京都府京丹後市丹後町筆石
立岩を後にして、昼過ぎに訪れた屏風岩の駐車場に向かう。
直線距離にして1キロも離れていないのですぐである。
駐車場に着くと、夕焼けを狙うカメラマンが一人。
更に駐車場から下を見ると、昼に撮影した畑のそばに5、6人のカメラマンがいる。
どうも思っていたより夕陽の撮影場所として有名なところのようだ。
皆さん非常に高価そうな機材でシャッターチャンスを待ってらっしゃるので、壊れかけの三脚と安い一眼の私はちょっと気後れしそうになるが、コンデジの時から「何くそ」と思って撮ってきたから、今回もまあ気合いを入れてみたりする。
ただ、人と同じような写真を撮るのは面白くないので、後で昼に訪れた海辺へ降りてみようとも思う。
色はやや濃いめの設定で、しかもアンダーで撮っているからこの色。
肉眼では、まだ西日に近いような色だ。
他のカメラマンの方々を見ても、時々、試し撮りをされている程度で待機状態。
太陽を入れて更にアンダーで濃い色に。
というか、雲が邪魔で綺麗な夕陽は見られそうにない。
待機されている人たちを尻目に、私は何枚も写真を撮る。
そのうちに、水平線が輝いていることに気付く。
雲の向こう側、水平線の辺りでは直射光が降り注いでいるのだろう。
シャッターを押しているのは私だけのようで、他の人は気付いていないのか、それとも求めるものが違うのか。
やがて手前の雲も切れて、海面に橙色の帯を描く。
本格的な夕焼けはこれからなのだけど、海辺に向かうことにする。
ここで落日を待つべきでは、と少し悩みはしたが、やはり自分だけの夕暮れが見たい。
海辺までは徒歩10分ほど。
その10分の間に、海の色も空の色も大きく変わっていた。
少し離れたところに水遊びをする若い男性が二人いるのみで、カメラマンも見当たらない。
夕焼けというほどの派手さは無いけれど、これはこれでいい。
と思ったら、最後に少し、太陽が顔を出してくれた。
太陽の色よりも、水面に映る、空や雲の色に惹かれる。
空の青い部分は深みを増していく。
もうすぐ宇宙を描き出すんだな、なんてことを思う。
昼は、空と海が青さを競って対抗してるみたいだったけれど、今は空を海に優しく溶かし込んだみたいだ。
雲のせいで水平線に沈む瞬間は見られなかったが、空と海の色の変化を見ていられるだけで満足。
太陽は沈んで、橙色が薄れて青みが増していく。
夕焼けではなく、夕暮れの気配になる。
ずっと海は凪いでいたけれど、それでもやはり夕凪というべき優しい雰囲気に満ちてくる。
夕陽や夕焼けよりも、私はこの時間帯の空の方が好きだ。
反対の東側を見れば、夜の気配も迫っている。
淡くなった空の光を映し出す海面は、まるで水底から光を放っているように見える。
やがて、向こうに見える岬に光が灯り始めた。
沖合いには漁火が輝き出す。
写真を撮るにはほぼ限界なので、駐車場所に戻ることにする。
暗くなった道を、やや急ぎ足で歩いていくと、道路脇の叢から夏の虫が賑やかに歌い出す。
田圃を見渡す場所に出れば、涼しくなってきた風に乗って蛙の合唱が流れていく。
それらに耳を傾けながら、海と漁火を見る。
歩調を少し緩めて、僕は僕の好きな時間に浸ることにした。
撮影日時 110714 18時45分~19時45分