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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』を観る

2017年02月11日 | 映画
エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン
クリエーター情報なし
メーカー情報なし



 あるレストランのドキュメンタリー映画を見たので、それについて。

 このレストラン、毎年、全く違いメニューを出している。レストランそのものは、半年間のみ開かれていて、残りの半年で新しいメニューの「開発」をしている。

 この「開発」というのが、ミソで、新しい料理を作り出すために様々な素材を試し、また調理方法も真空パックを用いるなどして素材に味を染み込ませたり、液体窒素などを使い、氷点下100以上に凍らせたりする。

 この開発は、当然、試行錯誤の連続で、それを実験のようにあれこれ試し、その記録(料理の温度、素材のグラム単位の量、加熱時間など)をつけていく。

 ただし、料理中心の映画は、それが如何に食されるかを、映像に納めていない。

 まあ、シェフの会話から、料理については推測できるのだが……。一口で終ってしまうような品が、次々に出てくるようで、メニュー全体で4時間ぐらいの時間がかかるらしい。で、一品一品が、それまでにない前衛的な調理方法で作られた前衛的な料理になっている。

 ただ、それを食べる人たち=レストランの客は、ほとんど映っておらず、まあ超がつくお金持ちなのだろうが。ちなみに、このレストラン、予約のみの客しか受け入れず、そしてシーズン中の席は、すぐ埋まってしまうようである。映画の中のシーンで、今シーズンの予約が取れず、来シーズンの予約を取ろうとしたが、来シーズンの予約はまだ受けていない、という電話での会話があった。

 ちなみにそういう客層を映画の中で映していたら、どういう映画になっていただろうと思わなくもない。多分、観る人の観る気をそぐような映画になっていたのではないかと、勝手に推測するが。

 他方で、料理の「開発」については、ものすごく勉強家で、日本の柚子を柑橘系に使い、独特の味を評価していたり、カクテルの器に日本酒の盃と思われる器を使ったりして、ものすごく趣向を凝らしているのはわかるのだが。

 無論、以上のことは映画そのものの中身のことではなく、映画外の主題なので、気にすることもないと言えば、そのとおりなのだが。ただ、私としてはものすごく気になってしまったのだった。

 映画の周辺の題材については、料理の「開発」は一部のシェフが行うのだが、シーズン中に雇う料理人は、どうやって調達しているのだろうか? あるいは給仕についても、それだけの金持ちの客を相手にする以上、「バイト」のような人員でカバーできないはず。

 まあ、それだけの有名店で働いたという経験があれば、シーズンオフの時期にも、職探しには困らないと予測できるし、そうしたキャリア・トラックがその業界にはあるだろうと思われるが。それでも、シーズン毎にスタッフが総入れ替えになるのだとしたら、なおかつ高水準の料理やサービスを安定して維持できるのだろうか? ということを考えたのだった。


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