喜多院法興寺

住職のひとりごと

福島産米が安全が確認され、新米の出荷OK

2011-10-14 06:25:16 | Weblog
10月14日付 編集手帳 読売新聞
 {越後では昔、稲の実が熟することを「ぼなる」と言い表したらしい。漢字をあてれば「吼なる」、 吼 ( ほ ) えることを意味する方言という。越後の人、良寛の逸話集『良寛禅師奇話』という江戸期の書物に「ぼなる」が出てくる。
◆〈師(良寛)…稲ノ吼ユルヲ聞カントテ、終夜、田間ニ 彷徨 ( ほうこう ) セラレシト〉。稲の吼える声が聞きたくて、ひと晩じゅう田んぼをさまよい歩いたというのだから、良寛さんは童心のみならず、探求心も相当なものである。
◆もしかすると吼えるのは稲ではなく、耕作者自身かも知れない。丹精こめた稲の実りに上げる胸中の歓声と考えるとき、「ぼなる」はいっそう味わい深い。
◆原発事故の影響で収穫の歓声を上げられずにいた農家も、これで愁眉をひらくことになるか。放射性物質の検査で福島産米すべての安全が確認され、新米の出荷が可能になった。ひとつ心配なのは、科学的根拠もなしに福島産というだけで食卓から遠ざける心ない風評被害である。
◆〈新米の 其一粒 ( そのひとつぶ ) の光かな〉(高浜虚子)。何ひとつ罪のない、何の傷もない福島生まれの光の粒たちが、悲しみに吼える声を聞きたくはない。}

 秋の収穫で福島県の米作りの人々にとって、今年ほど気がかりで腹立たしい思いの秋はなかったのではないか。今年作付けが認められた福島の48市町村の米について放射性物質の検査の結果、いずれも国の暫定規制値を下回り、これで同県全域の新米が出荷可能になった。しかし、これからも、なお風評被害が心配という。福島産おいしい新米を、安心して食べてあげたい。