宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『在日』姜尚中(カンサンジュン)(2008、初版2004) 2008/11/29

2008-11-29 21:42:25 | Weblog
 在日は「第3国人」とかつて呼ばれたがこれは戦勝国でも敗戦国でもない“the third nation”とGHQが命名した語に由来する。在日にとって過酷で悪意に満ちた世界、それが日本である。これは在日第1世代にとって文字通りだった。
 日本の敗北は祖国への希望を生んだ。しかし朝鮮戦争がそれを絶望へと変える。朝鮮民族だけで死者400万人。これは第2次大戦での日本の死者数をゆうに超える。
 この絶望からの救いを与えたのが1958-1967年の北朝鮮への帰還運動である。それは「南」出身者が「北」に帰るほどの期待に満ちていた。日本の全国紙は高層ビルの林立するピョンヤンなどと「北」に好意的な記事を書いた。しかし「北」の現実はすぐあきらかとなり運動は頓挫する。
 著者は「大塚ウェーバー」に疑念を持つ。「アジア的共同体」の残滓が残る日本を批判し「近代的人間類型」が日本に必要と大塚は言う。とすれば「在日」はアジア的野蛮そのものなのかと著者は反発する。真のウェーバー探しが始まる。これが著者の研究生活の出発点だという。
 分断の現実が在日を「国家という甲羅」を持ない根無し草とする。この孤立感から著者を解放したのが1970年代末のドイツ留学で出会ったギリシャ人学生である。彼らもドイツで少数派であり「在日」のような存在だった。著者は「世界史の中の在日」という視点を獲得する。
 1980年代は日本のうぬぼれの時代である。戦後という時代の重しが取れタガがはずれる。ポストモダンの軽薄さの時代。だが在日には指紋押捺拒否による逮捕の問題が起きる。著者は埼玉県での「拒否」第1号となるが結局、逮捕を避けて敗北する。しかし負けてもよいとの土門一雄牧師の言葉が彼を救う。
 日本が経済大国にふさわしい政治大国を目指す中、1991年の湾岸戦争の国際貢献問題が平和憲法の「足枷」への反発を生む。ナショナリズムが強調されアイデンティティの源である歴史への注目・確執があらためて問題となる。「新らしい歴史教科書を作る会」などが発言権を増す。
 朝鮮半島をめぐる著者のひたすらの関心は第2の朝鮮戦争を避けることである。再び凄惨な戦争を許してはならいと著者は言う。2003年に始まる六カ国協議だけが問題解決の今ただひとつの残された手段である。北朝鮮征伐、北朝鮮バッシングの包囲の下にあっても国家を超えた地域協力のみが問題を解決すると彼は主張し続ける。「東北アジア共同の家」が著者の年来の夢である。


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『雑兵たちの戦場、中世の傭兵と奴隷狩り』藤木久志(2005、旧版1995)  2008/10/26

2008-11-03 08:10:10 | Weblog
戦場での乱取り、濫妨狼藉、また落城後の褒美としての略奪が中世、つまり早くは鎌倉以後とりわけ室町・戦国期には経済的に構造化されていた。例えば謙信の戦争は基本的に農閑期の大ベンチャー・ビジネスである。秀吉の平和は新たな稼ぎ場を必要としこれが朝鮮侵略、また築城など都市開発・鉱山開発などを引き起こした。
 戦場での略奪には人取り習俗、奴隷狩りが含まれる。長崎・平戸は世界有数の奴隷市場であった。マニラのスペイン人の家庭には多くの日本人奴隷がいた。またスペイン、ポルトガル、蘭、英の植民地戦争で日本は武器・傭兵の供給基地だった。
 戦国以来、日本人は凶暴な傭兵・軍役奴隷として植民地戦争を戦う各国に雇われ重宝された。秀吉の征韓役後、マニラのスペイン総督は日本が次にルソン、台湾侵略に向かうのではないかと恐れた。日本の倭寇の伝統が終了するのは徳川時代である。幕府は東南アジアの植民地戦争に巻き込まれないよう日本人の傭兵・奴隷・武器輸出を禁止した。
 村人たちは一方で自衛に努め領主の城に避難するか(「あがり城」)、村人独自の避難所に逃げた(「山上がり」)。そもそも国替えさえ新たな連中による略奪だった。他方でこの当の村人たちが下人・中間・小物など雑兵として略奪の主体であった。もちろん知行取りの武士そのものが「切り取り強盗は武士の習い」として略奪を戦争の目的とした。封建社会は戦争が経済的に構造化された軍事社会である。
 中間・小者を知行取りが日雇いで雇い、またスッパ・ラッパの親分たちが悪党を率いて戦争に略奪のため参加した。それが日本の中世だった。タイの山田長政は悪党の親分の1人である。豊臣政権になっても、都市に流れ込んだ農民たちだけでなく、豊臣大名の侍・下人もまた都市でスリ・盗賊を行った。
 中世は「狼に対する狼」、「万人の万人に対する戦い」のホッブズ的世界だった。


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