幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

もう何も

2022-09-12 22:35:00 | Weblog
 
僕はわかっていた
ありえないこと
絶対ありえないことだと

だからぎりぎりまで
平常心を
保っていれば
大丈夫だと
高を括っていた

でも突然
それはやってきた

僕は突然
奈落に堕ちた

その瞬間
自分でわかった
これはもう
どうしようもできないことを
自分で自分の感情を
もうコントロールできなくなってしまったことを

その瞬間から
それは勝手に
ますます僕を
深みに引きずり込んでいく

どんどん深くなって
闇もどんどん濃くなって

もう目の前には
何も見えない

あなた以外
もう何も見えない

もう何も
あなた以外何も

想像もできない

ほかのことを

考えることすらできない

ただあなただけに
飢えを感じ
乾きを感じ

そして
決して報われることのない
永遠の時間のすべて

それはあなたのもの

自分でよくわかっている
これは絶対に
かなえられない

永遠の渇望だということを

あなたは僕に魔法をかけた
あなたの言ったとおり

僕は

破滅するだろう

確実に

バラバラに

解体されるだろう

跡形もなくなるくらい
粉々になって

ついに

僕が消えれば

そのときやっと

あなたを忘れられるかもしれない

ほらわかるだろ!

あなたはついに

僕の全てになった!

そのことを
僕はあなたに
告白する

もう僕は
僕にとって
何の意味もない存在になった

あなたにこそ
意味がある

僕のすべての意味は
あなただけにある