一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第33期竜王戦挑戦者決定戦第1局

2020-08-19 00:06:43 | 男性棋戦
17日は、第33期竜王戦挑戦者決定戦第1局・羽生善治九段VS丸山忠久九段戦が行われた。
ここまで羽生九段はタイトル99期。しかし第31期で広瀬章人八段に竜王位を奪われて無冠になってから、足踏み状態が続いている。将棋ファンであれば、とりあえず羽生九段のタイトル100期を見届けたいところ。でないと、何をやるにしても手がつかない。
相手の丸山九段は元名人で、竜王戦七番勝負登場も3回を数える強豪ではあるが、羽生九段にとって気心の知れた相手であり、対戦成績も羽生九段が38勝19敗と圧倒している。羽生九段も最近は簡単にタイトル戦に出られる情勢ではないので、その意味でも今回の竜王戦は、絶好のチャンスだった。
当日はABEMAで中継があった。見ると、羽生九段の先手で、角換わりの将棋になっていた。ところが、羽生九段の消費時間は減っているのに、丸山九段のそれは「5:00」のままである。つまり持ち時間を消費していないのだ。最近は、勝手知ったる局面は飛ばす棋士が多いが、それにしてもこれは極端である。(一手損)角換わりは丸山九段の土俵。この三番勝負のために丸山九段はあらゆる局面を研究し尽くしたのだろう。そしてその答えが、このノータイム指しだった。そしてむろん、これから訪れる未知の局面に備え、可能な限り持ち時間を残したのだ。
しばらく経って見ても「4:59」。対して羽生九段は2時間近くを消費しており、それでいてAIの評価値はやや羽生九段リード、くらいだった。この程度の差で中盤に進めば、丸山九段の作戦は十分に奏功している。これは羽生九段、厳しい展開を強いられた。
ABEMAでは、見知らぬ女流棋士が聞き手をやっていた。その声から察するに室谷由紀女流三段に思えるが、おでこを出し、眉毛が薄くなったようで、とても本人に見えない。
室谷女流三段、最近は公式戦の成績もパッとしないし、何か迷走しているように思える。ただ私がどうこうできるものでもないし、結局なるようにしかならない。
将棋は羽生九段が角銀交換の駒得になったが、△4七のと金も大きく、形勢は互角であろう。
そこで羽生九段の53手目、▲8二角(第1図)が放たれた。

丸山九段は△7三桂と跳ねる。私はイヤな予感がした。
大野教室の大野八一雄七段の指し手で見たことがあるのだが、飛車落ちで、上手が△6二玉型で待つ形がある。下手は隙アリと見て▲8二角と打つのだが、これが上手の待ち受けるワナ。下手は▲9一角成と香を取れるのだが、その後この馬が活用しにくい。その間上手は中央でごちゃごちゃやって、下手を騙してしまうのである。
この手筋が平手でも生きるのなら、私的には羽生九段の▲8二角は大悪手。羽生九段は負けると思った。
その後羽生九段は二枚換えの戦果を挙げ、さらに駒得を拡げるが、丸山九段も△4八歩から金を取り返し、じっと△6二金(第2図)。手の意味は分からぬがよさそうな手で、私は、1999年4月1日の第17回全日本プロトーナメント第1局・▲丸山八段VS△森内俊之八段戦で、終盤の忙しい最中、丸山八段がじっと▲7八金寄(参考図)とした手を思い出した。

形勢は丸山九段よし。第2図以下▲4三銀△4九角に、応手は▲6八玉か▲6九玉であろう。解説の千葉幸生七段は▲6九玉の変化をやり、後手玉の即詰みの順まで示していた。してみると、実戦的にはまだ先手も希望を持てるのだろうか。
ところがしばらく経って見ると、AIの評価値が、大きく丸山九段に振れていた。何と、羽生玉が▲4七に出ていたのだ。え!? こっち!? ……すでに△4五銀が指されていて、これは上下挟み撃ちである。
永世七冠の指し手にアマがケチをつけるのもアレだが、▲6八玉や▲6九玉より▲4七玉のほうがベターだとはとても思えぬ。どういう思考のもとに指されたのだろう。
羽生九段は▲3二竜と4一の飛車取りに入ったが、△4三飛と銀を取る手が△5八銀以下の詰めろになった。羽生九段は▲同歩成と形を作り、△5八銀まで投了した。
いやはや、急転直下の終局である。羽生九段はこういった難しい局面で最善手を指すのが通例だったが、本局は腰くだけ。マスクをしているせいか何となく生気が抜けて、別人のようだった。あの▲8二角は、ついぞ動かずじまいだった。
いっぽうの丸山九段は作戦図星で、持ち時間を1時間31分余しての快勝。これは第2局に向けて弾みがついたのではなかろうか。
第2局は25日に指されるが、これは羽生九段の今後を占う重大な一局になるかもしれない。
コメント (3)
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