幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 詩を書くということ

2011-01-03 03:39:02 | Weblog

 
 
  詩を書くというのは 
 
  特別なこと
 
  だから、
 
  あえてレトリックを使わない
 
  レトリックを使わないというレトリックを使う
 
 
  小学三年生の作文ほどにも複雑ではなく
 
  誰が見ても単純極まりなく
 
  小洒落たフレーズを散りばめたり
 
  隠喩も暗喩も使ったりしない
 
 
  それはわざとそうしているのであって
 
  無知でそうしているのではないのだが
 
  読む人にとっては区別がつかない
 
 
  つまり、詩を書くとは特別なことだが
 
  まったく特別ではないと思わせるほど
 
  単純な文体
 
 
  ただし
 
  この文は
 
  自己完結してはいけない
 
 
  詩は
 
  確定してしまっては
 
  どこにも行けない
 
 
  どこかに行かなければならないし
 
  できれば夢見がちな
 
  霧の濃い
 
  未知の道程に誘い出さなければならない
 
  
  でもたいていは
 
  それらは非現実で
 
  リアリティーがないから
 
  陳腐な慰めにしかならない
 
 
  わたしは
 
  あなたが笑うような稚拙な文体しかしゃべれないのではなくて
 
  あなたが驚くであろうレトリックをわざと使わないほどにも
 
  ストレートにしゃべっている
 
  なぜなら
 
  陳腐な慰めとは
 
  常にごまかしであり
 
  純粋な表現に対して答えられない曖昧さは
 
  既に醜悪でしかないから
 
 
  もうあなたには私は語らないし
 
  二度と誘ったりはしない
 
 
  たとえば
 
  それが安易な本能のように感じられたとしても
 
  それはわたしのねじれた表現であって
 
  わたしはあなた以上に
 
  あなたが想像する以上に
 
  はるかに複雑であり
 
  宇宙の構造のようにも
 
  もつれた糸のようにも
 
  入り組んでいる
 
  
  あなたがたは、決してぼくのようには語れない
 
  ぼくのようにストレートには語れない
 
  なぜなら
 
  あなたはそれほどまでに複雑ではなく
 
  とても単純であり
 
  薄っぺらで軽いから
 
 
  言葉は文法ではないし
 
  発音でもない
 
 
  あなたがたは文法に囚われ
 
  説明に窮するようにも発音に窮している
 
 
  ぼくは簡単に詩を書く
 
  それがまるで意味がないかのように
 
 
  そして絶対に完結することはないが
 
  ただあなたにだけは
 
  もう二度とあなたにだけは
 
  何も書かない
  
  
  
  *****
 
 
 
  例えば恋がレトリックであることを理解できないリアリストがいる
 
 
  なにか肉管的なことを恐れていたり
 
  始まってもいないのに、苦痛を嫌悪したりしている
 
 
  それらはぼくにとってはただのメタファーなのだ
 
 
  殴り合ったり、抱き合ったりすること
 
  それらはストレートな欲望の表現ではなく
 
  欲望を駆り立てるための遊びなのだ
 
 
  欲望はその後にくる感覚的な現実だ
 
 
  苦痛であったり嫌悪であってもいい
 
 
  ただ、通過する前に想像し、嫌悪し、否定する
 
 
  その先にはエロスはない
 
 
  どこにも辿り着けないまま
  

  リアリストという名の
 
 
  軽薄な散文主義者がいるだけだ
 
  
  常に自分と同じ風景を見つめて
 
 
  安全な航海に出ようと海辺に立つには立つが
  
 
  荒波が穏やかに凪ることはない
 
 
  なぜなら
 
 
  死人だけが
 
 
  あなたにはふさわしい相手だと悟るには
 
 
  あなたが死人になるまで待たなければならないだろう
  
 
  それほどまでにあなたは死んでしまっている
 
 
  そして死んでいることにも気付かないでいるから
 
 
 
  つまりは生を取り戻すということ
 
  それができなければ
 
  死んでいるも同然だから
  
  
  
  
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿