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社会学的前提の再考?

2018年08月03日 | 論文・業績
少し前の論文ですが、拙稿を紹介させていただきます。

 産業革命・資本主義化・労働者階級の形成:社会学的背景としての「19 世紀史観」再考                                                                                                                                                                                                                

 論稿の意図としては、昨今の歴史研究において、これまでの19世紀観を再考する研究がされており、この時期に学問として成立した社会学も、そうした成果を参考にした上で、社会学の発生の様相を再考しなければならないのではないか? というものです。

 具体的には、最近のイギリス史研究では、産業革命は、とりわけその当初の成長は、たいしたものではなく(およそ3%)、また19世紀前半までは、多くの領域でそれ以前の生産体制を維持していたという。我々が今日イメージするような急激な成長は、19世紀後半以後のことであったらしい。

 それにつれて、社会諸関係の転換も強いられ、また人々の側からは新しい社会関係の構築(組合のような)が、様々な弾圧にもかかわらず、試みられた。1848年の仏の二月革命を契機に、様々な国で「諸国民の春」と呼ばれる事態(人々の、生活改善や権利要求の蜂起)が見られたが、革命勢力の伸張を恐れた各国政府は、19世紀後半には、妥協策として労働組合の存在を認めたり、革命を簿防止する目的で社会諸政策を推し進めたのである。

 私が考えるのは、上のような歴史的経過を見ると明らかなのは、資本主義の発展や経済成長は決して必然的なものだったのではなく、他方で、経済成長に伴って人々の労働環境・賃金・生活環境などが自然に改善したのではなく、それは彼らの組合運動などの絶え間ない犠牲・努力の結果、もたらされた成果なのであること。

 この点を踏まえれば、経済成長がそのまま多くの人々に富の分配をもたらすと考えることが、いかに楽観的であるかがわかる。そして、現代の我々が直面している状況は、そうした「楽観的すぎる経済主義」からもたらされたものと言えるのではないだろうか?

 追記
 リンク先が変わったので変更しました。

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