ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ウスバシロチョウ黒化型

2017-05-23 21:55:15 | チョウ/アゲハチョウ科

 ウスバシロチョウ Parnassius citrinarius Motschulsky, 1866 は、シロチョウと名前にあるが、モンシロチョウ等のシロチョウ科ではなく、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)ウスバアゲハ亜科(Subfamily Parnassiinae)ウスバアゲハ属(Genus Parnassius)に属するチョウで、年1回5月頃だけに見られる。新緑に映える美しいチョウで飛び方も優雅である。幼虫の食草はムラサキケマンやヤマエンゴサクなどだが、成虫はムラサキケマンには産卵せず、近くの木の下枝などに産卵する。そして卵のまま越冬して、翌年孵化するという。
 ウスバアゲハ属は約150万年前の氷河期を生き延びて来たチョウで、胴体には細かい毛が沢山はえているのが特徴である。ちなみに、同じく毛深いギフチョウはウスバアゲハ亜科に属している。 ウスバアゲハ属は他に北海道にヒメウスバシロチョウとウスバキチョウが生息しており、ウスバキチョウは大雪山系固有で国の特別天然記念物に指定されている。世界では10の亜科に分類され多くは高山に生息しており、山や谷ごとに翅の模様が変わり、また、個体変異も多いと言われている。

 日本のウスバシロチョウは、もともと鱗粉が少ないことから「薄羽」という和名が付いているが、その鱗粉の量や色に個体変異が多く、一部では地域特性も見られ、青森県の一部には、白い鱗粉しかない「白化型」、長野県の一部には白い鱗粉が赤みを帯びる「赤化型」、福島県や新潟県等には白い鱗粉が黄色みを帯びる「黄色型」や白い鱗粉がない「黒化型」が存在している。見た目では、ノーマル・タイプが一番美しく、完全黒化型等は「油紙」のようであると言われているが、本記事は、「美」を追求するのではなく「変異」という生物学的興味から掲載するものである。
 昨年、富山県内において撮影した本種を「ウスバシロチョウ 半黒化型」として掲載しているが、今回は違う地域において撮影した個体紹介したい。羽化した後、時間と経過とともに鱗粉が取れた部分が透明化していく場合もあるようだが、この個体は、白い鱗粉がしっかりと模様を呈していることから、羽化時から変化はしていないと考えられ、「黒化型」の変異と言えるだろう。
 また、黒化型の形質はメスに出現するようで、オスにはほとんど見られない。しかしながら、オスにおいても他地域よりも黒い鱗粉が多いのが特徴で、更には日本海側に見られる特性である。
 参考までに、過去に撮影した典型的なウスバシロチョウの写真も掲載したので、比較いただきたい。尚、今後もウスバシロチョウの変異個体は撮影していきたいと思う。

参照:ウスバシロチョウ(不完全黒化型)

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ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 250 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 250 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 1250 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(半黒化型)の写真

ウスバシロチョウ(黒化型のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 200 +2/3EV(撮影日:2017.5.20)

ウスバシロチョウ(黒化傾向のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 400 +2/3EV(撮影日:2017.5.27)

ウスバシロチョウ(黒化傾向のメス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/800秒 ISO 200 -2/3EV(撮影日:2017.5.27)

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過去に撮影したノーマル:タイプ

ウスバシロチョウの写真

ウスバシロチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.0 1/800秒 ISO 200(撮影日:2012.5.04 神奈川県内)

ウスバシロチョウの写真

ウスバシロチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F3.5 1/250秒 ISO 200(撮影日:2011.5.05 東京都内)

ウスバシロチョウの写真

ウスバシロチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 320(撮影日:2011.5.05 東京都内)

ウスバシロチョウの写真

ウスバシロチョウ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F2.8 1/2500秒 ISO 200(撮影日:2010.5.22 東京都内)

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