a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

仏人の友人と数年ぶりに会って……

2018年04月25日 | etc.
 仏人の友人と数年ぶりにあって、夕食に出かけた。

 で、モロッコ料理のレストランへ。



 彼とはかれこれ15年ぐらいのつきあいになるが、私の仏人の友人の中では、一番仏人らしい仏人に入ると思う。ただ、日本で生活して長いので、仏人の感覚ともズレはじめている部分はあると思う。

 さて、その彼と、仏国鉄のストライキについて話題になった。彼の見解は、いまの仏では特権を持っている労働者が多いから、もっとmodernisationを進めるべきだ、というもの("modernisation"は、現大統領マクロンのスローガンで[以前から使われていたが]、内容としてはネオリベ化である)。

 日本にいて、自営業の立場で仏語を教えている彼からすると、仏の労働者、とりわけ公務員の立場は過度にプロテクトされている、と考えるのだろう。ただ、仏の公務員の労働条件を下げたところで、それが一般の人々の利益になるとは限らないのだが。それから、「公務員の特権」を批判しつつ、マクロンの税制改正で、富裕層に減税をしつつ、中間以下の層には負担増になる政策を推し進めているのを、批判しないのは、少し奇異である。

 が、彼は日本に住んでいるので、仏での税制改正には直接不利益を被らないから、彼がこれを批判しないのは、わからなくもない(他方で、自分にも利益をもたらさない「公務員批判」に与するのは、「合理的計算」を基準に考えると不思議である。他方、心情的には、自分と変わらない層で、自分よりも保護されているのを見ると心情的に批判したくなるのかもしれない)。

 でまあ、彼の意見はそうしたものなのだが……。

 私のマクロンに対する考えは、「彼は仏を日本のような国にしたいのだろう」と考えている。この方向性には、私の友人も同意していた。
 ただし、彼は、「仏が日本のようになることはない[その前に様々な抵抗があって、そこまで進めることは不可能]」という前提で、マクロンの推し進める政策を支持していた。

 それについて言えば……。私の考えは悲観的である。仏の労働組合は、いまで強い影響力があるといっても、組織力は落ちつつある。また、他の国に例を取ってみても、ブレア政権下で労働党が、社会政策を推し進めつつネオリベを促進させ、公共サービスを全てうっぱらったことを考えてみても、仏だって現状を維持するのに、それほど強固な基盤があるわけではないと考えている。

 日本を例にとっても、5年ぐらいの政権の期間で、官僚体制がああも簡単に権力におもねるようになったのは、なんとまあ「変化」の速いことか。そう考えると、「強力な権力」の出現と、それが推し進める「立身出世」コースによって、官僚制度もそうした権力に従順になっていくだろうという予想は、簡単にできるのではないか、そんなことを考えたのだった。

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