7月5日 編集手帳 読売新聞
{現代川柳に好きな一句がある。〈勝てカープ野球を知らぬわしじゃけど〉(大前タミエ)。田辺聖子さんの『川柳でんでん太鼓』(講談社文庫)に教わった。快挙を祈って血の騒ぐ感覚は、その分野に知識の有る無しとは別物だろう◆似たような血の騒ぎを、おずおずとではあるのだが、感じている。日本からも研究に参加している欧州合同原子核研究機関が、“神の粒子”とも呼ばれる新粒子を発見した、と発表した◆世界の物理学者が40年以上にわたって探しつづけてきた粒子で、その名を「ヒッグス粒子」という。一を聞いて十を知ったふりをして百を書くのに慣れた身にも、飛び切りの難物である◆万物はヒッグス粒子から重さ(厳密には質量)を与えられたという。ビッグバンという大爆発で宇宙が誕生した直後、あらゆる素粒子は光速で飛び回り、質量はなかった。ヒッグス粒子が素粒子を動きにくくし、物質に質量が生まれたと、物理学の理論は説明している。宇宙の謎を解明する上で、ノーベル賞が向こうから押しかけて来るような「世紀の大発見」といわれる◆ 欣快 ( きんかい ) ぞ頭痛がしてきたわしじゃけど。}
我々には理解不能の分野だが、すごい発見をしたらしい。世界の研究者が40年以上探し続けてきたが、実証できなかった。今回、発生する様々な粒子の中にヒッグスがあるかどうかを、二つの国際チームが調べた。ヒッグス粒子を探す実験は、CERNの「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」で行われた。光速近くまで加速した陽子同士を正面衝突させ、宇宙の誕生直後の高温状態を再現。発生する様々な粒子の中にヒッグスがあるかどうかを見つけた。