一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

終戦記念日の4時から男(中編)

2020-08-25 00:08:17 | 新・大野教室

第2図で少年に▲2六銀と指されていたら、△1四歩▲3七銀で大切なと金を取られ、上手が戦意喪失になるところだった。
しかし少年は▲1七飛と浮いたので、私は△3六とと引き、これは私の優勢になった。
ちなみにここ、船戸陽子女流二段だったら、「ここはよく考えましょう」と言って、再考を促す。前局の▲4四桂もそうである。これが私にはできないのである。
将棋は私が勝った。

2局目に指した少年が指し足りないようなので、またも私が再戦する。振駒で、私が後手となった。
対局開始。少年が早くに▲2五歩を決めてきたので、私は向かい飛車に振る。相居飛車は神経を遣うのでイヤだ。時々飛車を振りたくなるのである。
少年は▲5七銀左から急戦である。さすがに少年、どの戦法にも精通しているようだ。

第1図の△4四角が欲張った手。捨て置けば△3三桂で、のちの△2五飛や△2五桂を見る。
少年は▲4六歩ときたが、△3三桂▲5六銀△2五桂▲4五歩△3七桂成▲2二飛成△同角▲3七桂△3九飛(第2図)で、私が有利になった。

戻って少年の▲4五歩では、じっと▲2六銀だったと思う。
第2図以降は、△2四角~△6八角成▲同金に△7七香が決め手。この囲いは一段目に飛車を置き、△7七○、が決め手になることが多い。
以下は豊富な持駒を利用して、先手玉を討ち取った。

ここまで5戦全勝は望外の成績である。
次はいよいよShin氏と対局である。Shin氏はいい会社に長年勤め、しっかり家庭も持っているよきパパである。私から見れば眩しい存在でしかなく、彼と対等に渡り合えるのは将棋しかない。Shin氏が振って、私が先手になった。
▲7六歩△8四歩に、▲6八飛と振った。Shin氏は居飛車の定跡に精通しているし、さっきも書いたように、振り飛車で序盤はラクに指したかった。
しかしShin氏は早々と△4四角と出、△3三桂と跳ねる。地下鉄飛車を狙っているのかと思いきや、玉を2一に収め、いっそう固くする構想だった。
私は▲4五歩~▲6五歩と突っ張り、▲7五歩。もし△同角なら、▲3三角成△同金▲7五飛の桂得で先手有利という仕掛けだ。
Shin氏は駒組を進め、私は▲6八角。しかし▲5七歩型だったので、違和感があった。ここでShin氏が仕掛ける。

第1図以下の指し手。△8六歩▲同歩△4四歩▲7六飛△4五歩▲7七角△7四歩▲同歩△7五歩▲6六飛△4四角▲6七銀△6六角▲同角(第2図)

名人戦は渡辺二冠が勝ったようである。B級1組に落ちてからの名人は初めてのはずで(8月25日註:読者から指摘があったが、加藤一二三九段の例をうっかりした)、36歳の戴冠はうれしいだろう。おめでとうございます。
Shin氏は△8六歩▲同歩の突き捨てを入れたあと、△4四歩。▲同歩は△同角で調子がいい。私は▲7六飛と浮いたが、堂々と△4五歩と取られてしまった。
私は▲7七角と戻ったが、Shin氏は△7四歩。こんなもん、取る一手と▲同歩としたが、その瞬間△7五歩~△4四角があるのに気付いた。実戦もそうなって、対His戦だったら投了していたかもしれない。しかしまあ投げられないので、▲6七銀と引く。のちの△8六飛が角取りにならないためだが、これもおかしな手だった。といって、ほかに指す手もなかったのだが。

第2図以下の指し手。△8六飛▲9五角△8九飛成▲5一角成△5五桂▲同角△同歩▲4四桂△6八飛▲3二桂成△同金(第3図)

第2図でShin氏は当然のように△8六飛と走ったが、先に△6九飛もあったかもしれない。▲5八銀とは引けないので、この銀の処置に困ったところである。
△8六飛には▲9五角があったが、Shin氏は織込み済。以下△8九飛成として有利、の読みである。
▲5一角成には△4六桂がイヤだったが、Shin氏は5五に桂馬を置いた。これは▲同角と切り、返す刀で▲4四桂が勝負手である。この将棋、後手を引いていては負けになる。
とはいえ攻め合いの△6八飛も厳しい。私はとりあえず金を取ったが……。

第3図以下の指し手。▲5九銀△6七飛成▲4三歩(第4図)

第3図で▲5八銀打は先手にならない。といって▲5八金打は投入のしすぎ。仮に△6七飛成▲同金となっても、この金は一生働かない。そこで▲5九銀と打った。△6七飛成で銀は取られるが、飛車を三段目に追いやり、一段竜を2枚の駒で遮断している。
そこで▲4三歩と垂らした。

第4図以下の指し手。△3一銀打▲4二金△1五歩▲3二金△同玉▲4二金△2一玉▲3一金△同銀▲4二歩成△1六歩▲3一と△同玉▲3三馬(第5図)

第4図で私なら、ノータイムで△4三同金。以下▲5二馬なら△3二銀の要領である。でもShin氏は取らないと思った。とはいえ△3一銀打は疑問で、私は▲4二金と張り付き、かなり形勢が縮まったと思った。
△1五歩は急所の端攻めだが、まだ猶予がある。私は▲4二金から攻め、先ほどの▲4三歩がと金に昇格した。△1六歩には▲3一とと銀得し、勝手にせいの▲3三馬。さっきまで敗勢だったことを思えば、この展開は望外である。

第5図以下の指し手。△1七金▲同桂△同歩成▲同香△同香成▲同玉△1六歩(途中図)

▲1六同玉△8六竜▲4六歩△1五歩▲同玉△1二香▲1三歩△同香▲1四歩△2四角▲同馬△同歩(第6図)

Shin氏は△1七金と放り込んだが、もったいなかった。ここは△1七歩成でよく、▲同桂は△1六桂があるから、不可。よって▲同香と取るよりないが、△同香成▲同玉で、玉を引っ張り出せた。本譜はここで金を1枚手放している勘定になるから大違いである。
Shin氏はすでに秒読み。私は数分残っているが、指す手は限られている。しかし△1六歩にはもう少し考えるのだった。すなわち▲1八玉で残していると思ったが、相当あぶない。それで▲1六同玉と取ったが、これでもわずかに逃れていると思った。
Shin氏は△1二香と打って詰み、と見ていたようだが、私は▲1三歩~▲1四歩。これで1四からの脱出ルートができ、逃れている。Shin氏は△2四角と馬を消しにきたが、ここで私が先手を取っては、逆転したと思った。

第6図以下の指し手。▲5三角△4二角▲3三香△3二桂▲2三桂△2二玉▲1三歩成△3三玉▲4二角成△同玉▲3一角△5一玉▲5二銀△6二玉(第7図)

▲5三角はノータイム。△4二角に▲3三香もノータイム。△3二桂には▲同香成△同玉▲4四桂で詰みと思ったが、私はノータイムで▲2三桂と打った。△4一玉なら、▲3二香成△同玉▲4二角成△同玉のとき、▲3一角と打てる。ゆえに△2二玉だろうが、そこで▲1三歩成と、香を取りながら王手ができる。この順に魅入られてしまったのだ。
だが▲1三歩成△3三玉に▲4四金で詰みと思いきや、△2二桂が利いている。そこで▲4二角成と先の変化に合流させたが、△同玉▲3一角△5一玉▲5二銀△6二玉のときに、指す手が分からなくなってしまった。私もすでに秒読みである。どうする?

(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする