一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第33期竜王戦挑戦者決定戦第2局

2020-08-28 00:34:23 | 男性棋戦
25日は、第33期竜王戦挑戦者決定戦第2局・羽生善治九段VS丸山忠久九段戦が行われた。今回の挑戦者決定戦は、どちらが勝っても竜王戦最年長挑戦者となる。最近タイトル戦から遠ざかっている羽生九段においては久しぶりのチャンスであり、その先にはタイトル100期が待っている。だが第1局は丸山九段の快勝で、この第2局も負けるようだと、今後は挑戦者にすらなれないのでは……という不安を棋界内外に抱かせてしまう。よって本局、羽生九段は絶対に負けるわけにはいかなかった。
もっともそれは丸山九段も同じで、丸山九段こそタイトル戦からかなり遠ざかっている。羽生九段との対戦成績は分が悪いこともあり、本局で一気に決めるつもりだっただろう。

対局開始後1時間くらい経ってABEMAを見ると、角換わりになっていた。これは後手(羽生九段)が回避できる戦法である。それがこの戦型になったということは、羽生九段も望むところだったわけだ。
注目の消費時間は両者とも同じくらいで、本局は丸山九段がノータイム指しを控えたようである。
将棋は羽生九段がやや指しやすくなり、羽生ペースに思われた。しかし丸山九段も微差でついていき、勝敗の帰趨はまったく見えない。
第1図は、丸山九段が79手目▲2四歩と打ったところ。

ここでA△1二銀は気合が悪くて指せない。実際△1二銀は▲2三銀で先手の攻めが加速する。だがB△2四同銀は、▲5一角が厳しい。そこで△4二飛と寄ってどうか、とふつうは考える。
ところが画面では、AIがC「△8六歩」を推奨していた。将棋は先手を取るのが肝心、というのはここ数年で私が学習したものだが、それでもこの局面、先手は▲2三歩成が王手になるので、実質0手で銀得できる。つまり後手が先手を取れるわけではないのだ。
ところが羽生九段が△8六歩、と指したので驚いた。
将棋はアマ有段になると、ある程度の候補手は見える。だが「一生考えても浮かばない手」というのがあり、それが△8六歩である。この日の解説は三浦弘行九段らだったが、私は音声を消していたので、解説陣が△8六歩をどう評価していたかは分からない。ただ、やはり驚いたのではなかろうか。
第1図からは、▲2三歩成△同金▲8六金△8五歩▲同金△8七歩▲同玉△5六歩▲5九飛△8四歩▲2四歩△同金▲5三歩成△同金▲5一角(第2図)と進んだ。

羽生九段は銀を犠牲にしたが、△2三同金の形も厚い。そして△8五歩~△8七歩と先手陣を乱す。まさに歩の妙技だ。なるほど、仮に△8六歩が逆に▲8六歩だったら、この順はなかった。銀を1枚犠牲にしても▲8六歩の形を防いだことは、それなりに価値があったのかもしれない。
▲8七同玉に△5六歩▲5九飛の利かしが入った。これで△6七飛成が生じたのが大きい。
△8四歩には▲同金か▲8六金を予想したが、丸山九段も駒を引かない。再び▲2四歩と叩いた。
これは▲2三歩成が金を取っての王手になるので、さすがに△同金。丸山九段は▲5三歩成△同金を利かし、▲5一角(第2図)と打ったわけだ。

これは純粋な両取りだが、羽生陣は▲6二角成or▲2四角成とされても、まだ余裕がある。すなわち、そこで先手玉を受けなしにすればよい。
羽生九段は△8五歩と金を取り、▲6二角成に△8六香。これは羽生九段が寄せの構図を完成させたと思った。

最後は112手目△9三桂まで、丸山九段が投了した。この△9三桂も地味ながら妙手で、ふつうは△8五歩から考える。しかしそれは先手の馬筋も利いていて、先手玉を逃しかねない。黙って△9三桂がいいのである。プロは本当に、すべての駒を働かせるものだ。

終わってみれば羽生九段の快勝だった。とりわけ、▲2四歩の銀取りを無視して、△8六歩と先着した手が光った。私には驚愕の一手だった。
そして私も現金で、この勝ち方ができれば、最終第3局も羽生九段に期待できると思ったりするのだ。
第3局は、9月19日(土)に行われる。
コメント (2)
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