ドナウ川の白い雲

ヨーロッパの旅の思い出、国内旅行で感じたこと、読んだ本の感想、日々の所感や意見など。

まさをなる 空よりしだれざくらかな……散歩道(9)

2015年04月02日 | 随想…散歩道

  

  梅がふくらむ頃は、まだ寒く、空気はきゅんと冷たい。

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 椿が次々と、咲き始めると、春がそばまで来たと感じる。

 椿は漢名では「山茶」 (サンチャ)。庭のワビスケ (侘助) も清楚で可憐だが、山里に自生している椿も風情があっていい。

 仰向きに  /  椿の下を  /  通りけり     

            池内たかし

  

         ★

 つぼみのときの白いモクレンが好きだ。

   春の花の中では、最も好きな一つである。青空に、つぼみがふっ、ふっと浮き出した様子が、高貴なお姫様のようで可愛い。

 モクレンが咲き始めると、気候は一気に暖かくなり、春が来たと実感する。

 ところが、俳諧歳時記を見ていると、モクレン (木蓮) は落葉灌木で、紫の花が咲くらしい。

   単なる色違いと思っていたが、私の言うモクレンは、「白木蓮 (ハクモクレン) 」のことで、こちらは落葉喬木。高さは5メートルほどに達し、木蓮とは別種だそうだ。本当に知らないことばかりで恥ずかしいが、姉妹ではなくても、親戚ではあるだろう。

 白木蓮に似ているコブシ(辛夷)も、早春の信州など山国で見かけて、春の訪れを感じる。

         ★

 明るさの / 彼岸桜や / ひと恃まず

            山口草堂

 桜でいちばん早く、彼岸のころに咲くのが彼岸桜。「ひと恃まず」とは? 間違っていたらみっともないから書かないことにするが、この花の風情として、何となく、わかる気がする。

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 この時期になると、八幡神社の小さな社の上の杜の木々の中から、ウグイスの声が聞こえるようになる。静寂の中に、まるで神の使いのようだ。

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 本物のカエルも、冬眠から覚めて、庭に見かけるようになるが、置物の蛙の周辺にも、春の到来を告げる野の花が咲く。

 

         ★  

 私が住む町に、遍照院という小さなお寺がある。その寺に、町の指定文化財になっているシダレザクラがある。

 寺は山懐にあり、わが家から離れていて、車も入らないので、長年、行きそびれていた。

 それが近頃は散歩をするようになり、その距離は気にならなくなった。

 だが、昨年も、開花とタイミングが合わなかった。

 今年こそはと思って、二度、出向いた。

 二度目は、青空が美しく、ぽかぽかとした陽気で、山里を歩くには絶好の日よりだった。

         ★

 シダレザクラはほぼ満開だった。

 「ソメイヨシノに先立ち開花する。樹齢は250年を経過していると思われる」と町の教育委員会の立てた看板に書いてあった。

 まさを(真っ青)なる /

  空よりしだれ / ざくらかな

          富安風生

 土地の人と思われる写真機を持ったおじさんが同行の人に、「この木も、元気がなくなってきたなあ」と言っていた。

 そういわれれば、見た感じ、そうかもしれない。でも、ここまでがんばって生きてきたのだから、これからあと、さらに250年はがんばってほしい。

        ★

 エドヒガンと呼ばれる桜があり、山野に自生し、また観賞用として栽培される。その園芸品種の一つが枝垂 (シダレ) 桜。ソメイヨシノもその一つ。名に「ヒガン」が付くが、彼岸桜とは全く別種のものらしい。

 20メートルにも及ぶ高木にもなり、横に広がった太い枝から細い枝が垂れ下がって、優美である。京都にはこの名木が多く郷土の花になっている、と俳諧歳時記にある。

 

 

 

 

 

 

 

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