宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

「恩を仇で返す」『スペイン民話集(エスピノーサ篇)』(第76話):蛇は人間の「善意」に興味がない!蛇は「ニヒリスト」だ!蛇にとって人間は「無価値」だ!

2024-06-24 08:33:29 | Weblog
(1)
お百姓が道を歩いていると、寒さで凍えそうになった蛇に出会った。お百姓は蛇を拾い上げ、袋の中にいれてやった。袋の中で暖かくなった蛇は元気になり、袋から出てきて。「さあ、お前を食ってやる」と言った。
《感想1》「死」から救ってくれたお百姓を、「食い殺す」という蛇は、平然と「恩を仇(アダ)で返す」つもりだ。
(2)
お百姓は蛇に、「こんなに親切にしてやったわしを食うとは、どういうつもりだ?」と言った。しかし蛇は「かまうものか。恩は仇でかえすものだ」と言った。
《感想2》身に受けた「恩」に感謝するどころか,かえって害を加える。「仇(アダ)」とは恨みに思って仕返しすること。この場合は①状況に関する「誤解」ではない。②蛇は人間の「善意」に興味がない。蛇は「ニヒリスト」だ。蛇にとって人間は「無価値」だ。③蛇に興味があるのは自分の「利益」だけだ。蛇はエサ・食料を食いたい。だからエサ・食料であるお百姓を食べたい。
(3)
とうとうこの問題を3匹の裁判官の判断に委ねることに、お百姓と蛇が一致した。裁判官は①「驢馬」、②「雄牛」、③「狐」だ。最初に①「驢馬」がやって来たので、お百姓と蛇は出来事を話した。裁判官「驢馬」は蛇が怖かったので「恩は仇で返すものです」と言った。次に②「雄牛」がやって来たので、お百姓と蛇は出来事を話した。裁判官「雄牛」は蛇が怖かったので「恩は仇で返すものです」と言った。
《感想3》恐ろしい蛇には反抗しない。①「驢馬」、②「雄牛」は「君子危うきに近寄らず」あるいは「長いものには巻かれろ」だ。これが、この世間で「生きる力」だ。Cf. 「追従(ツイショウ)も世渡り」。
(4)
「裁判官の内、2匹がわしの勝ちだと言ったから、もう狐を探す必要はない」と蛇が言った。しかしお百姓は「どうしても、もう1人の裁判官『狐』の意見を聞きたい」と言い張り、「狐」を待った。
《感想4》お百姓はあきらめない。自分の命がかかっている。「人事を尽くして天命を待つ」!あるいは「一念天に通ず」こともありうる。
(5)
やがて裁判官③「狐」がやってきた。「狐」は「出来事が理解するのに難しいので、出来事を再現してほしい。蛇はまず袋の中にもどってほしい」と言った。蛇は、自分がどのようだったか「狐」にみてもらおうと、袋の中にもどった。お百姓が袋の口を縛った。すると「狐」はお百姓に言った。「さあ、蛇は袋に入りましたから、恩を仇で返されないよう、蛇を殺してしまいなさい。」そこで、お百姓はその場で蛇を殺してしまった。
《感想5》「狐」は賢い。「嘘も方便(ホウベン)」(誰かが救われるために嘘をつく)!あるいは「蛇の道は蛇」(その道の専門家はその道をよく知っている)!狐は人を騙すのが得意だ。
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