幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 むねのねつのうわごと

2006-02-05 02:53:40 | Weblog

 
  高台の上に立って
  もっと外れの
  公園の隅の
  ホットドッグを食べた
  誰もいないベンチから見た
  風景の中の海
 
  彼女は宮殿
  伝説の鎧 着て
  誇らしげに披露して回る
  360℃鏡の
  大胆に開いたままの
  胸と腰だけを脱いで
 
  魅了される指は
  湿った茎をたどり
  動きを止め
  発熱する狂信の心臓
  あふれる血管を塞ぐ
 
  脚をひらいたまま
  尻から落下し
  笑われ見つめられるまま
  一瞬
  羞恥をのみ込んで
  そのあと
  ぶざまに悪態つこうにも
  赤い網に絡み取られたまま
  スピーチの演壇の上
 
  最高級のシャンペンに髪を濡らし
  安物のホットドッグ
  唇にほおばったまま
  仰向けになって、しゃべる
 
 
  病床の日々に
  夢見た旅を
  ヨオロッパの村で聞いた
  音楽の調べを
 
  指を折って数えながら
 
  あと生きられる
  残された日数に
  ダイヤモンドの光を託して
 
  毎日見上げる同じ天井
  恢復することのない病
  精神の病、というギフト
  そのときさずかった詩篇の連なりを
  思い出して、
 
  うわごとさながら
  歌う
 
 
 「
 
  聴く小鳥
  歌う歌
  木漏れ日
 
  失われた楽譜
 
  あり得ない映画フィルムに
  映されざるスクリーン
  昨日の記憶でもなく
  明日への希望でもない
 
  ただ
  想いだけが
  むなしく
  連なって
  消えていく
 
  明日が来ないことを
  祈るだけ
 
  」
 
 

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