「いかさま師」ラ、トウール。

日本経済新聞朝刊文化欄は、１０回シリーズで、各々、書き手が、それぞれのテーマで絵を読み解いている。
とても面白い。
詩人の杉本真理子さんは、まなざしのポエジーというテーマで、この絵を見ている。
絵の右端の身綺麗な男が「カモ」とされているが、最終的に詐術にかからないと判断している。
賭博にふける心は存外モロく、表情を隠すことのできるのは勝者だけだから、、、。
右端の男を除く３人にはシナリオとうりにいかない苛立ちがあり、酒瓶を持つ女は憎らしげに男をにらんでいる。
左端のイカサマ師も、共謀者の女もまた、詐術の罠の淵にいると鑑賞している。
一方、
作家、玉岡かおるさんは「負けん気の女」というテーマで「いかさま師」を見る。
正面にいるマダムの肌の白さやワインを勧める侍女の衣装が鮮やかなのに対し、
後ろ向きに振り返るいかさま師の顔は影の内、悪だくみ気配がより強調されている。
賭け事を戒める意図で描かれた絵だともいわれているが、そんな説教臭さは微塵も無い。
「この坊やから巻き上げてどう分ける？あたし宝石屋に借金があるから絶対勝ちたいの」
退廃と不道徳は、あらがえぬ人の世の試練。
女のまなざしの先が知りたくなる。

それぞれに、「いかさま師」を楽しんでいますね。

スーパームーン２０１５秋。

地球のまわりを楕円軌道を描いて周遊するお月様。
地球に、いちばん近いところを今夜は通るそうです。
通常の１１４％も大きいフルムーンを見ることができる。
幸い、東京は快晴。
我が家の窓から見えたスーパームーンです。
東京スカイツリーの横を登っていきました。
見下ろせば不忍池。
左手には弁天堂のライトアップも見えます。
涼しく、秋の気配濃厚です。

背教者ユリアヌス。

「回廊にて」「夏の砦」「安土往還記」「嵯峨野名月記」いずれも高校、大学時代の愛読書。
辻邦生さんの大ファンでした。
この単行本も昭和４７年１０月３０日に発刊された初版本。
ずーっと、読めないで本棚に置いたままになっていた。
辻さんが、いわゆる洋物、ローマ時代を描いているのに違和感を感じていたこともあります。
文庫本になると３巻にもなる長編。
なかなか手が出せなかったのが本音です。
読み終わって、やはり辻さんが選択した辻さんにふさわしいテーマ、主人公でした。
コンスタンティヌス大帝の弟、ユリウス、コンスタンティヌスの三男。
大ローマ帝国が、内部から腐敗してきた時代。
皇帝として、古代ギリシャ、古代ローマの、精神を再び現ローマに呼び戻し、復活させようとかずかすの税対策を含め改革を目指す。
志半ばで、ペルシャ帝国との戦いに破れ戦死。
３２歳だった。
その精神、志の高さ、純粋さが辻邦生さんの文章で見事に蘇りました。

科学の危機。

先日、牧田愛さんのアトリエ訪問したときに、牧田さんから薦められた本です。
ちょっと難しくって、私には難しく、手強い本だなーーと、感じていました。
読みはじめると意外と集中して読むことができました。
科学発生時の純粋な科学的思考の解明から、時代を経るにつれての変遷。
そして、国家や、企業の意向により、進む方向性が変化してきた歴史視点から課題を浮き彫りにしていきあす。
人類を食料危機から救うため開発した、空気中窒素の固定が、恐ろしいイペリットという毒ガス製造につながっていったこと。
第一次世界対戦での毒ガス使用の悲惨。
そして、原爆、マンハッタン計画の国家関与。
バイオテクノロジー、ヒトゲノム計画。
小保方さん事件にも言及。分析が明快です。
科学思想史をベースに、科学文化論を展開する。
示唆に富んだ本です。

桑田卓郎。

ますます、カブキまくる桑田卓郎さん。
今年正月の、菊池智美術館での、銀彩の抹茶茶碗も異才を放っていたけれど、
この小山登美夫ギャラリーでの作品も、アッと驚く華麗さ。
これで、お抹茶飲むのは少し難儀かもしれない。
金彩の水滴が、ショッキングピンクの地に実にマッチしている。
楽しくなってくる茶碗。
ますます進化してるなーーー桑田さん！！！

吉村美栄子さん。

現在の山形県知事、吉村美栄子さん。
米沢藩藩主、上杉鷹山の言葉「成せば成る」
を、周囲の協力、支えがあってのことだが、意思のあるところに道は開ける、、、のだと、座右の銘にしています。
山形県大江町出身。
母親からは、「ご飯は１粒たりとも残さないように、１粒１粒に神様が宿っているから」と薫陶を受かる。
当時は、１粒の米粒のどこに神様がいるのだろうと不思議だったが、今なら、命のことを言ってるいたのだと判る。
１粒の樅を植えると、６００－１０００粒のお米がとれるのだから、、、、、と、生い立ちからドイツ旅行のときの気付きなどが掲載されている。
すごく県政で力を発揮している。
滋賀県知事だった嘉田さんといい、女性の活躍が目立ちます。

ボロテリーさん語る。

１３歳で渡米した錦織圭選手の成長をずっと見続けてきた８０歳になるニック、ボロテリー氏。
錦織選手が練習拠点にしているIMGテニスアカデミーの創設者です。
昨年準優勝で、今年は、初戦敗退。
厳しい現実です。
錦織についてはセカンドサーブも効果的になってきたし、積極的にネットにも出るようになった。
体のバランスがいいからボレーも上手いと評価します。
一方、テニスはメンタルに加えてハートが強くないと勝てない。
メンタルとは戦術眼を指し、ハートが強いとは闘志があるかどうか。
食事中でも睡眠中も「僕が王者だ」
と、思うようでないと。日本人が最も弱い部分。
ドロップショットだって、バウンドしてネットに戻るくらいでないと、ジョコビッチのように効果的に決まらない。
４大大会で勝つには、７回勝つ必要がある。
そのうち２勝をビッグ４クラスからあげなければならない。
それがどれだけたいへんなことか。

どうぞみなさん圭を見守ってください。と、言ってます。
厳しくも、温かいボロテリーさん。