a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

ニート、っていうか若年層の失業と階級社会

2006年04月22日 | 社会問題
若者が『社会的弱者』に転落する

洋泉社

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 今年になって、文化と格差に関する講義をしているのだが、要は階級社会論をやっている(というかそうした内容に)。しかし、いわゆるニートは階級の問題と不可分なのだが、これが日本だと切り離されてしまうのが不思議。その中で、この宮本先生の著作は、ヨーロッパの様々な事情に触れていて素晴らしい。ただ、外から見た場合の状況と、実際に内側から見た状況というのは異なるから、その点は勘案してみなければならないだろうが。

 例えば、私が滞在していた仏では、カルチエ・ソンシブルと一般的に呼ばれる地区があり、警察権力さえ容易には入って行けない地区がある。そこでは、もはや教育制度云々の問題ではない(なお昨年11月に起きた移民系と思われる住民によって起こされた暴動はそうした地区でのこと)。レイシズムの調査研究を行っているミッシェエル・ヴィヴィオルカ(トゥレーヌの一番弟子)も、こうした地区に関して調査を行っているのだが、実際のところ欧系の彼がそうした地区に入ることなどできないので仲介者にインタビュー調査を行ってもらっている。要は実情はそうしたものだったりする。

 NHKbsで姜尚中がそうした地区に「突撃取材」をしていたが、例に漏れず、住民からいきなり瓶を投げつけられていた。格差、というか階級社会の行き着く先はそうした実情なのだが、日本で現在議論されている格差問題には、そうした実情を認知していないのが私には不思議な気がしてならない。(ちなみに、先日撤回されたCPEへの反対運動を行っていた仏人と、暴動を起こしていた仏人は、完璧に階級が違うのでお気を付けを)

下流社会 新たな階層集団の出現

光文社

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 そうした階級社会の実情を認知せずに書かれているのがこの本、とも言えるかも。

 それからこれは別の問題なのだが、先日労働系の研究をしているある女性と話をしていると、話が一部かみ合わないことを発見。彼女の問題意識のなかでは、どうやら「ニート問題」と「格差問題」は別問題らしい。しかし若年層の無業者の問題が階級問題と関連づけられていないのは日本だけだろう。


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