一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第95期棋聖戦第1局

2024-06-06 23:30:05 | 男性棋戦
第95期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)の挑戦手合いである。藤井聡太棋聖は今期防衛すると5期連続で、早くも永世棋聖有資格者となる。
それにしても藤井棋聖は「八冠王」だと改めて思う。タイトル戦は間断なく行われているが、そのすべてに藤井棋聖が登場する。これじゃあ気が休まる暇がなかろう。そんななか藤井棋聖が名人戦を5局で終わらせたのは幸いで、名人戦がもつれていたら、叡王戦とともにトリプルマッチになるところだった。
そして挑戦者は山崎隆之八段である。いままで藤井棋聖に挑戦した棋士は、タイトルをいくつも獲得した超一流か、気鋭の若手棋士だった。
それなのに山崎八段はタイトル経験がなく、指し盛りも過ぎている。だが今年度公式戦は7戦全勝で、その中には竜王戦1組優勝の星もある。今年は久しぶりに好調な年なのだろう。本人は今回のタイトル戦が「最後の登場」と自虐しているが、竜王戦だって挑戦の可能性があるから、まだまだ楽しみはある。だがその前に棋聖戦である。
山崎八段は独創的な将棋で、当ブログでもたびたび話題にしてきた。その山崎将棋が藤井棋聖に通じるか否かに注目である。そして五番勝負の短期決戦において、山崎八段の初戦先勝は絶対条件である。さらに第2局も勝って、ようやく五番勝負が面白くなる。
第1局は山崎八段の先手で、相掛かりになった。藤井棋聖は後手番ということもあり、おとなしく追随していく。
そこで山崎八段は、7筋の歩を伸ばした。相手の7筋の歩を突かせない、の意だろうが、これが私には意外だった。
若かりしころの谷川浩司九段が、タイトル戦でこの手を指し、芹沢博文九段が酷評したことがあった。もちろんそのときとは局面が違うが、ココロは同じではないか?
山崎八段、飛車を浮く。善悪はまったく分からないが、なんだか山崎八段の指し手が、ヨソ行きのようである。端正で、変態っ気がないのだ。
と、藤井棋聖は継ぎ歩に出た。山崎八段は飛車を引くが、そこで藤井棋聖が打った自陣角が名手。私は、いまからちょうど30年前の1994年6月6日・7日に行われた第52期名人戦(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)第6局・米長邦雄名人VS羽生善治四冠戦の、羽生四冠の手を思い出した。

本譜、山崎八段は角を打ち、数手後飛車を世に出す攻め合いに出たが、形勢の差は拡がるばかり。見ていてつらくなった。
以下、90手まで藤井棋聖の勝ち。完勝だった。
本局の前までは双方1勝だったので、山崎八段にも多少の期待はあったが、本局を見る限り、もう藤井棋聖の防衛は固い。ただ山崎八段には一局でいい。これぞ山崎将棋、という会心の勝利を見せてもらいたい。
第2局は17日。
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2 コメント

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山崎先生 (将子)
2024-06-07 15:09:25
山崎先生との初めてのタイトル戦、藤井先生の完勝のようでした。

山崎先生の記事を読むと、とてもいい人みたいですね。
山崎先生、自虐も面白い。「自分が勝つと、他の棋士が自分にもできるんじゃないかと思うので、他の棋士のためにも頑張る」とか、「なんで、お前がタイトル戦に?って思っている人がいっぱいいると思う」とか。

将棋界は、みなさん天才なのに、小さい頃から何度も負けてきてるからか、謙虚な方が多いですよね。

全く関係ない話ですが、藤井先生が、八冠達成直後のインタビューで、「(将棋を初めて)一番嬉しかったのはいつ?」という質問に、「四段になった時」とお答えになっていらっしゃいました。(記者は「八冠達成した時」という答えを期待していたと思うのですが。)
それだけ、天才集団の中でプロの棋士になるのが厳しいということなんでしょうねぇ。
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オマケ (一公)
2024-06-08 02:09:30
>将子さん
山崎先生は話が面白くて、矢内先生の件とか、ネットで探せばいくらでも出てくると思います。
そうですね、棋士の皆さんはおしなべて謙虚ですね。ごくまれに態度のでかい人もいますけど……。
「将棋でいちばん嬉しかったこと」は、棋士に聞いたら、「棋士になった瞬間」がいちばん多いと思います。私でもたぶん、そう答えます。
四段昇段に比べたら、八冠王はオマケみたいなものです……。
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