我々の業界紙から原稿の依頼があり、「この本と出合って」に投稿。6月号に掲載された。
尊敬する塩野七生さんの「ローマ人の物語1」について書いてみた。
「1992年から毎年1冊づつ書き下ろされ、来年2006年に全15巻が完結する壮大な物語が進行していて、私もその真っ只中にある。塩野七生さんの「ローマ人の物語」だ。
ローマは紀元前753年にロムルスにより建国され、東ローマ帝国が1453年オスマントルコに滅ばされるまで、2200年余り続いた。四方海に守られた徳川幕府と違い、陸続きで蛮族からの襲撃を常に跳ね返し、繁栄してきた秘密はなにか?国家興亡論・文明衰退論議が盛んな中、明快に作家自身の語り口で実例たっぷりに解き明かされる。初刊の「ローマは1日にして成らず」から語り口が素晴らしい。ローマはいきなり帝政になったのではなく、紀元前、王が支配する王政が7代続くところから物語は始まる。
建国から、市民全員参加の市民集会、100人からなる元老院組織ができ、2代目ヌマ王の時代に一年を12ヶ月と定め、年の日数を365日に決めたことなどが興味深く語られる。当時弱小国で、「知力でギリシャに劣り・技術力ではエトルリアに劣り、経済力ではカルタゴに劣る」ローマが何故に勝ち残り生長していったかかが平易な文章で書かれていく。
さて、日本は2003年、新生児が12万9239人となり、5年連続減少の少子化まっしぐらの状態である。参議院予算委員会での質問「高齢者に比べて、子育て支援に関する予算が少ないのはなぜか?」に対し小泉首相は「高齢者の方が政治に関心があって、票に結びつきやすいから」と答弁した。一国のリーダーとしてはオソマツというしかない本音が出ている。日本が明るく輝くために指針を示し政策を実行するのが総理大臣だろうが?若者は将来年金をもらえるとは思っていないし、発展生長の予感がないからフリーターやニートが増えているのだろう。若者に希望を与えるのが政治の責任であり、自民党政治家の保身、選挙に通る為のマツリゴトだったら日本の将来は暗い。靖国神社参拝も票集めのために実施しているのではないかと疑いたくなる。このため、どれだけ中国との外交摩擦・経済交流ロスを起こしているか計り知れない。
一方ローマは王政から共和制政治への転換を行う。首長はプリンチプスと呼ばれ、まさに「ローマ市民の中での第一人者」という意味である。共和国とは一年ごとに選挙で選ばれる人々によって治められ、個人よりも法が支配する国家だったことも披露される。税金の公平性も確立されてくる。
消費税は自分の在任期間中は上げないというヴィジョンのかけらもない突き放した無責任な発言は決して出てこない。官僚を半減させ、小さな政府を創ってからの議論だろう。
ローマは、なおかつ生まれてくる政治課題を克服しつつ、初代アウグストスの帝政へと政治形態を進化させていく過程も面白い。「賽は投げられた」「ブルータスおまえもか」の名言で有名なシーザーが人間味豊かに描かれる。クレオパトラの鼻の高さの話題も笑いを誘う。
一冊目には紀元前420年当時先進国だったギリシャにローマ人が研修に出かけ、治めていたペリクレスの政治理念を学んだことも記録されている。「すべての市民は平等の権利を持ち、名誉もその人の努力と業績に応じて与えられるものであり、生まれや育ちによって与えられるものではない・・・云々。」と極めて理想に満ちて格調が高い。政治の原点が示されている。まさに古きをあたためて、将来の自分の行き方、国の未来の在り方まで示唆してくれる得がたい本だ。」
以上、掲載された文章です。極めて反響が多かったのでブログしてみました。
尊敬する塩野七生さんの「ローマ人の物語1」について書いてみた。
「1992年から毎年1冊づつ書き下ろされ、来年2006年に全15巻が完結する壮大な物語が進行していて、私もその真っ只中にある。塩野七生さんの「ローマ人の物語」だ。
ローマは紀元前753年にロムルスにより建国され、東ローマ帝国が1453年オスマントルコに滅ばされるまで、2200年余り続いた。四方海に守られた徳川幕府と違い、陸続きで蛮族からの襲撃を常に跳ね返し、繁栄してきた秘密はなにか?国家興亡論・文明衰退論議が盛んな中、明快に作家自身の語り口で実例たっぷりに解き明かされる。初刊の「ローマは1日にして成らず」から語り口が素晴らしい。ローマはいきなり帝政になったのではなく、紀元前、王が支配する王政が7代続くところから物語は始まる。
建国から、市民全員参加の市民集会、100人からなる元老院組織ができ、2代目ヌマ王の時代に一年を12ヶ月と定め、年の日数を365日に決めたことなどが興味深く語られる。当時弱小国で、「知力でギリシャに劣り・技術力ではエトルリアに劣り、経済力ではカルタゴに劣る」ローマが何故に勝ち残り生長していったかかが平易な文章で書かれていく。
さて、日本は2003年、新生児が12万9239人となり、5年連続減少の少子化まっしぐらの状態である。参議院予算委員会での質問「高齢者に比べて、子育て支援に関する予算が少ないのはなぜか?」に対し小泉首相は「高齢者の方が政治に関心があって、票に結びつきやすいから」と答弁した。一国のリーダーとしてはオソマツというしかない本音が出ている。日本が明るく輝くために指針を示し政策を実行するのが総理大臣だろうが?若者は将来年金をもらえるとは思っていないし、発展生長の予感がないからフリーターやニートが増えているのだろう。若者に希望を与えるのが政治の責任であり、自民党政治家の保身、選挙に通る為のマツリゴトだったら日本の将来は暗い。靖国神社参拝も票集めのために実施しているのではないかと疑いたくなる。このため、どれだけ中国との外交摩擦・経済交流ロスを起こしているか計り知れない。
一方ローマは王政から共和制政治への転換を行う。首長はプリンチプスと呼ばれ、まさに「ローマ市民の中での第一人者」という意味である。共和国とは一年ごとに選挙で選ばれる人々によって治められ、個人よりも法が支配する国家だったことも披露される。税金の公平性も確立されてくる。
消費税は自分の在任期間中は上げないというヴィジョンのかけらもない突き放した無責任な発言は決して出てこない。官僚を半減させ、小さな政府を創ってからの議論だろう。
ローマは、なおかつ生まれてくる政治課題を克服しつつ、初代アウグストスの帝政へと政治形態を進化させていく過程も面白い。「賽は投げられた」「ブルータスおまえもか」の名言で有名なシーザーが人間味豊かに描かれる。クレオパトラの鼻の高さの話題も笑いを誘う。
一冊目には紀元前420年当時先進国だったギリシャにローマ人が研修に出かけ、治めていたペリクレスの政治理念を学んだことも記録されている。「すべての市民は平等の権利を持ち、名誉もその人の努力と業績に応じて与えられるものであり、生まれや育ちによって与えられるものではない・・・云々。」と極めて理想に満ちて格調が高い。政治の原点が示されている。まさに古きをあたためて、将来の自分の行き方、国の未来の在り方まで示唆してくれる得がたい本だ。」
以上、掲載された文章です。極めて反響が多かったのでブログしてみました。