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沖田瑞穂『すごい神話』50.「もう一つの『対』の英雄――カルナとドゥルヨーダナ」:「カルナドゥルヨーダナウ」という「双数形」で表現され、「クリシュナウ」と同様、緊密な「一対」だ!

2023-11-04 14:12:16 | Weblog
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第四章 インドの神話世界(42~52)

(1)ドゥルヨーダナ(百王子の長兄)とカルナという「対」の英雄!弓の名手カルナ!
A  インドの叙事詩『マハーバーラタ』において、「パーンダヴァ」側のアルジュナ(五王子の三男)とクリシュナの「対」の英雄に対し、「カウラヴァ」側のドゥルヨーダナ(百王子の長兄)とカルナの「対」の英雄が対応する。
A-2  「カルナ」は、クンティーが、クル王パーンドゥの妃となり「パーンダヴァ」兄弟を産む以前に、太陽神スーリヤとの間に産んだ子。カルナは、パーンダヴァ五王子と敵対する「カウラヴァ」(クル族の息子たち)側の中心的人物の一人。カウラは生まれながらに黄金の耳輪と鎧を身につけていた。彼は優れた弓の使い手であり、大英雄アルジュナを宿敵とする。そしてカルナはクル王の子「ドゥルヨーダナ」と友情を結ぶ。
A-3  カルナとアルジュナは共に弓の名手であり、クル王家において御前試合が行われた時、両者はともに神的な技を披露した。
A-4  クルクシェートラの大戦争でカルナは、「カウラヴァ」側の(ビーシュマ、ドローナに続く)総指揮官となった。だが「カルナ」はアルジュナによって殺害された。
A-5  カルナと友情を結んでいた王子ドゥルヨーダナは、悪徳の人物であるが、カルナは決して固い友情を裏切ることがなかった。

(2)「カウラヴァ」百人兄弟の長男ドゥルヨーダナは、 邪悪で嫉妬深い性格から従兄弟の「パーンダヴァ」五兄弟と対立し、「クルクシェートラの戦い」を引き起こす!
B ドゥルヨーダナは「クル国」の盲目王ドリタラーシュトラと妃ガーンダーリーとの間に生まれ「カウラヴァ」百人兄弟の長男。 邪悪で嫉妬深い性格から従兄弟の「パーンダヴァ」五兄弟と対立し、「クルクシェートラの戦い」を引き起こした。(Cf.  兄ドリタラーシュトラが盲目であったため、パーンドゥが代わりに「クル国」の王位を継いだが、後に世俗を捨て森に隠遁したため兄ドリタラーシュトラが王となった。)
B-2  ドゥルヨーダナの母ガーンダーリーは、盲目王ドリタラーシュトラの子を身籠ったが、2年経ってようやく胎児を産み落とした。しかし、それは鉄のように堅い肉塊であった。聖仙ヴィヤーサの指示により、その肉塊は100個に分けられ、それぞれギー(インドの乳製品)で満たした100個の瓶に入れられた。やがて、それらの瓶から第一に生まれ出た息子がドゥルヨーダナである。 ドゥルヨーダナが生まれると、いたるところで肉食獣やジャッカルが唸り声をあげるなど不吉な前兆が見られた。

C 人望があり年長でもある「パーンダヴァ」五兄弟の長子「ユディシュティラ」のほうが、「クル国」の次期王にふさわしいという声が大きく、王位を狙う「ドゥルヨーダナ」は、常にパーンダヴァ兄弟を征服し、自らが権力を得られることを望んだ。 そのため、ドゥルヨーダナは母方の伯父(or叔父)シャクニ、親友のカルナ、弟のドゥフシャーサナ(カウラヴァの100人兄弟の次男)などを腹心とし、パーンダヴァ兄弟に対し様々な策略を講じた。
C-2 「ユディシュティラ」が王国を得て素晴らしい宮殿を造ると、ドゥルヨーダナはその美麗な宮殿と富に激しい嫉妬を抱いた。シャクニは、甥のドゥルヨーダナに「いかさまの骰子賭博」を仕掛ける提案をする。結果、ユディシュティラは負け続け、ドゥルヨーダナは、「パーンタヴァ」五兄弟と妃ドラウパティーを13年間、王国から追放した。

D 「パーンダヴァ」五兄弟が13年間の追放を満了した後も、「カウラヴァ」百人兄弟の長男ドゥルヨーダナは、「パーンダヴァ」五兄弟に一切の領土を返還することを拒んだ。ドゥルヨーダナは、(ア)両親(盲目王ドリタラーシュトラと妃ガーンダーリー)、(イ)武芸の師であるドローナ、(ウ)一族の長老であるビーシュマ(パーンダヴァ、カウラヴァ両方にとっての大伯父)の説得、(エ)パーンダヴァ側からの和平交渉のすべてを拒絶したため、かくて「クルクシェートラ戦争」に至った。

《参考》武芸の師であるドローナは、クルの王子たち、カルナなど他国から来た王族たちにあらゆる武術を伝授した。ユディシュティラは「戦車」、ビーマとドゥルヨーダナは「棍棒」、アルジュナとカルナは「弓」、「パーンダヴァ」の双子であるナクラとサハデーヴァは「剣」に優れた才能を発揮した。

E  「クルクシェートラ戦争」には諸国の王らが、ドゥルヨーダナら「カウラヴァ」陣営と、ユディシュティラら「パーンダヴァ」陣営に分かれて戦った。戦争はドゥルヨーダナの思い通りには進まなかった。「カウラヴァ」陣営の総指揮官であり最も強力な戦士であるビーシュマと「カルナ」が対立し、カルナはビーシュマが倒れるまでの十日間は、戦争に参加しなかった。
E-2  またビーシュマが倒れた後、「カウラヴァ」陣営の総指揮官となった武芸の師で強力な戦士であるドローナが「パーンダヴァ」に手を下すことを拒絶した。味方が次々と「パーンダヴァ」側のビーマやアルジュナに倒される中、ドゥルヨーダナがユディシュティラを生け捕りにするようドローナに命じる。「やっと和平を結ぶ気になった」とドローナは感動するが、すぐに「生け捕り後、骰子賭博で再度追放する」というドゥルヨーダナの言葉に失望する。

(3)カルナの最期!ドゥルヨーダナの最期!
F  戦争17日目(「クルクシェートラ戦争」は18日間続く)でカルナはアルジュナと一騎打ちの機会を得る。カルナが放った矢は、クリシュナがアルジュナの戦車を地中に沈めたので、アルジュナの首を落し損ねる。戦車が埋まって動けないアルジュナにカルナは矢を射かける。アルジュナはこれに対し数倍の矢を射返す。その後、カルナの戦車の車輪が地中に沈む。放たれるアルジュナの矢の攻撃を、戦車を降りたままカルナは迎え撃ったが、ついにアルジュナの矢により、カルナの首が切り落とされた。カルナの死を知ったドゥルヨーダナは、悲憤の涙を流し、その死を悼んだ。

G  次々と自陣営の強力な戦士らを失い一人になったドゥルヨーダナは、戦争の最後に「棍棒」でビーマと一騎打ちする。しかしドゥルヨーダナはビーマに敗北した。
G-2  ドゥルヨーダナは、駆け付けてきたアシュヴァッターマンを「カウラヴァ」側の最後の総指揮官に命じる。アシュヴァッタ―マンは、命令を受けて「パーンダヴァ」側への夜襲を決行する。ドゥルヨーダナは血だまりの中で一晩を過ごし、アシュヴァッターマンの夜襲「成功」の報告を受け、息を引き取った。(ただし実際には「パーンダヴァ」五兄弟は生存しており、アシュヴァッターマンの夜襲は「失敗」だった。)

H クリシュナとアルジュナは「クリシュナウ(かのクリシュナたち二人)」と呼ばれる。あるいは「ナラ・ナーラーナヤウ」つまり「かの二人のナラ(=アルジュナ)とナーラーヤナ(=クリシュナ)」と呼ばれる。語尾「アウ」という「双数形」は、緊密な「対」をあらわす。
H-2  カルナとドゥルヨーダナもまた『マハーバーラタ』の原典で「カルナドゥルヨーダナウ」という「双数形」(語尾アウ)で表現されており、クリシュナとアルジュナの「クリシュナウ」(かのクリシュナたち二人)と同様、緊密な「一対」である。
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