犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

安冨歩・本條晴一郎著 『ハラスメントは連鎖する』

2009-10-28 00:47:18 | 読書感想文
p.202

大学や企業のハラスメント相談窓口には加害者が先回りして駆け込むことが多く、貴重な人的資源が無駄にされている。ハラスメント被害者は罪悪感を覚えているので、相談窓口に行くことをためらうが、加害者はこういった機関をためらうことなく悪用する。


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(具体例)

某大学教授: 私、実はね、研究室の女子学生からセクハラの言いがかりを受けて、そちらに訴えられそうになっているので、予め真実をお話しておこうと思いましてね。

セクハラ相談窓口: はい。

教授: 私も誤解を招くような状況を作ってしまった落ち度はあるんですけれど、何の下心もない親切心が、こんな恩を仇で返されるような結果になるのは情けなくてね。私は、夜だから彼女を車で送っていこうと、それで真っすぐ帰るのも何だから、ドライブがてら高速に入ったんですよ。そしたらね、彼女が何か不安そうな態度を示したんで。

窓口: ええ。

教授: 私はね、その態度が何のことだかわからなくて、疑われたこと自体心外だから、もう帰ろうと思って高速を降りたらホテル街に入っちゃって、誤解を解くために「家まで送って行きましょう」と言ったら、その「行きましょう」という言葉を「ホテルに行きましょう」と私が言ったことにされちゃって。

窓口: ああ、そうですか。

教授: それで、ホテルに連れ込まれる危険を感じたと、彼女に勝手に誤解されちゃったんですよ。これがね、悔しいんですけれど、彼女のこんな変な言い分、誰も聞かないと私は思ってたんですよ。そしたら昨日、隣の研究室の准教授が私に電話をしてきたんですよ。これは一体どういうことかと。

窓口: はあ。

教授: そんな、私は「送って行くよ」って言ったのに、「ホテルに行こう」と言ったなんてことはあり得ないことなんです。誰が考えたって。それを、彼女がそういう作り事をしたということで、その准教授が後ろから糸を引いて、この話を大っぴらにするぞと脅迫して、私を大学にいられないようにする魂胆だと思ってるんですけどね。

窓口: ああ、そういうことなんですか。

教授: いや、よかった。あなたにご理解を頂けただけでね。こういうことは全然信用されなくて、車の中でセクハラにわたるような会話をしたとかしてないとか、そんなこと録音もしてないし、してたら変ですし。それなのに、彼女が准教授にどんな手を使って近づいたのかどうかわからないけど、彼女の言うことは真実で、私の言うことは嘘だとされちゃったんですよ。

窓口: あー、ひどいですね。

教授: それで、私は今、論文の執筆も手につかなくて大変なんですよ。それよりも何よりもね、セクハラをしたなんていうのは教授として不名誉なことじゃないですか。ホテルへ入っちゃってからならね、私だって弁解しませんよ、そんなのは。彼女はね、突然車から逃げ出して、私に罵声を浴びせたんですよ。私が彼女をホテルに誘いこむんだと勝手に邪推してね、これはどう見ても濡れ衣でしょう。

窓口: はい、わかりました。

教授: 私はもう、悔しくてしょうがないんですよ。彼女はその後も男をたぶらかして、嘘の痴漢被害を訴えて恐喝したりしてるんでしょう。まあ、こっちも怒り心頭でしたけど、私に個人的に恨みを持ってる誰かの仕業か、たぶん准教授が私を追い落とそうとして、論争で負けた腹いせに私を失脚させようとしているのか、単なる嫌がらせなのかその辺はよくわからないですけど。

窓口: そうですねえ。

教授: 大変助かりました。これで無罪が晴れることになります。彼女に嘘で固められちゃったものを、准教授が信用しちゃったものですから、誰が恨んでるのか知りませんけれど、今は気が気でないんですよ。辛いですよ。日本の将来を担っている学者が、セクハラ教授ってことで有名になってしまったら、もう大学にも家族にも申し訳ないし、恥ずかしいし、世間様にいちいち説明するのも大変だし、悔しくて夜も眠れない毎日ですよ。

窓口: はあ。

教授: とにかく私は全くの冤罪ですので、もし彼女がこの窓口に相談に来て事実を脚色して話してきたら、騙されないように気をつけて下さい。彼女は、誰の入れ知恵か、具体的かつ詳細に作り話をしてきますので、気をつけていないと本当に騙されます。虚偽に満ちていることは誰の目にも明らかなんですけどね。あなたのお名前は○○さんですね。あなたは真実を理解してくれたと聞いておきます。またよろしくお願いします。

窓口: はい・・・

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