしれない。

 神門を入ると、拝殿。

        (拝 殿)

 こんもりした杜がいい。

 奥書院と、国の名勝になっている奥書院庭園があり、参拝の後、拝観した。

 (奥書院庭園)

 (庭園の紅葉)

 奥書院の展示の中に、かつてこの神社に縁のあった歴史上の人物や、近い過去の有名人の書が展示されていた。

 その中に、司馬遼太郎の絵馬があった。 

 (司馬遼太郎の奉納絵馬)

   文字も、絵も、ゆかしい。

 何よりも、文がいい。

  「淡海の水も青し/多賀の杜の木洩れ日の空も青し/道端の露草も青し 司馬遼太郎」

      ★

 「彦根IC」から高速道路に入った。途中、豪雨の時間があり、緊張を強いられた。

 3日間は、本当に良いお天気の秋晴れで、琵琶湖一周は楽しかった。

 心残りはある。

 水郷の近江八幡も、三井寺も、大津の宮跡も、日吉大社も、素通りした。北琵琶湖の菅浦はもう一度訪ねたい。

 若い頃、何度か比良山系に登ったことは書いた。いつも琵琶湖側から登り、琵琶湖側に降りた。登山用の地図を見ながら、反対側(西側)に降りたら花折峠というゆかしい名の峠があることに心惹かれていた。本数は少ないだろうが、京都へ帰るバスも通じている。バスで花折峠を南に下れば、比叡山の裏側を通って大原の里から京都へ。花折峠から北へ向かえば朽木峠がある。信長が、前面に朝倉軍、後ろに浅井軍を背負って、京へ向かって夜道を一目散に逃げ帰った。それがこの朽木越えの街道だ。

 そこへも行ってみたい。できたら、NHKのテレビドラマ「京都人の密かな愉しみ」の舞台になった花の頃がいい。

 そういう宿題というか、楽しみを残しながら、旅を終えた。

 自分への土産として、彦根の酒屋で「七本槍」という地酒を手に入れた。ふだん広島の「比婆美人」を飲むことが多いが、お正月はこれをいただこう。

      ★

 「歳月は人を深くする。旅もまた、人を深くする」(夢枕獏『シナン』から)

 

 次回から、中断していた「早春のイタリア紀行」に戻ります。(了)

 

 

 

 

 

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