神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

松尾神社

2010年06月16日 | 再訪

京都府亀岡市西別院町犬甘野


ここを訪れるのは四度目で、以前にも紹介している。
参道が長く、緑濃い。
そこを歩く度、この木とこの枝を伐ると、もっと奥行きの感じられる、素敵な参道になるだろうなぁ、などと夢想したりした。
べつに庭師の方のような技術や知識があるわけではないけれど、参道の手入れをしてみたい、と強く思わされた場所だった。

前回の参拝から二年以上が経過して、久しぶりに再訪したくなった。
雨の降る日だったが、まだここの雨天の風景は見ていないし、ちょうどいいと考えて神社に向かう。
神社から離れた広い場所に車を止め、傘を差して歩く。
雨に潤う新緑の参道を思い浮かべながら歩けば、やや強い雨も苦痛でなくなる。



神社前に着くと、何か違和感を覚える。
天気の違いによる印象の差かと思ったがそうではなく、天気が悪いにも関わらず妙に明るいからだ、と気づく。
ああ・・・と思わず声を発してしまいそうになったのは、鳥居周りから、その奥へと続く参道にかけて、相当数の木々が伐採されている様子が窺えたからだ。



参道に入り、鳥居を振り返る。
左手は、以前は向こう側が見辛いほどに木々が密生していて、確かに雑然としているようにも感じられたし、それ故に手入れしてみたいなんてことも思ったのだが、今はあからさまなくらいに見通せて、ちょっと悲しくなってくる。
杉、檜、椿などの一部を除いた常緑樹、それから落葉樹の殆どは伐られてしまったようだ。
それなりに太い木も切り株だけになってしまい、期待した新緑の潤いも感じられない。
でも、皮肉なことに、雨脚が強まって辺りが煙ると、隙間だらけになった木々の間から入り込む光は程よいものとなり、森厳とした深みのある参道を描き出した。



伐られた木や切り株があちこちに見られる。
良くは判らないけれど、庭師が入った直後の庭というのは、随分とバッサリいったなぁ、と思うことが多い。
結果的に見れば、その方が庭の美しい期間を長く保てるのだろうし、現時点で丁度いい具合にしようと少し手を入れたところで、すぐに元の雑然と茂った状態に戻るであろうとは思う。
参道は庭とは違うし、庭園的な美的感覚だけで語るわけにはいかないにしても、それでも、もう少し太い木や落葉樹も残してほしかったと思う。



二の鳥居辺りも、やはり相当数の木が減ってしまっているようだ。
緑に包まれているといった感覚になれた場所なのに、殺風景な空間になってしまった。
ただ、ここも雨のお陰か、美しいと感じさせられるものは湛えている。



二の鳥居と拝殿、その向こうには三の鳥居が見える。



三の鳥居から四の鳥居と本殿覆屋。
右手には磐座へと続く石段がある。



前回の撮影は7月で、この辺りは苔の豊かなところだったが、今年はどうなるだろうか。



本殿前から振り返り、見上げる。



同じく本殿前から狛犬を。
以前はここから磐座の存在がわからないくらい緑が茂っていたが、今はすっかり見通せるようになった。
鬱蒼として、秘められた場所という感じだったのだが。





磐座が纏う苔や羊歯も減っていくかも知れない。
もちろん長い目で見れば、また木々は育って、また苔も羊歯も増えていくのだろうけど、やはりこういう光景は寂しいものだ。


2万5千分1地形図 法貴
撮影日時 100507 10時10分~11時10分

駐車場 軽なら神社の傍に停められるが路駐。普通車は離れたところで道路の広い場所に駐車したほうが無難。
地図


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19 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Jun)
2010-06-16 07:03:38
むき出しの磐座、ちょっと気の毒ですが、その姿が見られたことは、私には嬉しいです。
最近蔓植物がかなり増えているので、それが侵入してこないことを祈ります。
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Unknown (幽黙)
2010-06-16 07:35:57
確かに以前の画像と比べても
天候が悪いにも関わらず明るい雰囲気に
なってしまっていますね
間伐のようなことは維持の上でも必要で
ある程度のルールはあるのでしょうが
雰囲気を求めて訪ねるものには
ちょっと寂しいものになってしまいますね

ネットで情報を得て良さそうだと出かけたら
すっかり雰囲気が変わってしまっていたりすると
がっかりしてしまいますものね

愚生が訪ねたい鳥取のあちこちは
ネットに情報がたくさんあるので
良さそうだという気持ちで出かけるので
できれば雰囲気が損なわれていないことを
願うばかりです
返信する
Unknown (hiro1jz)
2010-06-17 08:22:18
>Junさん
信仰の場という視点、維持管理からの視点、
撮影者や風景を愛でる視点といろいろあって、
どういった形がいちばんいいのか、難しいところです。
ただ、木は大きくなったほうが、林床も含めて安定した状態になるので、
少なくとも潅木以外は残しておいてほしかったところです。
環境の変化は、外来種や蔓植物が蔓延る原因にもなりますし、
余計に維持管理に手間がかかってしまうといったこともあるでしょうね。


>幽黙さん
植林地帯に於ける間伐は確かに有効ですし、
ここも植林ではあるのでしょうが、
いわゆる造林、林業の森ではないのですから、
点在する程度の落葉樹や、それなりに育った常緑樹は、
やっぱり残しておいてほしかったです。
参道右手の疎らになってしまった木々などは、
かなり脆弱に見えて、台風が来たら倒れそうにも思えます。

ああ、鳥取まで遠征してネットの情報と様変わりしてたら嫌ですねぇ。
私はネットの写真を見て、自然度の高そうなところを狙います。
って、いつものことですね。

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こんばんわ (era)
2010-06-17 21:59:30
これだけみたら良い神社ですけどね。ただ再訪って
のも考えものですね。伐採は必要なの理解できま
すけどね。以前hiro1jzさんが紹介してくれた熊野
神社に比べれば気を使った間引きなんでしょうけ
ど・・・う~ん少し寂しいもんですね。

へ~神社の方が意外なヒットあるんですね。滝は
水量でイメージ変わるんでしょうけど風景的には
そんなに変わらないんですかね?
しかしhiro1jzさんも、あと二回・・・執念ですね。

たしかに三河でも北部の山の方は魅力あります。
少し離れていますが猿投神社は文句なしでした。
工業地帯は、どこもイマイチですね。
梓水神社は国史現在社の論社です。一番有力なの
は大宮熱田神社という梓水神社から比較的に近い
場所なんですよ。
梓水神社は上高地に行く途中の場所で何もない場所
だと思うんですよ。それなのに、あの社殿!
長野の底力を感じる神社です。来週行こうかなぁ?

ははは。hiro1jzさんが播磨を断念したのは幽黙
さんが原因なんですね。たしかに、そんなときあり
ますよね。
え!播磨は車渋滞する場所が多いんですか!幽黙
さんのブログにノックアウトされて来月休み取れた
ら播磨行こうと計画しているんですけどね。
でもhiro1jzさんの播磨みたいですね。ちなみに
幽黙さんの掲載で播磨を行きを止めた神社って
何処なんですか?気になりますね。
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Unknown (hiro1jz)
2010-06-18 15:23:52
うわ、書いた内容が消えてしまいました・・・。

確かに再訪は考え物ですよねぇ。
伐採されてたり、車道が作られたりするのと、
木々の成長速度を考えると、
数年ぶりに再訪したって、悪くなってる可能性の方が高いですもんね。
でもまあ、あの熊野よりはずっとマシです。

考えてみたら三河の北端って長野と接しているんですよね。
情報も少ないみたいだし、何となく穴場のような気もします。
梓水は国史現在社の論社でしたか。
どうりでただの田舎の神社とは違うと思いました。
お、紅葉まで待ちきれませんか。
思い立ったら吉日ですよ。
来週は雨ばっかりみたいですけど。

http://blog.goo.ne.jp/kue-biko/e/659fc891e1ecf69e10d150c4099daea2
の後半に出てくる神社が、地図で見つけて行きたかった神社なんです。
幽黙さんは早春に行かれたみたいなので、
緑いっぱいの時期に行くのも面白そうではあるんですが。
渋滞というか、よっぽどの山間部を除けば、基本的に車の多い地域だと思います。
道もけっこう入り乱れていて、土地勘の無い者には地図が手放せない感じです。
普段、計画の段階で目的のエリアまでの道順は頭に入るんですが、
播磨へはしょっちゅう地図を見なきゃいけない気がして煩わしいんですよねぇ。
こういう地域は、カーナビがあるといいんでしょうが・・・。
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こんばんわ (era)
2010-06-18 22:03:13
あの熊野は衝撃でしたね。あのクラスは、そうそう
ないでしょうね。メジャーな神社は人気でてきた
ようなので再訪すると変わるはあるんでしょうね。
我々が行くような場所では、あまり変化がない方
が望ましいんですが安全等の問題で、ある程度は
覚悟しないと駄目ですね。
ここは、まだ上品な変化な気が・・・実際に知って
いると驚くんでしょうね。

奥三河は穴場ですよ。奥三河の花祭りのエリアは
式内ないんですが行きたいエリアですよ。行くの
大変なんですけどね。
梓水は凄いですよね。とても奥地あるとは思えない
社殿ですしね。梓水神の有力社の大宮熱田も凄い
んですよね。樹齢千年の木もあるんですよ。
長野と長野近辺は恐ろしい場所です。

なるほど!さすが幽黙さんですね。たしかに雰囲気
伝わる構成ですね。神社もイワクラも木も凄い。
播磨は混むんですね。でも近場は攻めた方が良い
ですよ。自分安房に行ったんですが自分の家から
一時間で行ける場所だったんですが、いままで無視
していたんですが驚くような天国でしたよ。
hiro1jzさんには播磨の奥地とか写真撮ってきて
欲しいですね。
あと鳥取待ってますよ。幽黙さんの鳥取みて頭
がクラクラしてきたんですよね。次はhiro1jzさん
の鳥取ですよぉ。
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Unknown (幽黙)
2010-06-18 22:15:49
石上さんでしたか~(^ ^;
まだ今のデジカメとか
三脚を使う前だったので
写真が粗いですねぇ(- -;
hiro1jzさんならもっともっと
周辺の美しさを堪能できる
写真を撮ってくださりそうです
返信する
Unknown (hiro1jz)
2010-06-19 05:58:13
>eraさん
安全性の問題は確かにありますね。
お年寄りには危ないと思われる石段も多いですし。
補修などはやむを得ないと思いますが、
木々を見る目、というのは、けっこう人によって温度差があるような気がします。
すっきり整然とした陰の無い空間、
というものに価値を見出す人もいるでしょうし・・・。

あのエリアは式内無しなんですか。
でも、三県に跨る独自の文化圏、といった感じで面白そうですよね。
大宮熱田で調べていたら、伊那市にある熱田神社を発見。
全然関係ない神社みたいですが、こっちも社殿がいいなぁ。
長野は全般的に自然度が高いのに、そこそこ凝った社殿が多いので、
自然と建築の両方が楽しめますよね。

ここは地図で見ると、物凄く惹かれる場所にあるんですよ。
ですから妄想を膨らませて、素晴らしい光景を頭に描き、
行く機会を狙っていたわけなんですが(笑
近いのに時間がかかるのが問題でもありまして、
播磨でもいちばん行ってみたい宍粟辺りになると、
丹後の方が早く着けるんですよねぇ。
幽黙さんの鳥取見て、鳥取の期待度が更に高まってきました。
天気も雨が多いし、苔も期待出来そうです。
兵庫県境に近いところばかり周る予定なので、
幽黙さんとは、殆ど重複しないと思うのですが・・・。


>幽黙さん
ここはまだリンクさせて頂く前に掲載されたわけですが、
見たかった場所を知ることが出来てありがたいと思いつつ、
「ぐおっ」と声を上げそうになったというか・・・(笑
当時から思ってましたが、手持ち撮影とは思えないですね。
改めて見ると、今くらいの時期に撮ってみたいなぁと思わされます。
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Unknown (幽黙)
2010-06-19 09:58:20
確かに宍粟方面となると
ちょっと廻り込む感じになるので
大阪からですと
中国自動車道利用が現地最寄り
ということになるのでしょうか

鳥取の雰囲気が
あそこまで濃密とは
実際思っていませんで
現地で我が目で確認して
しみじみと美しさを
堪能できた感じです
hiro1jzさんの鳥取が
心待ちですよ

hiro1jzさんの訪問地には
こちらも毎度
喉からのうなり声が
出ているといえば出ているわけで…(笑)

石上神社
もう一度行きたくなってきました…
当時は三脚を使っていなかったので
自分の姿を入れて撮るときは
石やちょっと斜めな場所に立てかけたりとかして
おおよそのアングルで撮っていたので
10枚くらい撮ったりイラッとして諦めたり(笑)
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どうもどうも (era)
2010-06-19 22:08:18
参拝者の安全に考慮は、いたしかないと思うしか
ないですね。それより新しい施設をガンガン作る
ような某神社とかに比べればマシ・・・と思うし
かないですね。パワースポットがブームだから
そんなふうに変わる中堅メジャー神社が増える
かもしれませんね。

長野は江戸時代に寺社建築の二大流派がありまし
て、その二派が競ったおかげで長野の神社建築は
彫りが深いんですよ。特に諏訪系は彫りが深いと
神主さんが行っていましたよ。
伊那も行きたいんですよね。伊豆の式内の伊那下
神社は信濃の伊那から来た伊那部が創建したなん
て話あるから調べてみたいんですよ。
奥三河の花祭りも行きたいし・・・時間・金。

なんとなく播磨に行くより丹波は気持ちわかるん
ですが最近は幽黙さんのおかげで播磨に目覚めた
ので播磨もお願いしますって感じですね。
鳥取は参りましたね。あのディープさは想像を
超えていましたよ。hiro1jzさんと幽黙さんの
行く場所が重ならないなら余計に楽しみです。
ホント苔も良さそうですね。溜息。
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