一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

終戦記念日の4時から男(前編)

2020-08-24 00:14:56 | 新・大野教室
大野教室はお盆の時期にも「第1、第3土日曜開催」を崩していない。これはありがたいことである。今年はコロナ禍で姪と甥が遊びに来なかったので、終戦記念日の15日、大野教室に行った。今回は「4時から男」である。
川口駅構内の立ち食いソバ屋でかけそばを食べ、午後3時45分ごろ教室に入る。すると土曜日なのに下駄箱が満杯だった。土曜日は客が少なくなっている、とW氏の弁だったから、これは異変だ。
W氏「あれ大沢さん、珍しいね」
「私は大沢さんが来ると思ってましたよ」
と、大野八一雄七段が散文的に言う。「前回のとき、Shinさんが15日に来るって言ってたからね。Shinさんと指しに来ると思った」
私は図星を指され、苦笑いである。もちろんShin氏も来席していた。
1局目は小学生低学年と思しき少年と指す。和室にはOg氏(指導担当)、佐藤氏、Tod氏、Taga氏、Ok氏、Tok氏らの姿があった。これだけ成人が集まったのは珍しい。いまは子供たちに席巻されているが、ちょっと前はこれが当たり前の光景だった。
平手なので振駒にし、私が先手になった。私が彼相手に先手か。まだ平手だからいいが、彼に駒を落としてもらう成人もいるわけだ。子供相手だと、これが結構な屈辱になるのではなかろうか。将棋は年齢のハンデなく戦える競技ではあるけれど、それがアダになる場合もある。
将棋は横歩取りになった。私は▲3四飛のまま▲5八玉から▲3六歩。いわゆる青野流だが、この先どう指していいか分からない。
少年は角を換え△2六角(第1図)。

以下▲3八銀△3五角▲同歩△3六歩▲4五桂となったが、これに△4四歩なら苦しいと思った。少年は△3七歩成▲同銀△2九飛を選び、私は▲6六角。これに△2二歩なら▲7五角とするつもりだったが、△5二金で二の矢がない。
少年は△2二歩とせず△1九飛成だったが、私は▲1一角成(第2図)として十分になった。

以下数手進んで第3図。ここで▲3二馬と決断する。以下△3二同銀▲3四桂△5一玉▲5三角成△同金▲同桂成△2五角▲7九玉△3六角打▲7一銀まで、私の勝ちとなった。
感想戦。第1図以降△4四歩の変化は、▲6六角で難しい、の結論になった。とはいえ私たちレベルの感想なので、定跡は違う評価なのだろう。
今日は第78期名人戦第6局が行われている。私が家を出る時は、渡辺明二冠が勝勢だったが、豊島将之名人はまだ粘っているようだ。プロ的にはオワリでも、すぐに投げられないところである。
教室の和室の隅では、Taga氏とOk氏が熱戦を繰り広げている。

Taga氏はともかく、60歳近くになって将棋を始めたOk氏の上達が凄まじい。大野七段は、「ヒトは何歳から将棋を始めてもアマ四段になれる」と言ったが、その通りなんだと思う。
このあたりで、Tod氏が帰ってしまった。Tod氏には現在の環境も含め親近感を抱いているので、食事会でいろいろ慰めてもらおうと思ったのに、大誤算である。
次にTod氏が大野教室に行くことが分かれば、私も駆けつけたいと思う。
私の2局目は、また少年と。今度は私の飛車香落ち。この手合いは厄介で、端を破られるのを覚悟しなければならない。かつて植山悦行七段は、「飛車香落ちを指すくらいなら、二枚落ちのほうが指しやすい」と言ったが、私も同意見である。
対局開始。△3四歩▲7六歩△4四歩のあとに、△3二金と指したのが躓きの元。▲1四歩△同歩▲同飛に△1三歩とせざるを得ず、そこで▲3四飛と横歩を取られてしまった。よく分からないが、上手がこの歩を取らせては失敗だと思う。
しかしそこから私が怪しい手を連発し、最後は私の勝ち。

3局目はまた別の少年で、また私の飛車香落ち。たぶんいくらか前は、大野七段と二枚落ちだったのだろう。そこから上達し、いまは飛車香落ちに昇格しているに違いない。つまり大野七段の教えをしっかり守っているわけで、油断のならない相手ということである。
対局開始。私は△3二金を後まわしにし、△3三角~△2四歩~△2二銀。少年は▲1四歩△同歩▲同飛と来たが、私は△2三銀。これで飛車が成れない仕組みである。
少年は▲1八飛と引き、私の△1四歩に、今度は▲4八飛と、こちらに戦機を求めてきた。

だが部分図の▲4四桂が錯覚。△同歩で▲3二角成とはできない。▲4四桂のとき待ったをしてあげてもいいのだが、それは少年のプライドを傷つける。黙って△4四同歩と取った。
少年は▲4四同飛としたが、△4三銀▲4八飛△3三角で、私はだいぶ楽になった。
「これは大山―升田戦みたいですね」
とOg氏の声。T君と対局中で、覗き込むと、Og氏の振り飛車に、T君が居飛車穴熊に囲っていた。
私「昭和43年の名人戦ですか?」
Og「はい」
私「第2局ですね」
Og「はい」
これは升田幸三九段の構想が冴えたのだが、終盤▲8一銀成の疑問手を指して惜敗したやつだ。
すると誰かが「マニアックな会話だ……」とつぶやいた。
私の将棋は、以下私が勝った。

感想戦は、▲4四桂より前の、下手の攻め筋を説いた。▲4四桂には触れないのがエチケットである。
しかし少年は消化不良だったようで、W氏がそこを汲み、再戦となった。
今度は少年もポカなく指したが、私は△5七角成(第1図)とし、まずまずの形勢。
しかしそこから数手進んで第2図の△5五桂が意味不明の大悪手。ここで少年に好手がある。

(つづく)
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