※浮世博史(ウキヨヒロシ)「もう一つ上の日本史、『日本国紀』読書ノート、近代~現代篇」(2020年)「大東亜戦争」の章(235-314頁)
(68) 百田氏の誤り①:「石油を奪う」ことは明らかに「侵略」である!「共存共栄」(「大東亜共栄圏」)でない!(268-270頁)
I 百田尚樹『日本国紀』は一方で、「日本がアメリカとイギリスに対して同時に開戦したのは、オランダ領インドネシアの石油を奪うためだった」(百田385-386頁)と述べる。「石油を奪う」ことは「侵略」である。ところが他方で、百田氏は「『大東亜戦争は東南アジア諸国への侵略戦争だった』と言う人がいるが、これは誤りである」(百田391頁)と述べる。
I-2 しかし、これは矛盾する。「石油を奪う」ことは明らかに「侵略」である。百田氏は誤っている。他国の石油資源を奪うことは「侵略」だ。(浮世268頁)
I-3 資源を「奪う」ことが日本の目的だったと百田氏は述べるのに、同時に「『大東亜共栄圏』は・・・・政治的・経済的な共存共栄を図る政策だった」(百田392頁)と述べるのは矛盾し、誤りだ。(浮世270頁)
(68)-2 百田氏の誤り②:政府(そして軍)も「気付いて《いた》」のに「輸送手段に対する考え方が甘かった」!
I-2 百田氏は、オランダ領インドネシアのパレンバンの油田を占領したと聞いた東条英機首相が「これで石油問題は解決した」と言ったことについて、「彼も政府(そして軍)も油田を占領することと石油を手に入れることは同じでないということに気付いていなかった」(百田389頁)と述べる。
I-2-2 だがこれは百田氏の誤りだ。政府(そして軍)も「気付いていなかった」のでなく、「気付いて《いた》」のに「輸送手段に対する考え方が甘かった」のだ。
(68)-3 百田氏の誤り③:「輸送船の護衛」に関し、「日本海軍の駆逐艦は哨戒能力が低い」!
I-3 かくて百田氏も言うように、「インドネシアからの石油などの物資を運ぶ輸送船が、アメリカの潜水艦によって次々と沈められるという事態となる。」(百田390頁)
I-3-2 「真珠湾攻撃の3時間後、アメリカ海軍は54隻の潜水艦を東南アジア方面に派遣し、すでに日本の補給線を叩く作戦を開始していた。1942年までに日本は96万トンの船舶を喪失してしまった。」(浮世269頁)
I-3-3 これに対し百田氏は「海軍は輸送船の護衛など一顧だにせず、聯合艦隊の誇る優秀な駆逐艦が護衛に付くことは一切なかった」(百田390頁)と述べる。
I-3-4 百田氏は「優秀な駆逐艦」と言うが「輸送船の護衛」に関する限り、これは誤りだ。「日本海軍の駆逐艦は哨戒能力が低い」。「喪失船舶数を上積みするだけの結果になったかもしれない」。(浮世269頁)
(68) 百田氏の誤り①:「石油を奪う」ことは明らかに「侵略」である!「共存共栄」(「大東亜共栄圏」)でない!(268-270頁)
I 百田尚樹『日本国紀』は一方で、「日本がアメリカとイギリスに対して同時に開戦したのは、オランダ領インドネシアの石油を奪うためだった」(百田385-386頁)と述べる。「石油を奪う」ことは「侵略」である。ところが他方で、百田氏は「『大東亜戦争は東南アジア諸国への侵略戦争だった』と言う人がいるが、これは誤りである」(百田391頁)と述べる。
I-2 しかし、これは矛盾する。「石油を奪う」ことは明らかに「侵略」である。百田氏は誤っている。他国の石油資源を奪うことは「侵略」だ。(浮世268頁)
I-3 資源を「奪う」ことが日本の目的だったと百田氏は述べるのに、同時に「『大東亜共栄圏』は・・・・政治的・経済的な共存共栄を図る政策だった」(百田392頁)と述べるのは矛盾し、誤りだ。(浮世270頁)
(68)-2 百田氏の誤り②:政府(そして軍)も「気付いて《いた》」のに「輸送手段に対する考え方が甘かった」!
I-2 百田氏は、オランダ領インドネシアのパレンバンの油田を占領したと聞いた東条英機首相が「これで石油問題は解決した」と言ったことについて、「彼も政府(そして軍)も油田を占領することと石油を手に入れることは同じでないということに気付いていなかった」(百田389頁)と述べる。
I-2-2 だがこれは百田氏の誤りだ。政府(そして軍)も「気付いていなかった」のでなく、「気付いて《いた》」のに「輸送手段に対する考え方が甘かった」のだ。
(68)-3 百田氏の誤り③:「輸送船の護衛」に関し、「日本海軍の駆逐艦は哨戒能力が低い」!
I-3 かくて百田氏も言うように、「インドネシアからの石油などの物資を運ぶ輸送船が、アメリカの潜水艦によって次々と沈められるという事態となる。」(百田390頁)
I-3-2 「真珠湾攻撃の3時間後、アメリカ海軍は54隻の潜水艦を東南アジア方面に派遣し、すでに日本の補給線を叩く作戦を開始していた。1942年までに日本は96万トンの船舶を喪失してしまった。」(浮世269頁)
I-3-3 これに対し百田氏は「海軍は輸送船の護衛など一顧だにせず、聯合艦隊の誇る優秀な駆逐艦が護衛に付くことは一切なかった」(百田390頁)と述べる。
I-3-4 百田氏は「優秀な駆逐艦」と言うが「輸送船の護衛」に関する限り、これは誤りだ。「日本海軍の駆逐艦は哨戒能力が低い」。「喪失船舶数を上積みするだけの結果になったかもしれない」。(浮世269頁)