三軒茶屋のシアタートラムで舞台「もはやしずか」を観劇。
主人公の康二(橋本淳)は幼い頃に、障害のある弟を自分の不注意で死なせてしまったトラウマがある。結婚してしばらく子供ができなかったが、ある日妻(黒木華)が精子提供を受けているのを知る。その後妻が妊娠するが、医者からは障害を持って生まれる可能性が5割あると言われ、妻に堕胎をすすめる。しかし妻は生むと決めて、もう3人では暮らせないと宣言する。
離婚して1年後、妻と両親が訪ねてきて、生まれた子供に障害がなかったと復縁を迫られるが、康二は自分の子かどうかわからないし、障害がなかったから復縁してほしいというのは少し違うのではないかと反論する。
そしてほぼ5秒程度の驚愕のラストシーンがあって、唐突に芝居は終わる。このラストシーンには本当に驚いた。
2時間休憩なしだが、中だるみなど一切なく、すべてのシーンに緊迫感がある。黒木華は強気で嫌な感じの妻を存分に演じていた。意外によかったのが安達祐実。もともと芝居は上手かったが、エキセントリックな役が多くて、上手さを感じなかったが、本舞台で普通の女性の役を演じたのを観て、演技に感心した。
大江健三郎の「個人的な体験」によく似ている。長男の光(ひかり)が障害を持って生まれた経験を書いているのだが、その葛藤は本舞台の康二に通じるものがある。本舞台を観るのは「個人的な体験」を読むのと同じくらい苦しかった。