一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

初タイトル獲得から二冠までの日数

2020-08-22 00:14:10 | データ
19日・20日は、福岡市にて、第61期王位戦第4局が行われた。ここまで木村一基王位の0勝、藤井聡太棋聖の3勝。世間は藤井棋聖の二冠誕生を望んでおり、木村王位は旗色が悪い。また藤井棋聖が今後4連敗することも考えにくく、第4局以降のどこで藤井棋聖が勝つか、が焦点になっていた。
将棋は木村王位十八番の相掛かりになったが、藤井棋聖も追随し、初日はほぼ互角。しかし2日目の封じ手で、藤井棋聖が飛車を切ったのが英断の好手だったようで、形勢は藤井棋聖に傾いた。
こうなれば藤井棋聖のものである。差はジリジリと広がり、あとは藤井棋聖の収束を待つのみである。17時、藤井七段の△7七角が放たれ、木村王位の投了となった。我が町では、5時を知らせるメロディーが鳴っていた。
これにて藤井棋聖は王位と合わせ二冠、同時に八段に昇進した。18歳1ヶ月で達成とは、何という記録だろう。
昨年秋に永瀬拓矢二冠が誕生したとき、私は10月3日のブログで、「次の二冠達成者は藤井七段になってしまうのだろうか」と書いた。それが1年足らずで、現実のものとなったのだ。
まさに現実離れで、たとえば将棋小説を書く場合、突拍子もない設定は別だが、中学生でデビューしていきなり公式戦29連勝、高校生にして渡辺明三冠からタイトルを奪うなどタイトル2期、棋戦優勝2回で八段昇進、などという設定にすれば、編集部から「夢物語もいい加減にしろ」と一蹴されるであろう。事実は小説より奇なりである。
まったく、私のような凡人とは住む世界が違うのだ。まあ私はプロ棋士を目指してないからまだエクスキューズは利くが、現役奨励会員は藤井二冠をどう捉えているのだろう。18歳以上の奨励会員はいくらでもいるわけで、その時点でこれだけ棋歴を引き離されては、才能の差を見せつけられて、腐ってしまうのではないだろうか。将棋界はとんでもない怪物を生み出してしまった。

藤井二冠の18歳1ヶ月二冠は、羽生善治九段の21歳11ヶ月を抜いて最年少らしい。3年10ヶ月も更新してしまい、この記録を破られることは、私の存命中にはもうあるまい。
また二冠同時戴冠は、私の調べでは藤井二冠で16人目だが、一冠目の棋聖から二冠目の王位までは、わずか35日だった。
これがどのくらい早いか、過去15人の二冠棋士と比較してみよう。
なお今回は、初タイトルを獲った日を起算とする。たとえば、竜王を奪取したが、のちに取られ無冠。そのあと棋王、王座と獲ったとしたら、竜王を獲った日から王座を獲った日までを計算する。

35日 藤井聡太二冠(2020.07.16棋聖~2020.08.20棋聖・王位)
73日 豊島将之竜王(2018.07.17 棋聖~2018.09.27棋聖・王位)
74日 南芳一九段(1988.01.12棋聖~1988.03.25棋聖・王将)
144日 永瀬拓矢二冠(2019.05.11叡王~2019.10.01叡王・王座)
353日 久保利明九段(2009.03.30棋王~2010.03.17棋王・王将)
670日 森内俊之九段(2002.05.17名人~2004.03.16竜王・王将)
742日 大山康晴十五世名人(1950.07.05九段~1952.07.15九段・名人)
908日 中原誠十六世名人(1968.07.19棋聖~1971.01.12十段・棋聖)
1,002日 羽生善治九段(1989.12.27竜王~1992.09.22棋王・王座)
1,640日 高橋道雄九段(1983.09.26王位~1987.03.23王位・棋王)
1,757日 谷川浩司九段(1983.06.15名人~1988.04.05王位・棋王)
1,893日 升田幸三実力制第四代名人(1952.02.12王将~1957.04.18王将・九段)
2,277日 米長邦雄永世棋聖(1973.07.20棋聖~1979.10.13棋王・王位)
2,465日 渡辺明名人(2004.12.28竜王~2011.09.27竜王・王座)
3,156日 佐藤康光九段(1993.12.10竜王~2002.08.01王将・棋聖)
3,684日 加藤一二三九段(1969.01.07十段~1979.02.08棋王・王将)


初タイトルを保持しながら二冠目を獲った例は、藤井二冠から久保九段までと、大山十五世名人、渡辺名人の7例。渡辺名人の竜王は9連覇の最中で、この間はほかに竜王を渡していない。
まったく意味はないが、藤井二冠を除く15人の平均達成日数は1,389日。加藤九段のように、初タイトルから二冠まで10年以上を費やした例もあり、二冠達成がいかに難しいかを物語る。そこを藤井二冠は、わずか35日で達成してしまったのだ。
どうであろう。今後藤井二冠にタイトル戦で勝てる棋士が出るだろうか。七番勝負で4勝、五番勝負で3勝は相当大変である。絶好調時の渡辺名人、豊島竜王くらいしか思いつかない。
この予想が間違っていなければ、今後藤井二冠は、タイトル戦に出るたび勝ち続けることになる。
コメント
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