第4局は2月15日に行われた。先番・上田初美女王の居飛車に、後手番・里見香奈女流名人は角道を止めない四間飛車。そこから三間飛車→浮き飛車と進める。これは細心の注意を払ったものだろうが、ちょっと考えすぎの気もする。
思うのだが、最近の序盤戦術はこねくり回し過ぎて、序盤の根本がおろそかになっていないだろうか。本譜は純粋な1手損で、先手に不満はない。
上田は▲4七銀形から穴熊に組む。バランスが悪い気もするが、これはこれである手なのだろう。
里見、△1二香から△3二歩。△3二歩は第2局でも現われたが、大山康晴十五世名人を彷彿とさせる手で、渋い。しかし渋いからいい手という訳ではない。本局はどうだったのだろう。
本譜は▲7四歩からのコビン攻めが厳しい。
里見は74手目に△7八歩。この局面を後手方から見ると、後手の竜が消えると△6一金が取られるので、どこかでこの金を安定させたいところ。
そこを△7八歩は、戦いの最中に竜が消えそうで、いかにも危なっかしい。里見は居飛車を勉強しすぎて振り飛車の感覚が鈍ったのか、このあたり、危機感が足りなかった気もする。
▲7八同金△7六歩に▲7四歩を利かし、▲5五角と飛び出せては先手優勢がハッキリした。以下は上田の着実な寄せを見るばかり。
まさか上田が勝つとは思わなかった、と言ったら上田に失礼だが、上田は堂々の快勝で、第39期女流名人位の行方は、最終局に持ち越された。
最終第5局は、2月27日に行われた。
先番里見の居飛車に、上田は、十八番の四間飛車穴熊。これで力一杯戦います、の宣言だ。
里見は銀冠に構えるが、▲9六歩をなかなか突かない。後の譜に現われるが、米長玉を意識していたのかもしれない。▲9八玉型は、▲9六歩を突いていないほうがトクなときがある。
上田は△5四歩から戦いを起こすが、強く応戦した里見がペースを握ったようだ。しかし上田の気迫に押されたか、必ずしも自分の優位を意識していなかったようである。
以下実に見応えのある攻防が続くが、104手目△9五桂が上田、ここまでの苦労を棒に振った疑問手。▲9六玉△2九飛成に▲8五金と受けられて、攻めが続かなくなってしまった。
戻って104手目、私だったら△9五桂しか浮かばないが、「王手は追う手」の格言はここでも生きていて、ここは黙って△2九飛成と、2枚目の桂を取るのがよかったらしい。
これは△9五桂▲9六玉△8四桂以下の詰めろ。先手玉から遠くにいる飛車を活用して、それが詰めろになるなら効率的だ。こう指せば、今度は▲8五金と打つ人はいないから、先手は受けに窮していた。
以下は里見の寄せを見るばかり。最後は上田の「女流棋士らしい」延命の手があったが、タイトルの行方が決まる大一番とあっては、今回ばかりは私も目をつぶるしかなかった。
終わってほしくない熱闘も、135手目の▲7三桂で幕。男性棋士に見劣りのしない、実に見応えある熱戦だった。
里見は周りから防衛を期待され、そのとおりに防衛したのだから、立派だった。
以上5局を見てきたが、上田の実力は里見のそれとほとんど変わらないと思った。いまは己の不明を恥じるのみである。来月からはマイナビ女子オープン五番勝負が始まるが、これはおもしろい戦いになるだろう。
思うのだが、最近の序盤戦術はこねくり回し過ぎて、序盤の根本がおろそかになっていないだろうか。本譜は純粋な1手損で、先手に不満はない。
上田は▲4七銀形から穴熊に組む。バランスが悪い気もするが、これはこれである手なのだろう。
里見、△1二香から△3二歩。△3二歩は第2局でも現われたが、大山康晴十五世名人を彷彿とさせる手で、渋い。しかし渋いからいい手という訳ではない。本局はどうだったのだろう。
本譜は▲7四歩からのコビン攻めが厳しい。
里見は74手目に△7八歩。この局面を後手方から見ると、後手の竜が消えると△6一金が取られるので、どこかでこの金を安定させたいところ。
そこを△7八歩は、戦いの最中に竜が消えそうで、いかにも危なっかしい。里見は居飛車を勉強しすぎて振り飛車の感覚が鈍ったのか、このあたり、危機感が足りなかった気もする。
▲7八同金△7六歩に▲7四歩を利かし、▲5五角と飛び出せては先手優勢がハッキリした。以下は上田の着実な寄せを見るばかり。
まさか上田が勝つとは思わなかった、と言ったら上田に失礼だが、上田は堂々の快勝で、第39期女流名人位の行方は、最終局に持ち越された。
最終第5局は、2月27日に行われた。
先番里見の居飛車に、上田は、十八番の四間飛車穴熊。これで力一杯戦います、の宣言だ。
里見は銀冠に構えるが、▲9六歩をなかなか突かない。後の譜に現われるが、米長玉を意識していたのかもしれない。▲9八玉型は、▲9六歩を突いていないほうがトクなときがある。
上田は△5四歩から戦いを起こすが、強く応戦した里見がペースを握ったようだ。しかし上田の気迫に押されたか、必ずしも自分の優位を意識していなかったようである。
以下実に見応えのある攻防が続くが、104手目△9五桂が上田、ここまでの苦労を棒に振った疑問手。▲9六玉△2九飛成に▲8五金と受けられて、攻めが続かなくなってしまった。
戻って104手目、私だったら△9五桂しか浮かばないが、「王手は追う手」の格言はここでも生きていて、ここは黙って△2九飛成と、2枚目の桂を取るのがよかったらしい。
これは△9五桂▲9六玉△8四桂以下の詰めろ。先手玉から遠くにいる飛車を活用して、それが詰めろになるなら効率的だ。こう指せば、今度は▲8五金と打つ人はいないから、先手は受けに窮していた。
以下は里見の寄せを見るばかり。最後は上田の「女流棋士らしい」延命の手があったが、タイトルの行方が決まる大一番とあっては、今回ばかりは私も目をつぶるしかなかった。
終わってほしくない熱闘も、135手目の▲7三桂で幕。男性棋士に見劣りのしない、実に見応えある熱戦だった。
里見は周りから防衛を期待され、そのとおりに防衛したのだから、立派だった。
以上5局を見てきたが、上田の実力は里見のそれとほとんど変わらないと思った。いまは己の不明を恥じるのみである。来月からはマイナビ女子オープン五番勝負が始まるが、これはおもしろい戦いになるだろう。