一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

四十二たび大野教室に行く(その3)・勝ちに不思議の勝ちあり

2013-03-12 00:34:29 | 大野教室
(再掲)
上手(角落ち)・大野七段:1一香、1三歩、2一桂、2三玉、2四銀、2五歩、3一飛、3四金、4二金、4四歩、5三銀、5四歩、7四歩、8一桂、8四歩、9一香、9三歩 持駒:歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2九桂、3六金、3八飛、4六歩、5六歩、5七銀、6五歩、6七銀、6九玉、7六歩、7八金、8七歩、8八角、8九桂、9六歩、9九香 持駒:歩2
(▲6五歩まで)

以下の指し手。△3五金▲同金△同銀▲2二歩△同玉▲2四歩 まで、一公の勝ち。

△3五金▲同金△同銀。私の右ではFuj氏が、自分の将棋そっちのけでこちらの行方を見ている。「下手劣勢ですねえ」と顔に書いてある。私も「もうダメだよお」と泣き言を言うが、私には狙っていた手があった。
▲2二歩△同玉▲2四歩。驚くなかれ、これで上手、受けがない。
A△2四同銀は▲2三金△同玉▲3一飛成。B△3三金は▲3五飛。C△1二金なら受かるが、こんな手はバカバカしくて指せない。
大野八一雄七段はD△3四飛と指したが、自身で決め手を見つけてしまい、ここで投了となった(▲4五金!がある)。
感想戦。△3五金では、△3五歩▲3七金△3三桂だった、と大野七段。これなら下手は本心から、泣き言を言うところだった。
「死んだフリをしてました」
「下手が死んだフリをして上手を騙すなんて」
という和やかな会話があったが、私もあまり喜べる勝ちではなかった。
3局目はHanaちゃんと指す。Hanaちゃんは最近居飛車を勉強し始め、将棋に幅がでてきた。ただし、いままでは真ン中に飛車を振ってガンガン攻めるだけでよかったが、居飛車は細かい指し方を要求される。たとえば横歩取りの将棋では、定跡の中にいくつもの落とし穴があるし、いままでのようにはいかないはずだ。しかしそれだけに、勉強のしがいもある。
私の先手で、横歩取りに進む。△3三角~△8五飛なら角を換わって▲9六角で脅かすつもりだったが、Hanaちゃんは角を換わって△7六飛ときた。相横歩取りだ。
…▲4六角△8二角▲同角成△同銀▲5五角△8五飛▲8六飛△同飛▲同銀。
ここでHanaちゃんは△7三銀と指したが、どうだったか。私は労せずして▲1一角成と香得し、指し易くなった。
本局は持ち時間30分・秒読み30秒。早指しの私が、ここまで15分以上使っている。前回宣言したとおり、本局は全身全霊をかけてHanaちゃんを倒しにかかっているのだ。
数手進んで、▲1三竜、△3二銀・4二銀の局面で、Hanaちゃんは△5四香。これを▲5八金と受けると、△5七香成▲同金△3五角で厄介である。
私は▲5六歩と突いたが、これが決め手。△同香は▲5八歩で受け切り。ここでHanaちゃんは長考に入った。決定的にHanaちゃんが悪く、どう攻めても自滅する。どうするかと見ていると、Hanaちゃんはじっと△4一銀と引いた。
攻めれば負けを早める。ならばまた来る春を楽しみにと、じっと遊び駒を活用する。実に落ち着いた手で、本局、私が最も感心した一手である。こんな手が指せるのなら、Hanaちゃんの女流棋士の道も近いと思った。
数手後、△7六銀に、私は▲6六の桂を飛車取りと7四に跳ねる。これでHanaちゃんの投了。△7四同玉は▲3六の竜で▲7六竜とし、先手必勝である。結局△5四香は、あれから一手も動かなかった。
Hanaちゃん、私に思わぬ負けを喫し、腐っているかと思いきや、感想戦では△7三銀に代えて△2八歩以下の定跡を、興味深く聞いていた。これは見事な姿勢である。繰り返すが、今後のHanaちゃんに期待大だ。
4局目。大野七段がN氏との将棋を勧めてくれたが、N氏はSat-Ma戦の観戦に忙しく、パス。私はMinamiちゃんと指すことになった。
私の二枚落ち。私は趣向を変えて矢倉に組むが、あまりよくなかった。
△7五同飛の銀交換に私は▲7六金と上がる。Minamiちゃんは△7四飛とひとつ引いたが、ここでは△7六同飛▲同銀、△6六角もあったかもしれない。
これは次に△4八金▲4六玉△5七銀までの詰めろ。それを▲5七銀と受ければ、△9九角成としてどうか。もっともMinamiちゃんにそこまで指されたら手合い違いだ。下手が上手に勝つコツは、下手はこんな手を指さないだろうと、神経を図太くすることである。
私は▲7五銀から▲7四歩とし、と金を作る。しかしMinamiちゃんも△1三角と反撃する。このノゾキが存外厳しく、角筋を防いで▲3五桂と犠打を放つようでは、上手も容易でない。
かなりもつれたが、最後は私の辛勝。しかし先にも書いたが、Minamiちゃんは本当に強くなった。駒が中央、中央へと向かうようになった。これは棋力が上がったらそうなる、というものではなく、天性のセンスがなければならない。
きょうの対局はこんなところか。4勝0敗は出来過ぎだった。
と、指導対局を終えた植山悦行七段が洋間に来た。盤上には、大野-一公戦の終了局面がまだ残っている。私は終了直前の状況を説明した。大野七段もその中に入り、プチ感想戦の再開となった。
▲2二歩に△3六歩は▲2一歩成△同飛は「▲4七桂か」と植山七段。さすがにプロの読み筋は同じだ。だから△3六歩で「△3七歩」(大野七段)と打ってみる。▲同飛△3六歩▲3一と△3七歩成▲同桂△3九飛▲6八玉△3七飛成はどうか。
これはむずかしい戦いだが、下手は7七~8六~9七と逃げる手があり、序盤でさりげなく突いた「▲9六歩がよく利いている」(植山七段)。しかし上手陣の上部も広く、上手ペースの戦いだった。
しばらく経って、植山七段が
「この間のNHK杯では、ひどい将棋を指しましたよ」
と言った。
(つづく)
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