一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

四十三たび大野教室に行く(後編)・植山悦行七段のつぶやき

2013-03-30 00:59:17 | 大野教室
思えば私とW氏の手合いは、最初は私の二枚落ちだった。私が勝ち越していたと思うが、ある日完璧に負かされ、それから飛車落ちになった。しかし飛車落ちはW氏の専門である。何しろ、植山悦行七段や大野八一雄七段に、数十局と教わっている。指し手が本筋に行くのである。私も右四間飛車から完璧に負かされ、現在は平手の手合いになっている。
本局、Hanaちゃんの実力は認めるが、二枚ではさすがにW氏が厚いと思った。
しかししばらく経って戻ってくると、けっこういい勝負になっていた。
Hanaちゃん、端の香を捨てて、△9八歩の角取り。▲6六角に△同金とし、大駒を入手した。そこからさらに飛車角交換になるが、これはどちらが勝ちだか分からない。
上手持駒:飛、桂。下手・2七歩、3七桂、3八玉、4八金の局面で、Hanaちゃんは△5六桂と金取りに打ったが、これは逸機。△3六桂と反対側から打てば、金取り+△2八飛の狙いで、Hanaちゃんがおもしろかった。
最後はW氏が冷静に決めて、制勝した。しかしHanaちゃんは駒落ちの上手に目覚めたようである。今後の指し手が楽しみだ。
しばらく雑談し、きょうの将棋は終了。私は1局目に植山七段に敗れたのが痛かった。
食事会の参加は大野七段、植山七段、W氏、私。きょうはMinamiちゃんが帰宅し、Fuj氏も欠席したため、少ない。4人は1テーブルで済むのでどこへ行ってもいいのだが、結局、駅前のガストに行った。このあたり植山七段は不満そうだが、私たちは保守派なのである。
喫煙席がふさがっていたため、禁煙席に座ってメニューを選ぶ。私の場合、旅先では早めに決めるが、こうした場では時間をかける。
ベースは鶏料理だが、セットにスープを頼むかどうか。
「ポタージュにするか…」
「それ頼むんですか」
と、植山七段。
「はい。これが本筋だと思いますが」
「(スープの中の)野菜を摂るなら、ドリンクバーの野菜ジュースで十分でしょう」
「ドリンクバーで補う? それはないでしょう」
「いやそれが本筋でしょう」
と、妙な会話が続く。結果、私はポタージュスープとライスのセット、植山七段はライスのみのセットを頼んだ。さんざん時間をかけて、初手に▲7六歩と指したようなものだった。
喫煙席が空いたようなので、そちらに移る。
繰り返すが、この4人で食事会は珍しい。ありそうでなかったメンバーだ。私は「基本形のメンバーだね」と言ったが、「大野教室」のそれは、私に代えてFuj氏だった。
食事が届き、黙々と食べる。
食後の雑談は、大野教室の生徒について。Hanaちゃんが駒落ちの上手に目覚めたのはいいが、植山七段は、上手の金と下手の角を交換したのはどうかという。
上手はカンタンに取らず、角を取るぞ取るぞと脅かして、負担にさせるのがいいらしい。なるほどそういうものかと、私も参考になった。
そのほかにも、棋士おふたりの、生徒への評価が微妙に違うのもおもしろかった。指導対局の対戦成績でも微妙な偏りがあり、例えば大野七段-Sai氏の角落ち戦は、大野七段の1勝9敗らしい。植山七段はSai氏に勝ち越している。これが下手の相性というものなのか。
ちなみにSai氏と私の棋力はどっこいどっこい。私と大野七段との指導対局は、私の勝率が2割5分前後だから、これはゆゆしき問題である。
もっとも大野七段とFuj氏の角落ち戦も指し分けだから、これは単に私が弱いだけなのかもしれない。
話が一段落すると、植山七段が私に、
「Ohsawaさん、本当に太りましたねえ」
と呆れるようにつぶやいた。
あまりにもストレートに言われて、私もふさぎこむ。そう言われたくなかったら、明日からダイエットをしろ、ということである。しかしこれ、ダイエット後に何かご褒美がないと、やる気が起こらない。
どうしようか…。
きょうは大野七段が花粉症にやられ、さっきからティッシュを手放せない。頭も痛いようで、この時間は大野七段には苦痛だったようだ。
午後11時を20分ほど過ぎたところで、お開き。会計の際、植山七段が
「やっぱり現役と退役じゃ、お稽古のお呼びが違いますかね…」
とつぶやく。植山七段は今年度で現役引退となるのだ。このまま行けば、竜王戦の昇級者決定トーナメントが、現役最後の対局となる。
「お願いするほうは、そこまで気を遣ってないと思いますよ」
と私。
「……。竜王戦は(今年の)冬に対局がつかないかな」
それまでは現役でいられる、という意味だろう。植山七段のやるせない胸中を思うと、私は返事ができなかった。
コメント
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