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相変わらずサワヤカな語り口は変りませんね。
こちらは、超厳格だった、親父さんが亡くなって、一周忌を迎えるまでの、紆余曲折、家族それぞれの気持ちの揺らぎを描いています。
「自分の心も、自分の時間もあったもんじゃない。せいぜいお父さんについていくしかなかった。お父さんを肯定していれば、自分の人生は肯定できるちお思っていた。」妻。83ページ。
死後・かっての恋人に対する手紙・コンドームを書棚の奥に見つける。
生前、付き合っていた女性も現れる。
「あの人が私に隠し事を持っていたことより、あの人に隠すようなものを私が何一つ持っていなかったことかもしれない」83ページ・
異性との交際さえ否定されていた3人の子供たち。姉と兄は、父に反発して家をでてします。妹だけが、父親の良い子で過ごしている。
家を出た、長女・野々が主人公。
広い意味で、ファーザーコンプレックスが強く、異性との関係がうまく作れない彼女の、成長していき、克服していくストーリーですから、読後感が悪いはずはありません。
私自身・この世界から愛されていないという焦り・執焦感。
受け入れても受け入れても私自身が受け入れられていない気持ち。
そういう感情を、乗り越えていくんだから、自分の気持ちの持ちようにも照らし合わせさせてくれる、細やかな手触りの作品です。