映画「TITAN」を観た。
想像力もここまで飛翔すると、もはやリアリティだの云々は関係なくなる。なにせインパクトが凄い。よくぞこんな作品を作ったものだ。主演女優の振り切った演技があってこそだろう。怪演という言葉を通り越して、本当にこういうエキセントリックな人が実在しているように思えてしまう。
冒頭のシーンで主人公アレクシアの性格が知れる。攻撃的で傍若無人の利己主義者だ。子供の頃の性格は一生変わらない。三つ子の魂百までなのである。唯一変わったとすれば、頭にチタンを埋め込まれたことで、欲望の矛先が人間に向かなくなったことだろう。
本作品で描かれるのは生命であり、肉欲であり、破壊衝動だ。アレクシアが愛するのは金属的なものである。頭のチタンのせいだ。おそらくではあるが、アレクシアが愛用している箸状の髪留めはチタン鋼だと思う。金属は裏切らない。必然的に破壊衝動は人間に向かう。
アレクシアにエレクトラコンプレックスを当てはめようとしても難しい。人間には興味が無いからだ。興味があるのは目の前の人間を壊すことだ。愛用の髪留めはアレクシアの相棒である。人間よりもよほど髪留めを大切にしている。
アレクシアの「Je t'aime」だけが唐突で、それまでのアレクシアにはあり得ない言葉である。アレクシアの変化がいいことなのか、そうでないのか。映画は答えを出さない。そもそも是非や善悪の価値観を超えた作品だ。我々はその圧倒的な想像力とそれを映像に実現させた作品の前に、ただただ、ひれ伏すしかないのである。